連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
最近保険の見直しをし、何種類もの保険に加入しました。毎月の支払がこれまでに比べかなり増え、正直、毎月の保険料の支払いが家計に響いています。また、その後も老後の年金用の保険や、妻(自分)の死亡保険を追加で加入した方がいいと言われているのですが、なるべくならこれ以上、保険での毎月の出費は抑えたく、本当に入った方がいいのか迷っています。もちろん自分たちの老後や、万が一のときのことも心配なので、アドバイスお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 万一の場合や病気、怪我などに備えて必要な保険ですが、人生で起こるリスクに対して全て保険で備えるのは合理的ではありません。自分たちの家庭にはどのようなリスクがあるのか現状を分析し、どう対処していくのか方針を決めて納得した保険選びをしましょう。住宅購入やお子様誕生といったライフイベントごとに必要な保障額も変わりますのでその都度見直すようにしましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


保険に加入する際にはまず必要保障額を見積もる

保険の見直しをして毎月の負担が減る場合もあれば、逆に増える場合もあります。木村様はこれまで共済の医療保険にしか加入していなかったということですから、保険の見直しは良い機会だったと思います。しかし、保険料の支払いが家計に響いている上、新たな保険の加入の提案も受けていらっしゃるようですので、再びしっかりと保険について考えてみましょう。

家族構成や年代、職業などにより必要な保険は異なります。小さいお子様がいらっしゃるファミリーの方にまず必要な保険は、残された遺族の生活を支える保険です。まずは、必要保障額(図1参照)を見積もりましょう。生活費に加え、教育費、住居費、葬儀費用など、今後必要な費用を算出します。そこから公的遺族年金、貯蓄、今後見込まれる配偶者の収入等を減算した差額が必要保障額であり、民間の保険で補う部分になります。

図1:必要保障額とは

死亡保障が必要なのは、配偶者が老齢年金を受け取る年齢になるまでの期間ですので、定期保険として加入します。保険金は一括で受け取る商品もありますし、木村様のように収入保障保険として毎月一定の金額を受け取る方法もあります。収入保障保険は保険金を一度に受け取るより生活設計を立てやすく、保険料も割安に済む場合が多いというメリットがあります。

貯蓄が多い方は必要保障額が少なく済みますので、保険で補う部分も少なくなります。教育費を学資保険で用意している場合は、受取金額を貯蓄と考えて必要保障額を割り出しましょう。木村様の場合、収入保障保険で月額13万円の保険に入られていますが、死亡保障としては適正な範囲だと思われます。

保険は毎月の保険料だけでなく、トータルコストでとらえよう

保険の見直しで難しいのは医療保険やがん保険の捉え方です。1カ月当たりの医療費負担額が一定額を超えると自己負担額が戻ってくる健康保険の高額療養費制度があるため、医療保険は不要、貯蓄で備える方が合理的という考え方もあります。一方で、入院が長引く場合の収入減や差額ベッド代の負担に備えて保険に入るべきという考え方もあります。

掛け捨ての商品が多い医療保険ですが、最近、一定の年齢までは支払った保険料が戻るタイプの保険が出ており、木村様の医療保険もこのタイプになります。木村様の保険内容ですと、70歳で生存していて、一度も保険金の支払いを受けていない場合、ご夫婦で約470万円の保険料が戻ってくることになります。見方を変えると、70歳までに約470万円の保険料を支払うということです。また、給付金の支払いを受けた分は戻ってくる金額から差し引かれますので70歳までは損も得もしないとも言えます。この約470万円のお金を老後資金に回せると考えればメリットはあるかもしれませんが、70歳以降も保障を保つためには同額の保険料を払い続けなければなりません。そのあたりを納得したうえで選択しましょう。

私個人の考えとしては、貯蓄が少ない場合や収入が不安定な方は医療保険で備えるのも一案ですが、木村様の場合は治療にお金がかかる場合の多いがん保険に優先加入し、病気入院や手術などの費用は貯蓄で備えても良いのでは、と考えます。心配でしたら、夫の分だけでも加入するという選択肢もあります。

老後の年金保険や妻の死亡保険は必要?

老後の年金保険につきましては、現在は予定利率が低く受け取る年金保険金も大幅には増えないため、保険に加入するメリットは少ないでしょう。老後の資金が必要になるのは30年以上先ですので、今話題の「NISA」で非課税メリットを受けながら無理のない範囲で投資を始めても良いかもしれません。投資に関しては、第38回のアドバイスを参考にしてください。

また、一般的に妻が死亡しても遺族年金は支給されませんので、場合によっては妻の死亡保険が必要です。妻の収入が生活費の一部になっている場合はもちろん、専業主婦でもお子様が小さい場合、ベビーシッター代が必要になったり不慣れな家事で食費がかさんだりと支出が増えることもあります。木村様の場合、月額8~10万円程度の収入保障保険の加入を検討してはいかがでしょうか。

人生の3大支出の一つとも言われる保険。今後安心して生活するためにも十分に検討し、納得して加入したいものです。今後、住宅を購入して団信に加入すると住居費の部分は保険で補う必要はありません。また、第2子が誕生すると教育費や生活費も増えますので必要保障額も増えます。このようなライフイベントがあったらその都度、保険の見直しを行うことをお勧めします。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 福島佳奈美

金融系SE(システムエンジニア)からファイナンシャルプランナーに転身。Webサイト中心にマネーコラム執筆を行うほか、教育費やライフプランニング、保険、家計見直しなどのセミナー講師、個人相談などの活動を行っている。