連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
最近、自分たち夫婦の老後のことを考えはじめました。今から老後のお金を少しずつでも貯めようと思っていますが、結婚が遅かったため子どももまだ小さく、これからまだまだ教育費もかかります。住宅ローンと教育費をやりくりしながら、老後のお金を貯めるには、どのようにしたらいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 二宮様のように住宅ローンの返済と教育、老後の備えを同時進行する過程で、その方法に悩まれる方は少なくありません。一生を通してかかるお金は、生活スタイルや水準により千差万別ですが、教育、住宅、老後の三大資金と生活資金を合わせておよそ2億円。一方、生涯賃金は男性大学卒の場合、企業規模1,000人以上では2億9千万円、企業規模10~99人では2億円と1億円近い開きが見られます(出典:(独)労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計・労働統計加工指標集-2013」)。差し引きすると収入の範囲で十分賄えそうですが、実は、収入額と支出額が連動するわけではないので、ライフイベントに合わせて、お金の収支バランスを整えておく必要があります。無理のないプランで不安を解消していきましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


目安をおさえる--これからいくらお金が必要?

教育費と老後資金の考え方について、目安となる金額を知っておくことで必要以上の心配を取り除くことができます。その上で、必要な手立てを打ちましょう。

例えば、教育費は、お子さんの進学先により500万円から1000万円以上の大きな開きがあります。学校教育費と学校外活動費も含め、中学校まで公立校へ、高校から大学(文系)は私立へ進んだコースで試算をすると、およそ1,300万円。大学4年間では約500~600万円かかります。(参考:文部科学省「平成24年度 子供の学習費調査」、文部科学省「平成24年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査結果」)

大学進学時の17歳時点に大学費用の半分程度を用意しておけばよいので、加入されている学資保険(240万円)で代用できると思われます。高校までの学費については、日々の生活費のやりくりから捻出するという2本立ての貯蓄による資金プランをたてるとよいでしょう。

老後資金は、退職後の収入と支出の見込み額から考えます。退職後の収入は、退職金と年金受給額の合計です。高齢無職世帯(世帯主が60歳以上の無職世帯)の家計収支状況によれば、実収入は181,028円。支出は228,819円(消費支出205,629円)となっています。収入をご主人様が65歳から平均寿命の79歳まで、奥様が86歳までとした場合、(出典:総務省統計局 家計調査年報 平成24年)

  • 18万円×12か月×14年

  • 14万円×12か月×7年(妻のみ)

推計で約4,200万円となります。一方、退職された後の生活に必要なお金はいくらでしょう。日常生活費として月額22万円で暮らしていけるとした場合には、

  • 22万円×12カ月×14年(夫婦2人)ご主人様65~79歳まで、奥様65~86歳まで

  • 11万円×12カ月×7年(妻のみ)合計4,620万円

となり、支出が収入を上回る420万円が不足額に。老後資金としてその分を用意すればよいということになります。ただ、現状の支出額32万で生活維持したいとなると推計6,720万円が必要となり、収入見込み額との差額2,520万円を、退職金やその他自分年金で備える必要があります。

目標額への道のり

では、具体的にどのように準備すればよいでしょうか。

例えば、貯蓄・投資額のうち普通預金と定期預金は現状のまま、予備資金として残しておき、株式など投資資金の350万円を20年間3%で運用すると、

  • 350万円×1.806=632万円…(預金複利早見表により試算)

もう一方で、月間収支のうち約4万円を、毎月積み立て投資を実施したとします。年3%の運用で20年後には、

  • 約50万円/年×26.870=1,343万円…(積立預金複利表により試算)

となり、20年後、ご主人様65歳で退職された暁には1,975万円の自分年金が用意できているということに。ただし、投資を継続する際には、様々な市場環境があるため、その時々に応じた資産配分の見直しや舵取りが大切です。

迷いを解消する--お金のかけ方と保障の考え方

今は、奥様のパート収入のほとんどが保育園代に消えてしまっているかもしれません。ただ、お子様が就学するタイミングで、希望通りに仕事に復帰できる環境が整っているとは限らないのも現実です。今から「働くママ」のライフスタイルに、お子様もご自身も慣れておくことで生活リズムが安定し、継続して働きやすい家庭環境を整えることができるのではないでしょうか。

お子様が就学後は保育園代の52,000円を貯蓄額として見込めます。小学校低学年のうちが、お金の貯め時期。その時期にスムーズに移行し、貯蓄比率を上げ、将来のお金を備えるための準備段階として捉えてはいかがでしょう。

また、懸案の死亡保障について、住宅ローンには団体信用保険を付加されたため、ご主人様の死亡保険を解約されたのだと思います。住宅ローンはそれにより万が一の時には完済されるので心配要りませんが、遺された家族の暮らしを維持できるよう、生活資金としての保障はあった方が安心でしょう。

終身保険はその一つですが、二宮様が悩まれている通り、保険料が月2万7千円と家計には負担が重いです。それならば、最も必要な時期に必要な保障をカバーし、保険料を抑えた収入保障保険を検討されてはいかがでしょうか。保障はほしいが、保険料の負担を抑えたいという希望に叶う商品を選ばれると不安が解消されます。

このように必要な資金の目安を知り、ひとつひとつ悩みを解決する策を実行することで将来への不安を期待に変えていくことができるでしょう。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。