ゴールデンウィークを目前に控えた4月末、ランボルギーニからSUV「ウルス」を長期で借りることが決まった。いつもは実家のある富山県に北陸新幹線で帰省しているペーパードライバーが、ウルスで故郷に錦(?)を飾るのも、それはそれで面白いのでは……。ということで、決行してみることにした。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    実家の駐車スペースに入るのか? ランボルギーニ「ウルス」で富山へ!

高速道路中心のルートを採用、結果は正解?

ウルスはランボルギーニ初のSUVとして2017年に発売となったクルマ。日本導入は2018年だ。ランボルギーニの売れ筋商品で、2021年のグローバル総販売台数8,450台のうち5,021台がウルスだった。

ボディサイズは全長5,112mm、全幅2,016mm(サイドミラーを入れると2,181mm)、全高1,638mm。借りたクルマは左ハンドルだ。幅のあるクルマを左ハンドルで運転するのは慣れないとはなはだ大変なのだが、これで東京から富山まで、すんなり帰れるのだろうか……。少なくとも渋滞は避けたいと考え、暦の上では平日だった5月2日(火)に品川駅周辺(自宅ではなく駐車場の場所)を出発した。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    「ウルスで帰省」という響きの異様さに惹かれて、決行してみる気になった(写真は蜃気楼の名所・富山県魚津市で撮影。この日は蜃気楼発生率40%とアナウンスされていたが、不運にも遭遇することはかなわなかった)

東京から富山にクルマで向かうルートをいくつかのアプリで検索してみると、以下の2つの案が浮上した。所要時間の予想は6時間弱で、ほぼ同等だった。

  • 距離的には遠回りなルート:関越自動車道→上信越自動車道→日本海に突き当たる感じで左折→北陸自動車道で富山ICへ(ほぼ高速道路を走る)

  • 距離的には近道なルート:中央自動車道→長野自動車道→松本ICで出て飛騨高山の方へ→中部縦貫自動車道、安房峠道路→平湯ICを降りたら一般道を90km近く走る

品川駅→富山駅で調べると遠回りルートの総距離が438km、近道ルートが364km。高速道路料金は近道の方が片道3,000円ちょっと安いようだし、当然ながらガソリンを使う量も近道の方が少ないはずだとは思ったのだが、どうも山の中を通っていくようなイメージで、大きなウルスで走る自信がわかない。近道で帰った方がネタにはなりそうだとは思いつつも、クルマで帰省するのは今回が初めてということもあり、安全策で高速道路中心の遠回りルートを採用した。

この道を選んで、結果的にはよかった。というのも、高速道路に長く乗ってみて気が付いたのだが、ウルスにはいわゆる「ACC」の機能が付いていて、しかも精度がばっちりなのだ。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    高速道路のロングドライブも「ウルス」なら苦にならない?(富山市内で撮影)

ACCというのは高速道路や自動車専用道などで使える機能で、ONにすると同じ車線を設定した速度で走り続けてくれる。きつ過ぎないカーブなら自動で曲がってくれるし、前にクルマがいれば速度を合わせて追従してくれるので、ドライバーとしてはペダルとハンドルの操作から解放されて(とはいえ気を抜いてはいけないが)、長距離走行がとても楽になる機能だ。ランボルギーニに乗る人はおそらく、よほどの運転好きだろうから、この手の機能は使わないという人が多いのかもしれないが、私には最高に役に立った。

素人の紙ドライバーは数えるほどしか左ハンドルに乗ったことがないが、実感としては、運転しているとクルマがなんとなく右に寄って行ってしまい、右側の車線を越えてしまいそうで、普段よりも運転の緊張感が増し、結果として疲れも倍増してしまう。それが数百km続くとなると、結構な重労働だ。ところがウルスはACCが使えるものだから、長い高速道路での移動中もシステムが車線の真ん中をキープしてくれるので、車両右側に関する不安がない。これには本当に助かった。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    ハンドルの左側にあるウインカーのレバーの下に、速度を決めてクルマを走らせるためのレバーが付いている。同機能をONにしてからウインカーレバー先端のボタンを押すと、車線内の走行をキープするACC状態に入る(この写真はランボルギーニのメディアサイトから借用)

燃費は悪くない?

もうひとつ、長距離を乗って気が付いたのは、ウルスはランボルギーニなのに、かなり静かなクルマだということ。エンジンを入れた瞬間には「ウオーン!」と咆哮するものの、その後は、常識の範囲内の速度しか出さなければ、車内にいるとかなり静かだ。スマホをウルスとつなげて「radiko」で好きなラジオ番組でも聞いていれば(家にいようが何をしていようがどうせ聞くのだし)、長距離の移動も特に苦にならない。乗り味もどちらかというとゆったりした感じだから、乗っていて快適だ。

日本の高速道路は親切で、ちょっと行けばサービスエリアなりパーキングエリアなりに遭遇できるから、休憩やらradikoの操作やらで止まりたくなっても安心だ。富山に向かう日本海側のSA/PAには松尾芭蕉の句碑がいくつか立っていたりもするので、事前に調べておいてスタンプラリー的に写真を撮っていくのも面白いのではないだろうか。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    北陸自動車道の越中境パーキングエリア(富山県下新川郡)には「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(芭蕉)の句碑があった

クルマの記事なので、それらしいデータを最後に示しておくと、品川→富山市内の某ドラッグストア(抗原検査キットを購入するために立ち寄り)間の走行データは総距離447kmくらいで、ほとんどが高速道路をACCで巡行した結果、平均燃費は11.8km/Lとなった。4.0LのV型8気筒ツインターボエンジンを搭載する2.2トンのクルマにしては、実燃費はそこまで悪くないような印象だ。所要時間は高坂(埼玉)、松代(長野)、越中境(富山)で休憩して計6時間ちょっとという感じだった。

北陸新幹線なら上野駅→富山駅が「かがやき」号で2時間ちょっと。指定席が片道1万2,000円強で、寝ていても、本を読んでいても到着する。この路線が開通してくれて本当に感謝だし、今後もちょくちょく利用させてもらうつもりだ。クルマだと高速道路料金が片道1万470円(目黒→美女木下→美女木第二→大泉→練馬→富山)でガソリン代もかかる。ただ、クルマはクルマで別の旅情があるし、ウルスのようなクルマで帰れば、家族や友人の度肝を抜けるのは間違いない。

  • ランボルギーニ「ウルス」

    富山湾を背にする「ウルス」

  • ランボルギーニ「ウルス」

    立山連峰を背にする「ウルス」

  • ランボルギーニ「ウルス」

    水田を背にたたずむ「ウルス」。そういえば、ランボルギーニは農業用のトラクターも作っているそうだ