寝苦しい夜が続く今日この頃。真夏の暑さを吹き飛ばすべく、3人のお笑い芸人に奇妙な体験について語っていただきました。涼しさとともにほかのなにかがやってこないよう、ご注意ください……
今回の語り手は、お笑いコンビ「マテンロウ」の大トニー。沖縄のホテルでの奇妙な体験とは……。
『だんだん近づいてくる人影、そして……』
沖縄にも吉本の劇場があるのですが、そこに出演するときは僕たちホテルに泊まるんです。
その日、泊まったホテルがかなり古くて内装や構造なども不気味な雰囲気で、なんだかイヤな予感がしていました。
案の定、夜寝ているとき金縛りにあってしまいました。
目を開けたくても開けられない状況がしばらく続いたのですが、一瞬ぱっと目を開けたとき、部屋の中に人が立っているのが見えたんです。
部屋が暗くて顔などは見えなかったんですが、髪の毛が顔全体にかかっているような感じで、体を斜めに傾けてこっちを見ていて……。
目を閉じるのが怖いんですが、自然とまぶたが下りてきて何も見えなくなりました。しばらくして目を開けると、その影が少しずつこちらに近づいているんです。
そうやって目を閉じたり開けたりを繰り返すうちに、ついに僕の目の前まできてしまっていました。
そこまできても、やはり影というか真っ黒で、顔などは見えないんです。
「もうやばい」と思い、思い切って力を入れると、ふいに動けるようになったので、僕はそのままベッドから飛び出しました。
無我夢中で電気をつけてみたんですが、そのひと影はもういなくなっていました。
そして、もうここにはいられないと思い、外に出ようとドアのほうに行くと、ドアの下の隙間から、廊下の光が漏れて人の足のような影が見えるんです。
たまたま誰かが立っているとかではなく、明らかに僕の部屋の目の前に立っている。
深夜なので、芸人仲間やホテルのスタッフということもないなと思ったのですが、思い切ってドアを開けてみると、そこには誰もいませんでした。
その後、そのホテルには泊まっていませんが、あの足はだれのものだったのでしょうか……。
マテンロウ・大トニー
お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。東京都出身。2010年に相方のアントニーと「マテンロウ」を結成。2016年、芸名を「大野大介」から「大トニー」に変更した。中学生の頃から心霊体験をするようになり、怪談ライブやイベントなどにも数多く出演している。