男の家電では、今回から数回にわたって、「スマート家電」について取り上げていきたいと考えている。スマート家電は、このところ各社から発表が相次ぐ、話題のカテゴリーだ。
各社が推し進める「スマート家電」化
まずは、現在発表されているスマート家電の概要を見てみよう。
パナソニックは8月21日に、洗濯機、エアコン、冷蔵庫、スチームIHジャー炊飯器などのスマート家電製品群を発表している。詳細については次回以降で触れていきたいと思うが、これらの製品群のキーとなっているのが、スマートフォンで「パナソニックスマートアプリ」と呼ばれるクラウド型サービスに接続し、機能の拡張、操作、情報表示を行うというものだ。
8月29日に東芝ホームアプライアンスが発表したルームエアコン「大清快VOiCE」シリーズは、東芝グループのホームITシステム「フェミニティ」と接続可能という特徴を持っている。同システムの詳細は次回以降で取りあげて行くつもりだが、家電製品をネットワーク経由で遠隔操作、またはモニタリングするシステムだ。操作に使用するのはスマートフォンで、同社が運営する「フェミニティ倶楽部」のクラウドサービスを利用する形となる。
三菱電機では、8月21日に、2013年度モデルのルームエアコン「ハイブリッド霧ヶ峰」、冷蔵庫「JXシリーズ」を発表している。これらは、同社が「スマートクォリティ」と呼ぶ新コンセプトに基づいた製品だ。同コンセプトは、スマート電化からスマートハウスへの戦略展開も含まれており、やはりスマート家電の一種と考えるべきだろう。
3社のスマート家電には大きな違いがある。東芝のスマート家電は、リアルタイムでネットワーク経由のデータ処理が可能だ。それに対して、パナソニックや三菱電機のスマート家電では、それは行えない。パナソニックの場合は、スマートフォンを家電製品本体にタッチすることで情報のやり取りを行う(エアコンを除く)。
また、三菱電機の場合は、ネットワークに接続せず、製品内での処理で完結させているようだ。一方、東芝のスマート家電はスマートハウスを意識したもので、システムの導入には設備更新のためのコストが掛かる。それに対して、パナソニックのスマート家電では、必要なものがスマートフォンだけで、特に住宅設備などを更新する必要はない。三菱電機のスマート家電は、スマートハウスへの展開も視野に入れたものとされているが、具体的な展開はこれからだろう。
「スマート家電」の定義とは
さて、根本的な話なのだが、「スマート家電」の定義とは何だろうか。筆者には、明確な答えが現状では見つかっていない。何らかの規格があって、それに適合しているのがスマート家電で、適合していないものはスマート家電ではないといった、境界があるわけではないようだ。
一方、スマート家電が目指す方向性に関しては比較的分かりやすいといえるだろう。家電製品をネットワークに接続でき、クラウドサービスで情報を処理し、省エネ性やユーザーにとっての利便性を向上させるというものだ。そして、それは家電だけでなく住環境、エネルギー環境も制御対象とする。これが、高級モデルだけでなく、普及価格帯の製品にも波及してくれば、我々の生活はおそらく、より便利なものになるだろう。
現状のスマート家電は、まだその領域には到達していない。だからといって、現在の製品がまだスマート家電ではないのかというと、決してそんなことはない。
しかし困ったことに、スマート家電に求められる要素、例えば省エネ性の追求や、状況をセンサーで検知して最適な処理を行うといったことは、それ以前の家電製品でも既に行われていた。
そのため、どこからがスマート家電なのかという話が、2012年においては不明確で、スマート家電というカテゴリー自体が曖昧になっているような気がするのだ。もし、何らかの基準があるのなら、このトピックは即終了なのだが、どうもそういうわけではなさそうだ。明確な基準がないため、個別の事象を当たっていくしかないことになる。
次回に続く |