連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
第2子出産を機に仕事を辞めて専業主婦になろうと思っています。夫の収入だけでやりくりしていけるか不安です。家計を見直し、上手にやりくりするポイントを教えてください。
【プロからの回答です】
やりくりを上手に始める第一歩はやはり家計簿をつけることです。1日、1カ月のお金の流れを掴むために最低3カ月は続けられることをお勧めします。何にどれくらい使っているのか、何を減らせるのかが見えてきます。
お金の管理については、月々の支出を『口座管理』と『現金管理』の2つに分けます。『口座管理』は、通帳記入しただけで各項目のお金の流れがわかるようになります。例えば、固定支出と変動固定支出の流れを銀行口座で把握します。一方の『現金管理』は、お金を項目ごとに袋分けし、そこから出して使っていきます。食費、小遣い、雑費、交際費などがこれにあたります。
(※詳細は以下をご覧ください)
共働きから片働きの環境に変わるときには、世帯収入が大きく減ることになるわけですから、不安になるのは当然です。ただ、小さいお子さんの子育てに専念できる喜びも大きいですね。将来を見据えたマネープランへと繋げていけるよう、まずは、これまでの家計を見直し工夫できるところを見つけていきましょう。
現状の家計を把握し『見える化』を
これまでの共働きでの世帯収入ですと、貯蓄をした上で、月間収支で74,000円ものゆとりを残すことができました。敦子さんが仕事を辞めることにより15万円の手取り収入が減ってしまいますが、その一方で必要ではなくなる支出もあります。子育てに専念されることで、これまでかかっていた保育園代を生活費に充当できるようになります。また、月10万円が既に利夫さんの給与から天引きされ貯蓄へ回っていることを考えれば、365,000円の中で調整できるところを探してみればよいということになります。
やりくりを上手に始める第一歩はやはり家計簿をつけることです。1日、1カ月のお金の流れを掴むために最低3カ月は続けられることをお勧めします。何にどれくらい使っているのか、何を減らせるのかが見えてきます。
また、ほかの家庭はどのような家計状況になっているのかを知ることも、ひとつの目安として家計見直しの参考になります。西山さんと同じ30~39歳の方の収入と支出の状況によると、手取り収入398,669円、消費支出が271,859円となっています。(総務省の『家計調査』平成24年より)西山さんのこれからの世帯収入で、やりくり次第では不安を取り除く事は充分にできるでしょう。
家計やりくりのポイント
では、どのように管理し、どこでやりくりするのかを考えてみましょう。
お金の管理については、月々の支出を『口座管理』と『現金管理』の2つに分けます。
『口座管理』は、通帳記入しただけで各項目のお金の流れがわかるようになります。例えば、固定支出と変動固定支出の流れを銀行口座で把握します。固定支出は家賃、駐車場代、保険料などがあります。変動固定支出は、毎月決まってかかる費用ですが、その月により金額が変動するもの、水光熱費、通信費などです。
『収入』-『貯蓄』-『固定支出』=やりくりする生活費
一番動かせるものはどれでしょう。見直し効果が大きいのは固定支出です。ここから減らすことを前提に考えていく必要があります。
ただ、西山さんの場合には、家賃は収入に占める割合が大きいものの、引越をするわけにもいきません。現在の保険料は、貯蓄型の保険を除くと月4,000円と負担は大きくなく家計に与える影響は小さいと言えます。そうなると動かせるのは、変動固定費の方になります。
通信費、車両費、レジャー費、被服費はいずれも現状維持ができれば大丈夫です。ただ通信費は、これ以上増やさないために、利用内容を確認してみましょう。携帯電話などは、使い方に合ったプランを選ぶことで、余分なサービス料を削減することができます。また通信会社のサービス内容も頻繁に変わるため、常に気にかけておくようことも大切です。
光熱費は、家で子育てをする時間が長くなることを考えると、若干上がることも想定し世帯収入365,000円の4~5%の15,800円くらいを目標とします。
一方の『現金管理』は、お金を項目ごとに袋分けし、そこから出して使っていきます。食費、小遣い、雑費、交際費などがこれにあたります。
高くついてしまっているのではと気にされている食費については、収入の13%以内の47,450円に抑えます。1日に使える額を1,581円と決め、予算内でのやりくりを続けることにより使い方の習慣ができていきます。また、食材を使い切ることもムダを省くために大事です。食材をまとめ買いする場合は、冷凍しやすいもの、傷みにくい食材を選ぶこと。保存がきかない食材は使い切れるサイズ、量を買うなどの買い方の知恵も役立ちます。
交際費は、その時々により冠婚葬祭が重なる場面では節約は難しいかもしれません。ただ、通常月は手取り収入の5%内など予算を定めておくとよいでしょう。
この他、雑費を2~3%に、お小遣いを8%を目安に調整することができれば、利夫さんの収入内で貯蓄型保険以外に31,000円の貯金もできる格好になります。ただ、31,000円を確実に貯蓄へ回すために、10万円の給与天引きで貯蓄している分と同様に、先取りしてしまいます。手が付けにくいネット定期口座、あるいは証券口座などへ予め振り向けてしまいます。
ライフステージによる変化に合わせて
将来、マイホームを持つ願いやお子さん達の教育費のために、必要なお金も備えていきたいですね。教育費は、幼稚園から大学まで公立か私立かにより大きく金額は分かれます。仮に、幼(私立)・小中高(公立)・大学(私立文系)の場合で約1,040万円かかります。20年後に2,000万円貯めたい場合、年利3%で運用するとして毎年約74万円(毎月6万円)ずつ積み立てることになります。ただ、教育費は一度にこの金額が必要になるわけではないので、現在加入されているような学資保険と併用して準備することも有効な手段です。
今後、社会保険料の引き上げによる手取り収入の影響が懸念され、ライフスタイルや年収の違いを問わず、どの家計でも手取り収入が減少するとも言われています。そのような将来の変化にも備えて、お子さんがある程度成長した段階で、敦子さんが仕事に復帰できるよう心積もりをされていかれることも大切かと思われます。
どのような環境にも柔軟に対応できるよう、やりくり上手で、いざとなれば収入をサポートできる体制は強みになります。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子
大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。