日本で買える日本車のセダンは減り続けている。最近だと、マツダが「MAZDA6」(旧アテンザ)の生産終了を発表。トヨタ「カムリ」もない、日産は「スカイライン」だけということで、そんなにセダンは不人気なのかな…と思っていたところに、ホンダが「アコード」の新型を日本に持ってきてくれた。どんなクルマなのか、さっそく乗ってみた。

  • ホンダの新型「アコード」

    日本車のセダンが好きな人にとっては救世主的な存在? ホンダが新型「アコード」を発売!

日本のセダンの選択肢は今

アコードはホンダのフラッグシップモデルという位置づけ。アメリカではけっこう売れているそうだ。今度の新型は通算11世代目。フルモデルチェンジは2020年2月以来の約4年ぶりで、日本では2024年3月8日に発売となった。価格は544.94万円、月間販売目標は200台だ。

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  • 「アコード」はホンダのフラッグシップ。さすがに堂々たる姿だ

日本で選べる日本車のセダンは少なくなっている。日産自動車「スカイライン」とトヨタ自動車「カローラ」と……スバル「WRX」もセダン? とにかく、数えるほどしかないのが現状だ。セダンといえばトヨタ「クラウン」があるわけだが、新型クラウンのセダンは相当なサイズだし、価格も730万円からということで、かなりの高級車になってしまっている。

一方、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどの輸入車勢は、今でもけっこうセダンが充実している。プジョーのセダンもかなりカッコいい。アコードは550万円という価格なので、輸入車セダンと比べられてしまうのは間違いないだろう。

新型アコードは大きいクルマと感じない?

新型アコードのグレードはハイブリッド車1種類のみ。ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」を搭載していて、燃費(WLTCモード)は23.8km/Lだ。

ボディサイズは全長4,975mm、全幅1,860mm、全高1,450mmとかなり立派。試乗は芦ノ湖周辺を出発し、観光客でごった返す箱根の街中を通り抜けたり、芦ノ湖スカイラインで上り下りのワインディングロードを走ったりした。

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  • 新型「アコード」はかなり大きなクルマだ

箱根周辺はクルマで走っていると楽しい場所なのだが、狭くて曲がりくねった山道が多く、バスとのすれ違いが頻繁に発生するということで、大きなクルマを運転しているとかなり気疲れがするところでもある。全長5m近いクルマの試乗となると、少し気が重い道路環境だ。

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    「アコード」はタイで生産されているそうだから、富士山を見るのはこれが初めてかも?

ところが、アコードで走っていると、自分が大きなクルマに乗っているということをあまり意識せずに済んだ。経験上、箱根をスイスイ走れるクルマは「視界がいい」「ハンドルを切った通りに曲がる」「加減速が思い通り」といった特性を備えていることが多い。例えば、人生で初めて乗った左ハンドル車「Sクラス」(確かクーペ)で走ったのが箱根だったのだが、その際も、慣れない運転感覚であるにも関わらず、特に苦労することなく目的地に到着できたのを覚えている。

そんな感想をアコード開発責任者の横山尚希さんに伝えてみると、「おっしゃる通りで、ステアリングを切ったときにアンダー(ステア)が出にくいということもあり、意のままに曲がる感じを味わっていただけたんだと思います。ハイブリッドの制御などで、より軽快な走りも実現できています。『大きい割に、意外と軽快に走るよね』という部分は、感じてもらいたかったところです」とのことだった。

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    新型「アコード」はセダンだから視点は低い。運転中の視界は良好だった

e:HEVを搭載する新型アコードの走りはとても静か。「EVスイッチ」を押せばモーター走行をキープできるので、夜の静かな住宅街に進入する際や地下駐車場などでは迷わず使いたい。

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    新型「アコード」のシフトセレクター周り

とはいえ、そこは「エンジンのホンダ」といわれるだけのことはあり、爽快な走りを楽しもうという意思をもってアクセルを踏み込めば、カッコいいエンジンサウンドが聞こえてくる。新型アコードのトランスミッションは「電気式CVT」というタイプで、これを積んでいるクルマは速度を上げていくと単調でうなるような音を発生させるものだと思っていたのだが、新型アコードでは車速に応じてエンジン回転数を変え、まるで変速しているような音が出るような制御を入れているそうだ。

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  • 普段は静かな車内。グイっとアクセルを踏めばカッコいいエンジンサウンドが聞こえてくる

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  • アンビエントライトはいくつかのテーマカラーから選択できる

まるで電気自動車! ほぼワンペダルの運転が楽しい

アコードはハイブリッド車だが、ほぼ電気自動車(EV)のような「ワンペダル走行」が楽しめる。アクセルペダルを戻した際の減速力が6段階から選べるので、最も強い「6」に設定しておけば、アクセルオフでググっとブレーキがかかり、ほぼ停止(クリープ)状態まで速度を落としてくれる。おかげで、赤信号など停止が必要な状況に遭遇しない限り、ブレーキペダルに足を踏みかえる必要はほとんどない。

横山さんによれば、アクセルオフ時の減速力は先代アコードの0.1Gから新型では0.2Gに増えているとのこと。モーターをうまく使って減速エネルギーを電力として回収しながら速度を落とす「回生ブレーキ」と機械的なブレーキ(横山さんの用語だと「つまむ」制御)を併用することで、0.2Gの減速力を発生させているそうだ。減速力が2倍になったので、先代アコードでは4段階だったセレクターを6段階に増やした。そうしないと、1段ごとの減速力の変化が大きくなりすぎるからだ。

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    「D」の右の方にある下向きの矢印の数が減速力の強さを表している。減速力はハンドルの裏側に付いているパドルで調節可能。普通の走行モードだと、どれだけ減速力を強くしてもアクセルを踏めばデフォルト状態に戻ってしまうが、左のパドルを引いたままにして1秒キープすれば、減速力を固定できるモードになる。ドライブモードを「SPORT」にしても減速力は固定となる。どちらにしろ、とにかく固定で走るのがオススメだ

Google搭載で便利さは日本車No.1かも?

新型アコードで個人的に最も気に入った点は「Google」を搭載しているところだ。愛用している「Googleマップ」がナビとして使えるのは非常に便利。クルマの音声認識機能にはガッカリさせられることが多いのだが、Googleアシスタントの聞き取り能力は折り紙付きだ。クルマに関する音声コマンド以外の事柄も認識してくれるので、いかにもクルマが話を聞いてくれているという安心感がある。

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    新型「アコード」はGoogle搭載!

クルマにスマホをつなげばいいのでは? とも思うのだが、クルマそのものにGoogleを搭載することで、クルマの機能との連携が可能になるというメリットがあるという。例えばクルマにスマホをつないでも、「シートヒーターをつけて」というような、クルマの機能と連携した指示は実行してくれない。Google搭載車だからこそできることがあるわけだ。地下トンネルに入ったときなど、スマホ連携だと自車位置をロストしてしまうことがあるが、Google搭載だとそれも発生しないらしい。

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    メーターパネルにGoogleマップを映し出せるのも、クルマそのものがGoogleを搭載しているからなのだろう

アコードには「Googleプレイ」が入っていたので、どんなアプリが落とせるのかと開いてみると、スマホで落とせるアプリに比べて数は非常に少なかった。アプリというものはスマホ用、PC用、クルマ用と分かれているそうで、クルマ用の確認が取れたものから入ってくる仕組みなのだという。ちなみに、動画のアプリが入ったとしても、走行中に再生するのはルール的にNGなので、そもそも走行中には再生できない仕様となるそうだ。

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    Googleプレイを開いてみた。サードパーティーのものも含めアプリは増えていく見込み

Google搭載車はどんどん増えていってほしいと思うが、ホンダ車で採用は広がっていくのだろうか。具体的な計画は教えてもらえなかったものの、ホンダ開発陣の話としては、「新型アコードが皮切り。この1台で終わってしまう取り組みではないと思います」とのことだった。

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  • おまけ:不調法なもので自分には響かなかったのだが、新型「アコード」はトランクにゴルフバッグを4つも積めるということがご自慢らしい。実際に積んで見せてもらったので、看板に偽りなしだということは証言できる