今回は、紙パック式の掃除機で使用する紙パックについての話です。ご存じのように、純正の紙パックは比較的高価です。例えば、東芝純正の紙パック「VPF-6」は、5枚入りで700円ぐらいで販売されていますし、よりハイグレードなVPF-7にいたっては、3枚入りで1,000円以上します。サイクロン式のクリーナーを選ぶ人の多くが「紙パックが不要だから」という点を選択理由のひとつとして上げていますが、こういった紙パックの価格も、その原因となっているのでしょう。ところが、取り付け部分が切り取り式になっており、各社の掃除機に取り付けられる互換品の紙パックは、10枚入りで300円台と、いった低価格で販売されています。これだけ価格が違うと、互換品を選んでしまいたくもなるのですが、純正品と互換品とでは、機能的に違いはないのでしょうか。なお、今回比較しているのは、たまたま、筆者が購入してきた純正品の紙パックと、互換品の紙パックで、すべての純正品/互換品の紙パックで同じような結果が出るとは限らないことを初めにお断りしておきます。

左が東芝純正の紙パック「VPF-6」で、右が互換品の紙パック

まず、純正品の紙パックと互換品の紙パックとを、見比べてみましょう。一番の違いは、掃除機のホースとの接合部分です。東芝の純正紙パックVPF-6では、接合部分がゴムでシールされてています。写真の青く見える部分がゴムになっており、密閉度を高めているわけです。一方、互換品の紙パックでは、この部分は紙製でした。継ぎ目の密閉度は、純正品に比べると、落ちるでしょう。紙パックを分解してみると(もったいないのですが)、純正品も、互換品も、どちらも2重構造を採用していました。外側の紙、内側の紙とも、筆者には厚さの違いや密度の違いなどは判別できません。シール部分も分解してみましょう。純正品では、外側のボール紙と紙パックの表面素材との間にゴム製のシールが挿入されており、それが接着されています。それに対して互換品では、紙パックの表面素材が、そのままシール部分になっていました。

純正品の紙パックでは、接合部にゴム製のシールが使われている

互換品では紙製

純正品、互換品どちらの紙パックも2重構造を採用

純正品の内側の紙をはがした状態。外側のボール紙と紙パックの表面素材の間にシールが接着されている

互換品の内側の紙をはがした状態。表面の素材が、そのまま接合部分にも使用されている

両方の紙パックを掃除機にセットした場合、どの程度の差があるのでしょうか。簡単な実験をしてみました。ペットボトルのキャップの中心に穴を開け、そこにひもを通し、掃除機で吸引します。ひもの反対側にはバネばかりを取り付けて引っ張り、どのくらいの力まで耐えられるかを見てみました。結果は、どちらも1.75kgあたりで限界を迎えました。もっと正確な測定が行えればよいのでしょうが、両者に明確な差は見られませんでした(どちらかの吸引力が高ければ、その紙パックは目が粗いことがわかるかと思ったのですが、こんな原始的な方法では、差はつきませんでした)。しかし、実験を終えて、使用した紙パックを見てみると、純正品のほうは何ともなっていないのに対して、互換品のほうは、つなぎ目の青の部分が破けています。両者には、耐久性という面で差があるようです。紙パックは、単に吸い取ったゴミをためるだけの部品ではなく、紙パック式掃除機のフィルターとして機能しています。接続部分が破れてしまうと、そこから空気が漏れるので、吸い込んだ空気の一部は、紙パックというフィルターを通さないで、その後段に送られることになります。そこから先がどうなっているのかは製品によって異なるのですが、メッシュ状のフィルターだけを通してそのまま排気するケースもありますし、紙パックで取りきれなかった小さなサイズのハウスダストを取り除くために、HEPAフィルターなどが装備されているといったケースもあります。後段にフィルターが装備されていないモデルでは、紙パックの性能が、そのまま掃除機の捕塵性能につながります。また、それが十分に機能していない場合、後段には、ゴミの含まれた空気がそのまま届きます。東芝のwebサイトには、互換品の紙パックを使用した場合、「モーターの発煙・発火の恐れがあります」と書かれていますが、ゴミがモーターなどに付着した場合、場合によってはそういったケースもあるのでしょう。紙パックの後段にフィルターがある場合でも、紙パックが紙パックとして機能しない状態で使用した場合、後段のフィルターの目詰まりを発生させるおそれがあります。

バネばかりにペットボトルのキャップを取り付けて掃除機で吸い込み、バネばかりを引っ張る実験。何kgぐらいまでの力で引っ張ったときに、掃除機の吸い込み口からキャップが外れるかを調べた

実験後の純正紙パック。とくに変わった様子はない

実験後の互換品紙パック。つなぎ目の部分が破けている

また、製品によっては、脱臭用のフィルターを通して排気するケースもありますが、紙パックに脱臭機能を盛り込んでいるケースもあります(VPF-6もそうです)。そういった紙パックを使用することを前提としている掃除機で互換品の紙パックを使用した場合、排気は脱臭されないということになります。

話は変わりますが、水道の蛇口に取り付ける浄水器のカートリッジは、浄水器本体の価格と比べて、かなり高価です。以前、浄水器メーカーの方が、浄水器の場合、器具とカートリッジでは、カートリッジが本体で、器具はあくまでもそのカートリッジを使うためのものと話していました。掃除機の場合はそこまで極端ではありませんが、紙パックは、掃除機として動作するためのキーになる重要な機能部品です。多少値段が張っても、その掃除機の設計にマッチした紙パックを使用したほうが良いようです。