寝苦しい夜が続く今日この頃。真夏の暑さを吹き飛ばすべく、3人のお笑い芸人に奇妙な体験について語っていただきました。涼しさとともにほかのなにかがやってこないよう、ご注意ください……

今回の語り手は、お笑いコンビ「井下好井(いのしたよしい)」の好井まさお。番組のロケでとあるトンネルに行ったときの話です。

  • 井下好井・好井まさお

    「井下好井」の好井まさおさんは幼い頃からたびたび奇妙な体験に遭遇してきたという

『手首が……』

テレビ番組のロケで、心霊スポットとして有名な関東の、あるトンネルの中で怪談話をしたときのことです。

普段は封鎖されているというそのトンネルの中は、見たことのない妙な標識があったりして、かなり不気味な雰囲気でした。

実際に僕が怪談を話し始めてしばらくすると、音声さんから「雑音がすごい入ってくる」とストップがかかりました。

ベタな話ではあるんですが、そのときは音声さんだけでなく、僕を含めてその場にいた全員の耳にも実際にその雑音が聞こえていたんです。

それは、大勢の人がザワザワと話しているような音でした。

しばらくしてまたカメラを回し始めると、今度は突然照明が消えて真っ暗に。

ドッキリの演出かと思いたかったのですが、ベテランの照明さんがものすごく焦っているのを見て「これはホンモノだ……」と。結局、3分の怪談をするのに1時間近くかかってしまいました。

普通そういう心霊スポットでロケをする時は、お祓いをしたり塩をまいたりするんですが、そのときはそういうのが一切なかったんです……。気になりつつもその日はそのまま家に帰りました。

  • 「トンネル」 - 井下好井・好井まさおのコワイ話

    奇妙な雑音、停電……不可解な現象がつづいた

夜になるとだんだん身体がだるくなってきて、熱を測ると40度にまで上がっていました。

とりあえずベッドに入って寝ようとすると、今度は金縛りに。金縛り自体はよくあることなのでそのまま寝ようとしたんですが、その時はものすごく時間が長いんです。

「おかしいな」と思っていると、

ペタペタペタ……

と、だれかが裸足でフローリングを走っている音がするんです。

目を開けると、5歳くらいの見知らぬ女の子が、部屋の中を走り回っていました。

しかもよく見ると、その子、手首がないんです。

次の瞬間、ぱっと目が合ってしまって、その子が僕のほうを向いて立ち止まりました。

そして、手首の断面をゆっくりとこっちに向けてきました。

するとだんだん息が苦しくなってきて、ハッと気付いたのですが、小さな手首が僕の首を絞めているんです。

――そのとき目が覚めました。

「心霊スポットに行ったから変な夢みたんや……」と思ってふと気付くと、隣で寝ていた妻が起きていました。

そしてさっきまで夢の中で女の子がいた方を見ながら、

「今のなに? 女の子が……え? なんで?」

とパニックになっているんです。ちなみに妻はそれまで霊を見たことは一度もありません。

次の日、まだ体調が悪かったので近くの病院に行くと、「もっと大きな病院に行ってください」と言われ、大きな病院で診てもらうことになりました。

すると、「数十年ぶりに出た珍しいウイルス」ということで即入院に。精密検査や聞き取りなどをされたのですが、変な物を食べた心当たりもなく、原因がまったくわからなかったんです。

そしてその間、僕のカバンの中の台本を見た妻が、あのトンネルについて調べていました。

するとあのトンネルは、とある凶悪な連続殺人事件の遺体が遺棄された現場だったそうです……。

しかも、その遺体を検死したのが、そのときの僕の担当医の先生だったんです。

この話には続きがあって、その後でわかったんですが、実はそのロケで一緒だった別の芸人も、そのとき僕と同じウイルスにかかっていたそうです。

珍しいウイルスだし、同じ物を食べてもいないので本当に不思議だと思ったんですが、よく考えるとその人、僕が怪談を話している間、一番、からかったり、騒いだりしてたんですよ。

それ以来、僕は仕事であっても心霊スポットには行かないようにしています。

井下好井・好井まさお

お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。大阪府出身。2007年相方の井下昌城とお笑いコンビ・井下好井を結成。フジテレビ『人志松本のゾッとする話』にも数回出演。Netflixのオリジナルドラマ『火花』など俳優としても活躍している。