連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
社会人3年目です。現在実家暮らしですが、そろそろ1人暮らしをしようと考えています。今は実家暮らしで出費は抑えられていますが、1人暮らしをしたことがないので、どのようなお金がかかってくるのかわかりません。今の家計で今後も問題なく生活していけるでしょうか? 家計の見直しポイントを教えてください。
【プロからの回答です】
- 社会人生活にも慣れて、私生活でも自立の一歩を踏み出すのですね。1人暮らしが初めてとなると、いろいろ夢もふくらみます。現状を把握してから、1人暮らしの生活についてシミュレーションしていきましょう。
(※詳細は以下をご覧ください)
現状把握
月5万円、ボーナス20万円を貯めていくと、年間80万円貯められる計算になります。
収入の2割は貯蓄したいところですので、手取りの2割を計算してみると72万6千円になります。貯蓄のペースとしては良いペースでしょう。
社会人3年目とのことなので、80万円×2年で160万円貯まっているはずですが、現状は80万円、つまり1年間に40万円しか貯められていないことになります。
支出を見てみると、月額1万7千円、ボーナスでは30万円が使途不明金になっています。つまり明らかになっている使途不明金50万4千円と、貯蓄されているはずの40万円の計90万4千円が本当の使途不明金ということになります。まずは、これをなくし、貯蓄は貯蓄として使い込まないようにしていきましょう。
独身の今は、最低でもケガや病気、冠婚葬祭といった緊急時の出費に備えるために、生活費3か月から6か月分くらいは現金で持っておきたいところです。加藤さんの場合なら50万円~100万円といったところでしょうか。
支出の内訳を見ていきましょう。使途不明金以外で気になった点は食費とレジャー費の2点です。
食費が現在5万円ということですが、1人暮らしでも実家暮らしでも1万円は減らしたいところです。新生活になって自炊が習慣になれば安くできますので、ぜひチャレンジしてみましょう。今より外食に頼ってしまうと食費がさらにかさんでしまう危険がありますので、引っ越し先の周辺に、スーパーや惣菜店などバランスよい食事が安くとれるようなお店があるかどうかも事前に確認するようにしましょう。
レジャー費は、総務省の家計調査によると同年代の平均が2万5千円になっています。たばこ代が別に計上されていますが、レジャー費と合わせて考えたほうがよいでしょう。いきなり平均に合わせるのは大変だと思いますので、合わせて3万5千円を当面の目標にしてみてはどうでしょうか。
新生活の準備
引っ越し費用はいくらくらいかかるでしょうか。
マイナビの調べでは、敷金礼金、家電の購入費用など、もろもろ合わせて53万円かかるようです。
http://chintai.mynavi.jp/contents/hitorikurashi/point2/
新生活の費用は家賃補助がでるので実家に入れる費用より安くなるように思うかもしれませんが、今までかかっていなかった水道光熱費が発生しますので、それほど変わらないでしょう。物件によっては、水道光熱費込のところや、家具付き物件、駐車場代込物件のところなどもあるようです。プロパンガスと都市ガスでは月々のコストが変わってきますので(プロパンガスより、都市ガスのほうが安いです)、じっくり時間をかけて物件を探してみましょう。
また購入すると高額になる家電などは、1人暮らしをしていた友人や家族に譲ってもらったり、抵抗がなければリサイクル品を活用するのもおすすめです。
1人暮らしの引っ越しには友人に手伝ってもらうという話もよく聞きますが、経験則から言わせてもらえば、エアコン、冷蔵庫などの取り付けに関してはお金がかかったとしてもプロの人にお願いしたほうがよいと思います。
半年後に引っ越しをすると仮定するなら、現在の貯蓄額80万円と、今後半年分の貯蓄額の合計で120万円になっているはずです。引っ越し代の53万円を引いたとしても、残り67万円手元に残りますので、緊急時の場合の資金は確保されるでしょう。新生活でも貯蓄のペースを崩さないよう、今のうちから貯蓄の習慣をつけていきましょう。
貯蓄の仕方
貯蓄の基本は「収入から貯蓄分を引いた残りを使うこと」です。普段使っている口座から、強制的に他へ移してしまう方法を取らないと、使い込んでしまいかねません。
使い勝手が良いのは給与天引きをしてもらえる財形貯蓄でしょう。また、給与日を指定して、金融商品を月々購入していくというのも手かもしれません。いろいろ趣味が多そうですので、応援したい会社に対して投資をしてみるのもおすすめです。
好きなゴルフクラブのメーカーやこだわりのアルミホイールの会社など、調べてみると面白いと思いますよ。金融商品に投資するのも趣味としてしまえば、貯蓄も楽しくなるかもしれません。
新生活の生活設計
支出の流れを把握するには家計簿が一番です。エクセルで自作してもいいですし、レシートを登録していくタイプのアプリもあるようですから、続けられる手段を探してみましょう。
収入から貯蓄を引き、その残りで生活するにしても、そこからさらに家賃などの毎月一定額の固定費が引かれ、食費や通信費など月によって金額の変わる変動費が引かれます。固定費を抑えておくことはもちろん、変動費も上限を決めて余裕の資金を出すことで、レジャーにも食費にも使える資金を捻出することができます。
1人暮らしは、自分の収入の中でやりくりしていくという、自立した社会人としての一歩です。気楽さが何より魅力ですが、今まで誰かがやってくれていたことを自分でしないといけないので、工夫していかないと自分の時間がなくなってしまいます。自分の中の優先したいものは何なのか、順位をつけ、生活設計を立てていきましょう。
食事も生活もお金の使い方も、バランスよく、頑張りましょう。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか
「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。