連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
昨年念願のマイホームを購入しました。ただし、毎月の返済額を無理なく払うため変動金利で35年ローンを組んでしまったのですが、夫の年齢も考えるとできれば35年かからずに繰り上げ返済しながら、住宅ローンを返済し終わりたいと考えています。夫が65歳までに返済し終わるには、どのように繰り上げ返済をしていったらいいでしょうか? アドバイスよろしくお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 現在、住宅ローン金利は歴史的低水準にあり、今後は金利が上昇すると予想されています。特に、変動金利型で返済期間が長い場合は、金利上昇のリスクがあるだけでなく、定年退職後も住宅ローンの支払いを続けなければならないため、老後資金が不足してしまうという心配がでてきます。

  • 繰り上げ返済には、返済額はそのままで期間を短縮できる「期間短縮型」と返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」という2つの方法がありますが、当初の予定よりも早い完済をご希望の鈴木様の場合は、「期間短縮型」のほうが効果は高いでしょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


将来の金利上昇のリスクなどへの備えを!

変動金利型ローンでは半年ごとに金利が見直されるのが一般的ですが、返済額の見直しは5年単位で行われるため、適用金利が変わってもすぐに返済額が変わるわけではありません。ただ、適用金利が上がった場合は利息が増え、元金部分の返済が少なくなるため、ローン残高は当初の予定よりも減らなくなります。6年目からの返済額は、金利が大幅に上昇した場合でも、「125%ルール」と呼ばれる規定により、直前の返済額の1.25倍が上限となります。

現在、住宅ローン金利は歴史的低水準にあり、今後は金利が上昇すると予想されています。特に、変動金利型で返済期間が長い場合は、金利上昇のリスクがあるだけでなく、定年退職後も住宅ローンの支払いを続けなければならないため、老後資金が不足してしまうという心配がでてきます。鈴木様はご主人が65歳までに住宅ローンを完済することを希望されているので、うまく繰り上げ返済をしながらローン残高を減らしておくなどすれば、こうしたリスクは減らすことができるでしょう。

繰り上げ返済の効果はどれくらいあるのか

住宅ローンの繰り上げ返済は、原則として元金部分に充てられるため、その部分の利息を減らすことができ、トータルの金額も軽減できます。

繰り上げ返済には、返済額はそのままで期間を短縮できる「期間短縮型」と返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」という2つの方法がありますが、当初の予定よりも早い完済をご希望の鈴木様の場合は、「期間短縮型」のほうが効果は高いでしょう。

ところで、一部を繰り上げ返済した場合の効果はどれくらいになるのでしょうか。

借入金額3,000万円、金利2%、返済期間35年、元利均等返済、100万円を繰り上げ返済した場合で見てみましょう。

6年目に繰り上げ返済をするほうが、11年目に繰り上げ返済をするより、短縮される期間も、軽減する利息額も多いことがわかります。つまり、繰り上げ返済をする場合、時期が早いほど効果が高いということがいえるでしょう。

繰り上げ返済のための資金の準備をどうするか

民間の金融機関が扱う住宅ローンでは、1万円から繰り上げ返済ができるところもありますが、効果があるからとやみくもに繰り上げ返済をして、家計が苦しくなってしまうのでは意味がありません。今後のご家族のライフプランを考え、お金がかかる時期などをしっかり把握することが大切です。

では、どのように繰り上げ返済をしていけばいいのでしょうか。

万が一の備えとして、生活費の6カ月分程度は予備費として確保しておきます。また、将来必要になる教育費は、優先的に貯蓄していくようにしましょう。そのうえで、繰り上げ返済用に別に口座を作って貯めていくようにすると管理がしやすくなります。現在の鈴木様の家計を見ると、ご夫婦で働いていることもあり、毎月5万円、ボーナス時50万円の貯蓄ができています。今のままの家計であれば、繰り上げ返済のための資金も順調に準備できそうです。例えば、「100万円貯めて、2年後に繰り上げ返済する」など目標をもって貯蓄するのもいいでしょう。ただし、今後はご家族の状況が変わる可能性もあり、貯蓄ができない時期もでてくるかもしれません。

実際に繰り上げ返済をするときには、金融機関の窓口やインターネットのシミュレーターなどで返済計画がどう変わるのかを確認してから行うようにしましょう。

今後の家族のライフプランを立て、無理なく繰り上げ返済を!

鈴木様のご家族のライフプランを考えた場合、今後見込まれる大きな支出は、お子様の教育費と二人目のお子様が生まれたら必要になるかもしれないという車の購入です。

お子様の教育費に関しては、小学校から高校までは公立、大学を私立とした場合、上のお子様が大学生になる14年後からの4年間、2年後に下のお子様が生まれると仮定した場合の20年後からの4年間が最も教育費のかかる期間となります。私立大学の場合の4年間の学費は、文系で約420万円、理系で約545万円。お子様名義の口座にすでに200万円あり、今後も毎月2万円ずつ貯蓄ができれば安心でしょう。

お子様が増えた場合も、すぐに教育費の積み立てを開始するようにすれば、毎月1万円でも17年間で204万円となります。家計に余裕ができたら積立金額を増やす、ボーナスをもらったら教育資金に回すなどで、さらに増やすことも可能になります。

また、現在は普通口座に200万円あり、毎月の貯蓄もしっかりできていますが、仮に2年後にお子様が誕生し、奥様の収入がなくなったり、減ったりした場合、月間収支は赤字になってしまう可能性があります。さらに車を購入される場合は、貯蓄も減ってしまいます。車の購入については、維持費もかかるため、本当に必要なのかどうかよくご夫婦で話し合って決めるようにしてください。

奥様はこれからも仕事を続けていきたいとのことですので、仕事に復帰できれば貯蓄も殖やしやすくなりますが、予定通りにいくとは限らないため、今後の収入の見込みや支出の予定を把握したうえで、優先順位を決めて、無理なく繰り上げ返済をしていくようにしましょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美

大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属