連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
もともとズボラな性格なので、あまりお金のことを気にしていなかったのですが、普通預金の残高が現在300万円貯まりました。今はただ銀行に預けっぱなしなのですが、定期預金などに預け換えをして少しでも運用できたらいいなと思っています。でも、定期預金以外にも有利な商品などあるのでしょうか? お金の知識がまったくないので、元本割れしない範囲内でできるお金の運用について教えてください。
【プロからの回答です】
小川様の場合、お子さんの大学卒業と勉さんの定年退職がほぼ同じ時期になります。高年齢者雇用安定法の改正により希望すれば65歳まで継続雇用されますが、給与は大きく引き下げられます。そのため教育資金だけでなく、老後の資金も早めに準備を始める必要があるでしょう。
あまりお金の知識をお持ちではないとのことですが、インフレや円安に備えるために、多少リスクはありますが世界の株や債券などに投資できる「投資信託」や外貨なども検討してみてはいかがでしょうか。「投資信託」は信託報酬がかかりますが、最近では購入手数料無料のものも多く、少額で積立購入し、長期で運用すれば一度にまとめて買うよりリスクを抑えられます。
(※詳細は以下をご覧ください)
お金の運用を考える場合、「いつまでに」「何のために」「どれくらいの金額を貯めたいのか」をはっきりとさせることが大切です。
お金を貯める目的は?
5年前に一戸建てを購入した際、頭金などでそれまでの貯蓄をほとんど使ってしまわれたとのことですが、購入後も順調に貯蓄を続けられ、定期預金と普通預金を合わせて現在の貯蓄は400万円となっています。ご自身を「ズボラな性格」とおっしゃる寿江さんですが、毎月の収支にも余裕があり、支出の内訳をみると無駄のない理想的なものとなっています。ですから毎月3万円の積立とボーナス時40万円合わせた年間76万円の貯蓄も、現在の家計ならそれほど無理なく続けられそうですね。
貯まったお金をどう運用するかの前に、まずはご家族の今後のライフイベントを見ながら、いつ、どれくらいのお金がかかるかを把握することから始めましょう。
住居費、教育費、老後の資金は人生の三大支出
小川様の場合、お子さんの大学卒業と勉さんの定年退職がほぼ同じ時期になります。高年齢者雇用安定法の改正により希望すれば65歳まで継続雇用されますが、給与は大きく引き下げられます。そのため教育資金だけでなく、老後の資金も早めに準備を始める必要があるでしょう。
教育費については、小学校から高校まで公立校に通った場合、学校教育費と学校外教育費を合わせて約450万円かかります。私立の中学・高校に通わせる場合は、さらに約400~500万円程度上乗せして考えてください。
また大学の学費は、私立文系の場合、4年間で合計約415万円(初年度納付金約123万円)、私立理系の場合は、4年間で合計約540万円(初年度納付金約155万円)となっています。その他に教科書代や学外活動費、定期代などもかかります(平成22年度子どもの学習費調査、私立大学等の平成24年度入学者に係る学生納付金等調査 文部科学省)。
このように進路によって教育にかかる金額もかなり変わってきますし、もし中学や高校から私立と考える場合は進学塾などに通わせる必要があるため、その費用も見込んでおく必要があります。基本的には幼稚園から高校までは毎月の生活費の中でやりくりし、大学の費用を入学までに貯めていくようにします。
教育費の準備についてですが、現在加入されている学資保険は、18歳満期で一括200万円の受け取りとなっています。推薦などで早く決まった場合は入学金の支払いなども前倒しで必要な場合も多いため、教育資金として学資保険とは別に200万円程度準備しておくと安心でしょう。お子様が17歳になるまでの12年間で、児童手当も含めて毎年17万円ずつ貯めていけば準備することができます。
教育資金以外の貯蓄も目的別に!
何かあった時のために生活費の半年分程度の200万円は予備費としていつでも使えるよう取り分けておき、それ以外は目的別に貯めていくと管理しやすくなります。老後の資金については長い期間で、車の買い替えなど大きな買い物などについては3~5年程度の比較的短い期間で運用を考えます。
元本割れしない範囲での運用となると、やはり定期預金が一番の候補となります。大手銀行の場合は1年物の金利は0.025%ですが、ネット銀行ではその10倍の0.2%以上の金利がつくところもあります。
アベノミクスにより「2年以内に2%のインフレ目標」が掲げられたことで、将来的にお金の価値が目減りしてしまう可能性も考えられます。あまりお金の知識をお持ちではないとのことですが、インフレや円安に備えるために、多少リスクはありますが世界の株や債券などに投資できる「投資信託」や外貨なども検討してみてはいかがでしょうか。「投資信託」は信託報酬がかかりますが、最近では購入手数料無料のものも多く、少額で積立購入し、長期で運用すれば一度にまとめて買うよりリスクを抑えられます。
定年後の負担を少しでも軽く
小川様の場合、今後勉さんが73歳となるまでの30年間、月8万円の住宅ローンを返済していくことになっています。年金生活では住宅ローンの返済は大きな負担となってしまいますし、退職金で賄おうとすると老後の資金が不足してしまいます。教育費と予備費を確保した上で計画的に繰り上げ返済をしていくことで、返済期間を短縮し将来の利息分を減らすことが出来ます。
また、勉さんは死亡保障3千万円、医療保障入院1日1万円、寿江さんは死亡保障5百万円、医療保障入院6千円の定期保険に加入され、お二人で毎月2万4千円(年間28万8千円)の保険料となっています。まだお子様が小さいため、もしもの場合を考えると必要な保障ですが、保障額はお子様の成長とともに減っていきますので、更新の際は保障額を減額して見直しをするようにしましょう。
運用について考えると同時に、住宅費や保険を見直して固定費を減らすことで家計はより改善されます。ご夫婦でお子様の将来のことやご家族ライフイベントについて話し合い、将来お金がかかる時期を把握し、資金計画についても考えてみて下さい。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美
大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属