連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
3年前に結婚し、その後出産して子どもが生まれましたが、保険の必要性をあまり感じておらず、夫婦ともに現在は共済にしか入っていません。そろそろ保険を見直さなければと考えていますが、どのくらいの保障が必要なのか、どんな保険に入ったらいいのか、全く分かりません。やはり、子どもが生まれたら保険に入っておいたほうがいいのでしょうか? また、子ども自身にも医療保障って必要ですか?
【プロからの回答です】
- 生命保険は、必要最低限な保障をカバーするものと割り切って、余裕資金は全額貯金に回しましょう。貯金もできないほど保険料をたくさん払っていたり、保険料を払えないほど家計が苦しいのは本末転倒です。まずは保険の加入目的をきちんと考えてから加入することをお勧めします。
(※詳細は以下をご覧ください)
生命保険加入の目的は、もしもの時のお子様の生活費と教育費
生命保険の加入目的はさまざまありますが、主なものは、家族を支える人の死亡保障、家族の病気やケガに備える医療保障、教育費の準備資金などでしょう。保険は勧められて加入している人がほとんどですが、目的はきちんと明確にしておきましょう。
生命保険の調査機関によると、生命保険(個人年金保険を含む)の世帯年間払込保険料は約53万円となっています。保険料に関する適正な支出額というものはありませんが、一般的には、可処分所得(手取り額)のうち保険料の割合が20%だと生活が厳しくなると言われています。それを考えると10%が適性の目安でしょうか?
中島様の場合、保険の加入目的は、ご主人が亡くなられた時のお子様の教育費、生活費などだと思います。この必要最低保障額は、さまざまな機関が数字を出していますが、1億円というものもあります。確かに多ければ多いほど安心ですが、保険料も高額になります。ご主人が亡くなった場合、お子様が高校を卒業するまでは、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえます。そして奥様も働くことと思いますので、私は保険金額は3,000万円で大丈夫かと考えます。そしてその分貯金に励んで、もしもの時は貯金も活用します。
必要保障額は一定ではない
一般的に「死亡保障=終身保険」というイメージがありますが、はたして一生涯保障は必要でしょうか? また、終身保険は解約時に一部お金が戻ってくるので保険料も高額となります。必要保障額は、一生涯一定ではなく、期間の経過とともに徐々に減少していきます。末子が卒業する時が、大きな節目で以後はあまり必要でないかもしれません。このような必要な時だけの保障としては定期保険があります。20年、30年と一定期間だけの保障です。掛け捨てになりますが、その分保険料は安くなります。また、逓減定期保険というあらかじめ保険会社の定める一定の率で保障が減っていくタイプの保険もあります。
中島様の保険の加入について
医療保険に関しては、現在加入しているもので十分かと思います。そしてご主人にもしものことがあった時のために保険金3,000万円くらいの定期保険か逓減定期保険に加入することをお勧めします。安い保険料で高額の保障を得ることができますし、この保険で安い保険料のものを探せば、給与手取り額の10%である25,000円以内に収まります。マイホーム購入を考えているのならば、なおさら保険料を抑えてその分貯金に回して下さい。
子どもの医療と教育資金
子どもの医療保険は、本来必要ありませんが、活発なお子様でケガや人に迷惑かけることが心配な場合は、傷害保険に加入してもいいかと思います。ご夫婦が加入している共済保険には安くていいものがありますので、調べてみるといいでしょう。
教育資金としての学資保険ですが、実は低金利で、いい商品とは言い難いのが現状です。さらに今後の金利上昇を考えると、今後もっといい商品がでてくる可能性もあります。そのため、私は教育資金を貯めるなら、貯金で考えて欲しいと思います。会社に財形貯蓄制度があれば、それで貯めるのも一考です。給与からの天引きですし、いざという時には教育資金を安く借りることができます。まずは余裕資金である月々1万円程度から始めてみてはいかがでしょうか?
保険は万が一のときのもの
保険は、もしもの時を考えて加入するものですが、もしもの場合の確率は非常に低い数字です。実はここが肝心なのですが、必ず起こるかのように高額の保険に加入される方が後を絶ちません。確立から言えば元気な方が高いので、やはり頼るべきは貯金だと私は思います。保険は元気であれば何も残りませんが、貯金は確実に増えていきます。また、もしもの時には、すぐに使うことができます。
このように保険の加入は必要最低限にして、後は貯金に励んで下さい。貯金が増えればもしもの時だけでなく、第2子のことやマイホームなどの不安もなくなると思います。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士 菅田芳恵
大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社に勤務。49歳から2年間で7つの資格を取得し独立。様々な資格を活かして多面的に話をすることが得意。資産運用、家計管理、ライフプラン、キャリア形成、年金、心の健康についてアドバイス、執筆、セミナー講師として活躍中。