家庭でも使える充電池に注目が集まっている。電力使用のピークシフトに役立つというだけでなく、アウトドアなどで発電機の代用というのも、使用目的として挙げられているようだ。

もちろん、充電池自体が直接節電につながるというわけではない。それどころか、変圧とAC-DC変換でロスが発生するうえ、バッテリーに注ぎ込んだ電力の全てが使用できる電力として蓄えられるわけではない。しかし、一般的な家電製品を動かせるだけの電力を蓄えておけるというのは、なかなか便利なことだ。

"電気自動車に蓄えた電力を~"といった話もテレビでよく紹介されているが、電気自動車は第一義的には自動車だ。電力をプールすることを主目的に電気自動車を導入する人はさすがにいないだろう。

それに、電気自動車を導入するのにはまだまだ乗り越えなければならない壁がある。インフラの整備だ。社会としてのインフラだけでなく、ユーザーが自宅に設置しなければならないインフラも大きな壁となっている。充電コンセント付きのカーポートなど、なかなか簡単に用意できるものではない。そして自動車に蓄えた電力を家庭で使用するには、オール電化、またはそれに近い環境も必要にになる。

しかし、そこまで大袈裟なことはしたくないが、停電対策やピークシフトに役立つ機器は欲しいというニーズが高まっているのは確かだ。家庭用の充電池は市場でもかなり好調だ。

これらの製品には、充電池、家庭用の交流電流を充電池用の直流に変換する回路、充電池に蓄えられた直流電力を家庭用と同じ交流電力に変換するための回路などが組み込まれている。

こういった製品に搭載されているバッテリーの容量は、多くの場合200Wh~600Wh程度だ。バッテリーの種類はメーカーや製品によってさまざまだ。低価格なモデルでは鉛蓄電池を使用しているものもあるし、Ni-MH(ニッケル水素)バッテリーやリチウムイオンバッテリーを採用している製品もある。

ホームエネルギーサーバー「CP-S300E」

今回取り上げるのは、ソニーが販売している、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用したホームエネルギーサーバー「CP-S300E」だ。製品名の最後の「E」の文字は、"東日本仕様"の意味で、50Hzの交流を出力できる。60Hz仕様の西日本向けモデル「CP-S300W」も用意されている。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは安全性が高く、充電後長期間経過しても自己放電が少ない、充放電サイクルが多いという特徴を持っている。

このコラムでは今までにも何度か、充電池について取り上げてきた。最初に取り上げたのは、三洋電機(当時)のeneloopと、松下電池工業(現、パナソニックエナジー社)のHHR-3MPS(充電式「EVOLTA」の前身モデル)だった。その後、スマートフォンへの充電に対応したモバイルバッテリーなども取り上げてきた。

それらに対して、CP-S300のバッテリー容量は300Whと桁違いに大きい。別の例を挙げると、単3形のNi-MHバッテリーは電圧1.2V、容量は2,000mAh前後だ。つまり約2.4Whということになる。

CP-S300の300Whというバッテリー容量は、単3形Ni-MHバッテリー125本分になるわけだ。当然ながら、Ni-MHバッテリーのように抵抗を繋いで、電圧の変化を測定するということを行う気にはなれない。

というわけで、精度は落ちるが、ワットチェッカーを使って測定を行ってみる。CP-S300はACアダプター経由で充電を行う。ACアダプターとコンセントの間にワットチェッカーを繋いでCP-S300Eをフル充電し、それまでに消費した電力を測定してみた。

ワットチェッカー経由でACアダプターを接続して、フル充電に必要な電力を測定する

CP-S300の仕様では、約6時間でフル充電となっていたが、筆者の環境では約5時間でフル充電された。かなり高速だ。ソニーによると、充電に必要な時間は周囲の温度に影響されるということだ。今は7月で、室温もそれなりに高い。これが良好な結果を生んだのだろう。その間の消費電力は、充電開始時には68W、1.5時間後には73W、3時間後には78Wとなり、その後はこのままだった。おそらく、製品本体の温度と関係しているのだろう。また、フル充電で消費した電力量は、0.39kWhだった(その後何度か測定を行ったが、この数値には変わりはなかった)。

充電中は、オレンジの「充電中ランプ」が点灯する。その上の緑色のLEDは、充電の進行具合を表している

充電が完了すると、LEDは消灯し、これ以上ACアダプター側から電気は流れない

--次回に続く--