連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
子どもの年が12歳離れているので、上の子の塾代と下の子の保育園代で、教育費がかなりかかってしまっています。長女の大学入学に向けて貯金をしたいと思っていますが、毎月収支がトントンで貯金がまったくできていません。家計のどこを見直したら、貯金ができるようになるでしょうか? また、大学入学までにいくらお金を貯めておけばいいでしょうか?
【プロからの回答です】
上の子の塾代と下の子の保育料、保育料は年齢が上がるにつれて減っていきますので、あと1~2年が踏ん張りどころです。教育費は削りにくい項目ですが、"聖域"にせず見直していきましょう。
生活費を平成24年度の家計調査から宮本家の収入に対する平均値を見てみると、いくつか上回っている項目が挙げられます。大事にしたい項目とそうではない項目とランクを付けて、ランクの低いものは思い切った削減をして、平均以下を目指しましょう。
(※詳細は以下をご覧ください)
"聖域?"の教育費
確かに、教育費に月9万5千円は負担ですね。
下のお子さんの保育料がとても高いように思いますが、認可外保育園に入園されているのでしょうか。市川市は、認可外保育園に入園している子どもの保護者へ3歳未満は2万1千円、3歳以降は1万200円補助金を出しています。また、入園はキャンセル待ちなどで難関かもしれませんが、収入に応じて保育料が決定される認可保育園へ申し込みをしていくのもひとつの手です。3歳未満の保育料は高いですが、3歳を超えてくると保育料は半分以下になるはずです。
上のお子さんの塾費用も、もう少し安いところに変えられないか、受講科目を減らすことができないか検討するのもいいでしょう。上の子の塾代と下の子の保育料、保育料は年齢が上がるにつれて減っていきますので、あと1~2年が踏ん張りどころです。教育費は削りにくい項目ですが、聖域にせず見直していきましょう。
生活費の節約
生活費を平成24年度の家計調査から宮本家の収入に対する平均値を見てみると、いくつか上回っている項目が挙げられます。大事にしたい項目とそうではない項目とランクを付けて、ランクの低いものは思い切った削減をして、平均以下を目指しましょう。
- 通信費
通信費の平均は12,000円です。現状が3万円なので、いきなり半分以下にというのは難しいかもしれませんが、固定電話と携帯などを一つにすると安くなるパックを利用したり、思い切って固定電話をやめてしまうなど、1万円は節約できないか検討してみましょう。
被服費の平均も12,000円。現在2万円使っているようですので、平均を目指すとしたら8千円節約できます。
外食、家族の小遣い、レジャー費
家族の小遣い(ランチ代含む)とレジャー費が合わせて5万2千円。さらに食費の中に外食費が含まれていますね。外食もレジャーと考えて、この3項目まとめて2万円を目標に節約できないかどうか、ランチにはお弁当を作るなどして節約を心がけましょう。
キャッシュフロー表を作ってみる
また、将来を見通すのには、キャッシュフロー表を作ってみるのが有効です。
まずは現状の生活費でキャッシュフロー表を作ってみます。今の生活スタイルを変えないならば、長女が大学へ行っても、長男が大学に行っても、貯蓄を取り崩しつつ、生活していくことは可能です。
前提として、保育費は3歳以降半分になり、ご夫婦ともに65歳まで働くけれど、60歳からは収入が下がることとし、お子さんたちは高校まで公立、大学は4年生文系に進学することとしています。
また、大学の施設整備費はない学校もあるようですが、毎年かかってくると仮定しています。
赤字、つまり貯蓄を取り崩していく期間は、長女の大学在学中の4年間と航平さんの退職の年だけです。航平さんに退職金が入れば赤字は解消されますし、備えるとしたら、長女在学中の赤字分でしょうか。赤字額は4年合計で約50万円です。今から大学入学までの5年間で50万円を目標にすればよいのではないでしょうか。
菜月さんは扶養を外れて働いているようであれば、今後菜月さんの収入を増やすようにしていくのでも、前に上げた項目で節約を目指すのでも、ご主人のお小遣いを減らすのでも(?)、やりやすい方で貯蓄をしていけばよいと思います。
保険加入のススメ
ただし、上記のキャッシュフローは、けがも病気もしない前提での話です。
夫婦揃って現在の収入でいられれば成り立つシミュレーションになります。
病気にかかったり、亡くなったりするのが、航平さんでも菜月さんでも、生活は成り立ちません。
航平さんが厚生年金に入っていれば、亡くなってしまった場合、遺族年金がもらえますが、菜月さんが亡くなってしまった場合、家族に遺族年金は出ません。航平さんが亡くなってしまった場合、65歳まで月々20万円は受け取れるような保険に、菜月さんが亡くなってしまった場合も、同じく65歳まで月15万円は受け取れるような保険に加入し、備えておくことをおすすめします。
掛け捨ての安い保険を選べば、航平さんの場合の保険料でも月1万円以下、菜月さんの場合の保険料でも5千円以下で加入することができると思います。現在菜月さんが加入されている保険は2,000円で入院保障等の医療保障が十分であれば、それはそのまま続けていきましょう。
第3の矢、第4の矢…?
高校までは生活費の中から支出し、大学進学用にお金を貯めるのが基本ですが、どうしても貯められない場合、奨学金を借りることを検討したり、ご両親が健在で資金的に余裕があるようなら、贈与してもらう(平成27年12月31日までの期間限定ですが、1,500万円までなら教育資金の贈与を受けても税金がかかりません)、長女が就職したら生活費を入れてもらうなど、収入を増やすための第3の矢、第4の矢という選択肢の利用も検討しておきましょう。
生活のゆとりをもたらすには、収入を増やすか、支出を減らすか、(余裕資金で)運用して増やすかになります。アベノミクスの第3の矢がどのようなものが出てくるか、そして、参院選挙後も継続して景気の浮揚策がとられるか注視しておく必要がありますが、貯蓄のほんの一部をお気に入りの会社、さらには株式優待に好みの品が届く会社に投資して、小さな楽しみを得ながら投資の勉強をするというのもおすすめです。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか
「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。