連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
子どもがいないので、毎月黒字のはずなのですが、1カ月が終わるとなぜかあまり手元にお金が残っておらず、なかなかお金が貯まりません。家計簿はつけているのですが、家計のどこを見直せばいいでしょうか? また、住宅ローンもできるだけ繰上げ返済をしたいと思っていますが、まずは貯蓄額を増やした方がいいでしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • なかなかお金が貯まらないとのことですが、一番の問題点は「収入-支出=貯金」の図式になっていることです。このため、お金があれば使うだけ使ってしまうので、残る金額は少なくなってしまいます。まずはこの図式をやめて「収入-貯金=支出」に変えてみましょう。

  • また、住宅ローンに関しては、変動金利ということで、今後金利が上昇した場合に大きなリスクとなります。このリスクに対処するためには、家計を見直し、なるべく早めに住宅ローンを返済することです。

(※詳細は以下をご覧ください)


変動金利型ローンの仕組み

基本的に市中の金利動向によって金利が変動するローンで、適用金利は半年に一回見直されますが、実際の返済額見直しは5年に1回となっています。また、金利が上がって返済額が増額されるときには、増額の幅は25%までという決まりがあります。当初5年間の毎月の返済額が10万円なら、金利が大幅に上昇しても6年目からの返済額は、125,000円が上限となります。

返済額見直しの注意点

金利が上がり5年後には増額となる時にも増額幅は25%までとなっていますが、25%以上の部分をカットしてくれるわけではありません。その部分は、毎月返済額のうちの元金と利息を調整することになります。つまり、返済額による元金分の比重が小さくなり、元金の減り方が遅くなってしまいます。最悪の場合には、「未払い利息」が発生して、いくら返しても元金が減らずに、当初の予定の返済が終了したのに、まだ元金が残っているということもありえます。

上記のように金利が上昇していくと、毎月の返済額は一定で変わりませんが、利息の割合がどんどん増えていきます。そのために3%の大幅な上昇があるとなんと利息は毎月の返済額を超えてしまいます。つまりこの11,549円が未払い利息です。約束通りに返済しているのに、元金が減らないどころか、逆に未払い利息という名の元金が増えてローン残高が増えてしまうという恐ろしい状態が発生することになるのです。今後の金利情勢は、どうなるのかわかりませんが、いつまでも低金利が続くわけはないということは肝に銘じていただきたいと思います。

家計の対処法(1)--返済額の増額

現在住宅ローンとして、3,000万円の借入金があります。毎年ボーナスなどで繰上げ返済を考えることもできますが、その場合繰上げ手数料がかかりますし、ボーナスは会社の業績に左右されますので、あまり頼るべきではありません。そこで毎回の返済額を増やすことにより返済期間を短くして利息分を減らすことをお勧めします。野口様の場合は、貯蓄でお金を貯めて繰上げ返済をするより、確実に完済に近づいていきます。家計を見直して貯蓄分を住宅ローンに回します。ただし、民間の住宅ローンは、金融機関によって返済額の増額・減額といった条件変更は、それぞれ対応が異なりますので事前に確認をしてください。

家計の対処法(2)--家計のスリム化

「お金を貯める=住宅ローンの返済額増額」ということで、まず毎月いくら貯金に回せるのか考えて、その残りを使うようにします。毎月2万円ほどは残っているようですが、これを基に増額を考えます。スポーツクラブの費用ですが2人で18,000円。これは貯蓄に回して、お金をかけずに運動しましょう。

また、保険ですが、住宅を購入するとローンに団体信用生命保険をつけるために、契約者が死亡・高度障害状態の場合には保険金でローンの残債が一括返済されます。死亡後の住居費の心配がなくなりますから、思い切ってご主人の終身保険を解約してはどうでしょうか。死亡保障はなくても医療保障は欲しいという方が多いのですが、ご主人は県民共済に加入されていますし、万が一病気になった場合は健康保険から「傷病手当金」が最長1年半支給されます。それほど心配はいらないのではないでしょうか。ここで保険を見直すことによって3万円の余裕と現在の2万円を足して月に5万円は貯金ができることになりますので、そのままこれを住宅ローンの返済増額に回します。貯金に関しては、今までの280万円がありますし、今後ボーナスも貯金に回していただくと住宅ローンを払いながらの貯金としては十分かと思います。

とにかく、変動金利の住宅ローンは、今後の金利上昇を考えると少しでも早く返しておく必要があります。それに対処する一番の方法は、貯金をするのではなく、早めに返すこと。野口様の場合は、いつお金が貯まるかわからない繰上げ返済よりも、毎月の返済額を増額して確実に借入金を減らしていくことが、金利上昇リスクに備える最大の方策となるのではないしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士 菅田芳恵

大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社に勤務。49歳から2年間で7つの資格を取得し独立。様々な資格を活かして多面的に話をすることが得意。資産運用、家計管理、ライフプラン、キャリア形成、年金、心の健康についてアドバイス、執筆、セミナー講師として活躍中。