480円と980円。これはなんの値段なのかというと、近所の量販店で販売されていた電池の値段です。480円の方は、PB(プライベートブランド)の単3形アルカリ電池12本パック。そして、980円の方は、パナソニックのNi-MH充電池「EVOLTA e」4本パック(単3形)の価格です。
EVOLTA eは、今年に入って各メーカーから発表されている、低容量で低価格という特徴を持つNi-MH充電池のひとつで、4月20日に発売となっています。他に三洋電機の「eneloop lite」(6月22日発売予定)、ソニーの「サイクルエナジー シルバー」(4月20日発売)などがあります。今回は、EVOLTA eを入手しました。EVOLTA eのフル充電時の容量は、通常の充電式EVOLTAが2,000mAhなのに対して、その半分の1,000mAh。しかし、繰り返し使用回数は、1,200回から1,500回に増やされています。また、低価格モデルではありますが、自己放電が少ない、フル充電状態で販売されるといった特徴は、従来からある充電式EVOLTAと変わりません。
電池などのようなものは、大体は、容量が大きい方がよさそうなものですが、何故、容量の小さいものをリリースするのか、発表時に伺ったところ、その理由は、低価格化のためということでした。低価格化することで、初期コストの高さから充電池をまだ使っていない人のためのエントリーモデルともなり、また、消費電力の少ない機器で使用する際に、コスト的にバランスが取れる、というものでした。
充電池の価格は、アルカリやマンガンなどの一次電池に比べると、どうしても高くなります。では、どのくらいまで高くても許容されるのか。もちろん、1,500回充電できるから、1,500倍の価格というわけには行きません。先ほどの480円と980円という価格で見てみると、EVOLTA eは、だいたいPBのアルカリ電池6本分の価格ということになります。デジタルカメラなどのように消費電力の大きい機器で使用した場合、すぐにモトは取れるでしょう。しかし、EVOLTA eは、そういった機器ではなく、もっと消費電力の少ない機器に使うことを想定した電池です。
電池を電源とし、使用する消費電力が比較的少なく、しかも利用頻度が高い機器というと、家庭では、やはりリモコンということになるでしょう。リモコンの電源として、EVOLTA eでアルカリ電池の代わりが完全に勤まるのかと考えた場合、引っかかるのが、充電という問題です。アルカリ電池は、Ni-MH電池に比べると低価格なうえ、いずれ容量が無くなることが初めから分かっているので、たいていの家では、買い置きの予備があるはずです。それに対して、Ni-MH充電池は、充電すれば何回も使用できるという特性から、特に予備は必要ないように考えがちです。ところが、EVOLTA eは充電池なので、容量がなくなったら、再充電する必要があります。効率よく使用するためには、機器に必要な電池+1セット分の電池は、最低でも用意しておく必要があります。
これは、測定したわけではなく、あくまでも感覚的なものですが、テレビやビデオ機器、エアコンなどといった、比較的使用頻度の高い機器のリモコンに使われている電池は、だいたい1年前後で使えなくなることが多いようです(もちろん、使用頻度や、リモコンの種類などによっても、変わってくるでしょう)。一般的な家電製品では、製造終了後、6年間は、主要な部品を保持していて、修理なども受け付けてくれるのですが、たぶん、この辺りが、一般的な買い換えサイクルということなのでしょう。6年間という、製品のライフサイクルの間、リモコンに同じ電池を使い続けると、EVOLTA eは、だいたいアルカリ電池と同等のコストということになります。4本で980円のは、というそういったことも考えての価格設定なのでしょうか。
この価格ならば、予備分のコストも、長期的に見れば回収できるし、家の中で使用している電池の総数が増えれば、じきに誤差の範囲になると言っても、それなりに説得力があります。アルカリ電池6本分というのは、なかなか、絶妙な価格設定ではないでしょうか。