近ごろは、「若い世代には関係ない」と言い切れなくなった年金や老後資金の問題。老後まで時間のある20~30代の人でも、自分のリタイア後の生活を考え、可能な範囲で備えておくと安心です。とはいえ、まだ所得が少なくライフイベントの多い時期から、ずっと先のためにお金を貯めるのは大変です。今からでも無理なく老後資金を蓄えるにはどうすればいいのでしょうか。

老後に必要なお金の計算方法

まず、老後生活を送るのに必要な金額の目安を確認してみましょう。総務省統計局の「家計調査報告(家計収支編)-平成29年平均速報結果の概要」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1ヶ月の支出は、消費支出が235,477円、社会保険料や税金など非消費支出が28,240円となっています。合計すると、263,7171円です。つまり、標準的な老後生活を送るには、約26万円程度かかるのだとイメージしておくことができそうです。例えば、65歳から90歳までの25年間、老後生活を送ると仮定すると「26万円×12ヶ月×25年間=7800万円」となり、そのうち公的年金などの社会保障給付でまかないきれない分の金額を備えておく必要があります。

ただし、リタイア後にどのような生活を送りたいかによって必要な資金は変動します。退職金や公的年金の金額も人によって差がありますので、「自分の場合はどのくらい備えるべきか」を大まかに把握しておくと良いでしょう。老後生活に必要なお金は、以下の計算式によって求められます。

①無年金期間(60~64歳)の生活費
【毎月の生活費×12ヶ月×5年間】
②65歳以降の生活費
【公的年金だけでは足りない金額×12ヶ月×○年間】
※「○年間」には65歳から自分で想定した年齢までの年数を入れる(例:90歳まで生きると仮定すれば、25年間)

さらに、③病気など万が一の時に備えるお金(300万円程度)を足しまましょう。①+②+③の合計額からもらえる退職金を差し引くと、老後までに自助努力で準備しておくべき金額を算出することができます。

ちなみに、一般的には夫婦二人の世帯であれば、公的年金以外に3,000万円程度用意しておきたいところです(退職金を含む)。私たちがリタイア後の生活を送る頃には、現在とは物価が変化している可能性もあり、実際に必要な金額を詳細に算出することは難しいですが、大まかな目標があれば貯蓄計画を立てやすいのではないでしょうか。

老後資金の貯め方にはどのような方法がある?

老後のお金を貯める方法は様々ありますが、ここでは、代表的なものとして「個人年金保険」と「低解約返戻金型終身保険」、そして「確定拠出年金」を簡単にご紹介しましょう。

<個人年金保険>
個人年金保険は、公的年金の補てんとして保険料を積み立てる私的年金のひとつです。将来の受け取り方には、「確定年金」「終身年金」「有期年金」といった種類があります。このうち代表的なのは確定年金で、被保険者(年金受取人)の生死に関係なく、5年、10年、15年と契約時に決めておいた一定期間だけ年金が受け取れます。

被保険者が死亡した場合は、遺族に年金が支払われる仕組みです。終身年金は、被保険者が生存している限り一生涯年金が受け取れる保険で、保険料は高めの設定となっています。有期保険は、被保険者が生存している限り、契約で決めた一定期間だけ年金を受け取ることのできる保険で、保険料は低めに設定されています。

<低解約返戻金型終身保険>
低解約返戻金型終身保険は、保険料払込期間中の解約返戻金を抑える代わりに、保険料を安く設定している終身保険のことです。一般的に、返戻金が低くなる期間と保険料払込期間は同じであり、低解約返戻期間が終われば、解約返戻金はそれまで支払った保険料を上回り、増えて戻ってきます。解約返戻金が抑えられているうちの解約は避けたいことから、確実に貯蓄でき、死亡保障も備えることができます。若いうちは保障として、子どもが独立したら解約し老後資金として活用するといった使い方が可能です。

<確定拠出年金(DC)>
確定拠出年金は、毎月一定の掛金を支払って運用し、老後にお金を受け取ることができる私的年金のひとつです。最大の特徴は、運用商品を加入者自身が選択し、自己責任で運用していくという点です。将来受け取る年金額は、その運用成績次第で変わります。確定拠出年金には、企業型と個人型の二種類があり、そのうち個人型は2017年1月から加入対象者が大幅に拡大し、現役世代のほぼ全ての人が入れる制度となりました。確定拠出年金は、節税効果に優れていることから、効率的に老後資金を貯めていくにはメリットの大きい年金です。

老後のお金は、たとえ少額でも早いうちから蓄えておいたほうが後々の負担をぐっと抑えることができます。特に、確定拠出年金は税金の優遇制度があるため、長い期間運用するほど複利効果の恩恵が受けられます。個人型の場合、毎月の掛金は5,000円から積み立てられますので、無理のない範囲で始めておけば「老後のために何もしていない」不安は和らぐでしょう。

筆者プロフィール: 武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録FP。