連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
来年の4月に上の子が大学に入学する予定です(まだ受かるかどうかわかりませんが)。子どもが年子で下の子が現在高校2年生です。まだまだ教育費がかさむので、現在パートで週5日働いていますが、パートなのでそれほどお給料がいいわけでもなく、日々の生活費に追われ、正直子どもたちの大学資金が入学金以外は準備できていません。下の子も続くので、上の子を浪人させるわけにもいかず、なんとか大学に入ってもらいたいと思っています。子どもたち2人とも大学に入ったら奨学金をもらって何とか大学時代を乗り切りたいと思っていますが、あと5年間の教育費を上手に乗り切るアドバイスをよろしくお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • お金の流れを書きだすことを「キャッシュフロー表を作る」といいます。この作業は目先だけではなくその先まで見渡せるのでオススメです。

  • 教育費も含めてお子さんにかかわる費用というのは削りにくい項目です。遠征費用や参考書など削りにくいものもあると思いますが、請われるままにおこづかいを追加することはせず、こづかいの使い方を見直させたり、携帯代も込みでのおこづかいに変更して、オーバーした時は翌月のおこづかいを減らすなどして、あるものの中からやりくりする工夫を覚えさせ、計画性を持たせるための金銭教育の一環にしませんか?

(※詳細は以下をご覧ください)


人生三大出費といわれる教育費のピークがやってきましたね。

色々対策も考えられているようですから、検討していることを書きだしてみましょう。お金の流れを書きだすことを「キャッシュフロー表を作る」といいます。この作業は目先だけではなくその先まで見渡せるのでオススメです。

まずは懸念されているこの先5年間を見てみましょう。

◆例:長男も次男も無事大学に合格し、奨学金ももらえた場合

学費は文部科学省の発表している「私立大学等の平成25年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」の私立4年制大学を参照にしました。奨学金は神奈川にお住まいとのことなので、自宅から通うことを前提として、日本学生支援機構から借りるものと仮定しています。

国立に合格した場合なら学費が安くなると思われるのでよいのですが、私立の理系に合格した場合は学校によって金額に大きな差があるようです。志望校(合格率の高そうな学校)の学費を確認し、いくつかキャッシュフローを作るといいでしょう。

上記のキャッシュフローは、現在の生活を変えることなく奨学金と学費を加えた収支です。在学中も赤字にならず、現在つづけられている年間62万円の貯蓄も継続していけるでしょう。

ただこの試算は、家計診断の通りの出費をした場合にかぎります。ご自身も気にされている通り、小遣いが足りないからと請われるままに渡してしまったり、大学生になったからおこづかいは1万円にあげてあげよう、など支出を増やしてしまうと、ダイレクトに老後の資金不足に直結してしまいます。

また奨学金をもらえなかったり、どちらかが浪人することになったりしても同様に、老後の生活資金不足につながります。

◆例:兄が一浪し、二人とも奨学金をもらえなかった場合

このように、収入より支出が上回り、2016年からは収支は赤字になっていきます。

大学によっては貸与型ではなく給付型の奨学金が増えてきているようです。貸与型は返さなければなりませんが、給付型はもらえるものですので、希望の大学に制度があれば利用したいものです。どんな制度があるのか、事前に調べておきましょう。

子どもが独立後の生活もチェックしておこう

今は教育費のピークが目前で、当面の資金繰りは大丈夫か、と気になりますが、教育費のピークが終わったら、すぐに老後の生活資金の準備に入ることになります。大西さんの場合、二人目のお子さんが大学を卒業時、ご主人は55歳ですので、退職まで残り10年、その間に資金準備をしていくことになります。

子どもにかかわる費用はなくなりますし、就職すれば多少食費や通信費は減るでしょうが、それでも生活していくのに年間300万円程度は必要でしょう。まずは基盤となる年金がいくらもらえるのか確認してみましょう。毎年誕生日近くに年金定期便が送られてきていると思います。それを参考にご夫婦での年金額を実数に近い金額で確認してください。お二人合わせて300万円以上収入があればよいのですが、足りない場合、働いている間の10年で目途をつけなければなりません。

収支を合わせていくためのポイントは、60歳を超えてから下がると予想されるご主人の収入と、利佳さんがいつまで働くかの二点です。

支出を見直そう

教育費も含めてお子さんにかかわる費用というのは削りにくい項目です。

現在、こづかい、参考書、交通費、その他足りないといわれて支出している子どもにかかわる費用は二人で月に5万3千円。さらに通信費の中に子どもの携帯代なども含まれているとしたら、もっとかかっていることになります。

遠征費用や参考書など削りにくいものもあると思いますが、請われるままにおこづかいを追加することはせず、こづかいの使い方を見直させたり、携帯代も込みでのおこづかいに変更して、オーバーした時は翌月のおこづかいを減らすなどして、あるものの中からやりくりする工夫を覚えさせ、計画性を持たせるための金銭教育の一環にしませんか?

子どもが就職してから独立して家を出るまでは、しっかり生活費を入れさせましょう。ご夫婦での収支がプラスになっていれば、それを貯めて子どもの結婚費用にしてもよいと思います。働いている間にしか収入は増やすことはできないので、収入をきちんと把握することが、退職後の生活を楽にするカギになります。

その他の支出はどれも突出して気になるものはないので、今以上に支出が増えないようにすればよいと思います。

万が一の備えが大切

死亡保障もご夫婦どちらも過不足なく備えられていると思います。医療保障だけ、一生涯保障されているかどうか確認しておきましょう。

死亡保障がなくなった後、一括もしくは年払いで補償を続けていくタイプだと、年々保険料が上がっていくことも考えられますので、その場合、医療保障だけ別のものに入りなおすという選択肢もあります。

お子さんが大学に無事進学できるか、奨学金が取れるかは、お子さんの頑張り次第で、大西さんにできることは側面支援でしかありませんが、浪人したり、奨学金が受け取れずに赤字になってしまった金額は、お子さんが卒業後、働いて取り返していくことになります。

目先と、その先をしっかり見据え、教育費のピークの波を乗り切ってください。

希望の大学に現役で合格しますよう、お祈りしています。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか

「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。