連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
半年前に第2子が生まれ、今住んでいる家が手狭になりました。もっと広いところに引っ越しするという住み替えを考えていますが、ゆくゆくはマイホームを購入したいと考えているので、このタイミングでマイホーム購入に踏み切るかどうか悩んでいます。今の家計では広いところに引っ越しして貯蓄に励んだほうがいいのか、それとも思い切ってマイホーム購入に踏み切った方がいいのか、アドバイスお願いします。
【プロからの回答です】
- どこに住みたいか、いくらの物件を購入するのか、いつまでにローンを完済したいか、美紀さんが働くことでどれくらい収入を増やすことができるかなど、ご夫婦でよく話し合ったうえで購入のタイミングを見極めましょう。今より広いところに引っ越してもう少し先に購入すると決めた場合は、しっかり頭金を貯蓄するためにもあまり家賃が高くならないように気をつけてください。
(※詳細は以下をご覧ください)
住宅を購入するためには頭金の準備が大事
マイホームを購入する場合、家族構成が固まっていること、住みたい地域が決まっているということに加え、物件の20%程度の頭金が準備できているということが大切です。金子様の場合、現在約800万円の貯蓄がありますのが、貯蓄をすべて頭金にまわせるわけではありません。緊急予備費として200万円程度、ローンを組んだ場合の登記費用や保証料、新居の家具や引っ越し代として200万円程度は手元に残しておく必要があります。そうなると、もし金子様が今マイホームを買う場合、頭金に充てられるのは400万円ということになります。
家賃並みの返済額なら大丈夫?
「頭金なしでも、家賃並みの返済額で購入できます」という広告チラシを見かけることがあります。確かに、現在の変動金利には1%を切るものも多くあり、仮に1%の変動金利で35年のローンを組んだ場合、現在の家賃と同じ月7万円の返済額とすると2,479万円、10万円の返済額なら3,542万円の借り入れが可能です(ただし、借入限度額はフラット35が物件価格の90%以内・民間ローンは80~10%などの要件があります)。ただ、変動金利の場合、ずっと1%が続くわけではなく、この先景気がよくなって金利が上がると返済額や支払う利息が増えるため、当初の資金計画と大きく変わってしまうことがあります。
またマイホームを購入後には、固定資産税や火災保険料・地震保険料、マンションの場合は管理費や修繕積立金などがかかってきますので、家賃並みの返済額だとしても生活費が不足してしまう可能性があります。ローン以外の住居費の目安は、固定資産税などが年間約20万円、管理費・修繕費約24万円(月約2万円)で、合計約44万円です。管理費については、物件によって差があり、またその他に駐車場代などがかかる場合もあります。
住宅購入のベストタイミングとは?
では、金子様にとってのマイホームの「買い時」を考えていきましょう。3000万円の物件を、フラット35で固定金利2.2%(平成25年9月現在)、35年(ボーナス返済なし)で購入すると仮定した場合、頭金を400万円とし残りの2,600万円を借りると、月々の支払いは約8.9万円(年間約107万円・総返済額3,731万円)となります。固定資産税や管理費・修繕費等44万円と合せると年間の住居費は約151万円となり、今よりも67万円のアップとなります。来年からは上のお子様の幼稚園代月約3万円(年間約36万円)もかかってきますので、貯蓄が出来ず、家計のやりくりも苦しくなりそうです。では、どうしたらいいでしょう。
仮に住宅購入の時期を上のお子様が小学生になる3年後とした場合は、頭金をもう少し増やして借入額を減らすことができます。現在約100万円を貯蓄されていますが、これから教育費として増える分を差し引いた年約65万円を、今後3年間頭金として貯蓄できれば、現在準備できている400万円に200万上乗せできるので、合計600万円を頭金にすることが出来ます。
また美紀さんは、下のお子様がもう少し大きくなって預け先が見つかればまた復職したいと考えておられます。復職後に得られる収入の見通しがつけば、生活費が不足することも避けられ、貯蓄もできます。
どこに住みたいか、いくらの物件を購入するのか、いつまでにローンを完済したいか、美紀さんが働くことでどれくらい収入を増やすことができるかなど、ご夫婦でよく話し合ったうえで購入のタイミングを見極めましょう。今より広いところに引っ越してもう少し先に購入すると決めた場合は、しっかり頭金を貯蓄するためにもあまり家賃が高くならないように気をつけてください。
これからかかるお金について把握しておこう
ローンの返済期間を35年とした場合、毎月の返済額は減らすことができますが、定年退職後もローンを払い続けることになり、老後の生活に重い負担となってしまうことが考えられます。またマイホームだけでなく、教育資金、老後資金は大きな支出となりますので将来を見通していつ、どれくらいのお金がかかるのかをつかんでおくことが大切です。貯め時はお子様が小さい時期とお子様が大学を卒業してから定年までの期間です。
金子様の場合、第1子の大学入学から第2子の大学卒業までが最も教育費のかかる期間となります。大学4年間でかかる学費は、私立文系で約420万円、私立理系で約540万円、国公立なら約240万です。それ以外にも教科書代や課外活動費などもかかります。現在、満期金240万円の学資保険に加入されてはいますが、二人のお子様が同時に大学生になる期間はピークとなりますので、教育費も少しずつ積み立てていくようにしましょう。
美紀さんが仕事に復帰されて家計に余裕が生まれ、ある程度お金が貯められようになったら、定期的に繰り上げ返済をしていくことで返済の期間を短くし、金利の負担も減らすこともできます。
このようにマイホーム購入については、将来の家族のライフプランを考え、無理のない資金計画を立てるということが大切です。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美
大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属