気が付けばもう12月。年末も近いということで、今回は掃除機について取り上げていきたい……といっても効果的な使い方などではなく、掃除機の指標についての話だ。

知っていますか? 掃除機の性能を示す指標

掃除機の性能を示す指標はいくつかある。代表的なものが、「吸い込み仕事率」と「ダストピックアップ率」だといえるだろう。吸い込み仕事率は、その掃除機のモーターが発揮できるパワーを表している。一方のダストピックアップ率は、一定面積の床の上にまかれたゴミをどれだけ取り除けるのかを示した数値だ。

昨今の家庭用掃除機は非常に高性能だ。写真は日立アプライアンスのサイクロン式クリーナー。左が「CV-SY7000」で、右が「CV-SY500」

この2つの数値は、掃除機の性能は示している。しかし、この2つが優れている掃除機が、すなわち優れた掃除機だとはいい難いところがある。

まず、吸い込み仕事率だが、この数値が高ければより強いパワーで吸い込み、掃除が速く終わるように思える。しかし実際のところ、吸い込み仕事率に多少の差があっても、それほど掃除の効率に差が出るわけではない。筆者はキャニスタータイプの掃除機と縦型の掃除機を持っているが、キャニスタータイプのほうは吸い込み仕事率が最大540W。一方の縦型は、吸い込み仕事率が330Wだ。この2台どちらで掃除を行っても、とくに縦型のほうが遅くて時間がかかるということはない。

シャープの縦型クリーナー「EC-ST20」。吸い込み仕事率330Wと、縦型としては高い

紙パック式の掃除機では、紙パックにゴミが溜まっているとパワーが落ちるため、ハイパワーなほうが良いといえば良いのだが、パワーが落ちるまでゴミを溜め込まずに捨てれば良いだけの話だ。

一方、ダストピックアップ率についてはどうなのだろうか。これは、カーペットの上に規定のゴミをまいて、それをどれだけ取り除くことができるかを測定したものだ。つまり、国内で一般的なフローリングの床や畳の上での掃除の性能を示したものではない。

多くの掃除機では、床の種類によってモードを切り替えるか自動認識するようになっている。じゅうたんの上を掃除するモードでは、強力にブラシが回転するが、畳やフローリングを掃除するモードでは、ブラシは回転しないか、回転してもゆっくりだ。じゅうたんの掃除では、ゴミをかき出すブラシは重要な役割を果たすが、畳やフローリングの掃除ではそこまでの重要性はない。

フローリングや畳の環境では、吸い込み仕事率の高さやダストピックアップ率の高さを求める必要はあまりない。市販の掃除機は、フローリングや畳の環境を掃除するのに十分なパワーを持っている。もちろん、バッテリー駆動のハンディクリーナーなどではパワーが足りないという例もあるだろうが、AC駆動の掃除機ならば、パワー不足で掃除がはかどらないなどということはまずないだろう。

快適に掃除を行える掃除機かどうかを見極めるための指標がない

掃除機にとって、快適な掃除のために重要なポイントは、日本の住宅事情に合わせたノズルの高機能化と、気密性、静音性だと思う。それ以外にも、ゴミ捨てのしやすさや、取り回しやすさなど、掃除機自体の使い勝手も重要だ。

ところが、これらに関する指標は、静音性以外はほとんど存在していない。もしかしたら存在しているのかもしれないが、表に出てきていないため、ユーザーには知りようがないのが実情だ。

ダストピックアップ率の説明の部分で、ヘッドのブラシについて書いたが、もちろんこのブラシは、旧来のナイロン製ブラシのことを指している。最近の掃除機では、ブラシにフローリングのふき取り効果を持たせたものもある。こういたブラシを備えた掃除機ならば、畳やフローリングの掃除でも大きな効果を発揮する。

東芝の「VC-SG514」は、フローリングのふき掃除効果を持った「イオン・ファイバーヘッド」を搭載する

さらに、最近の掃除機では、パナソニックの掃除機が採用している「エアダストキャッチャー」のように、吸い込み口がノズルの上にもついていて、床上に漂うハウスダストを取り込む機能を装備したものもある。掃除の最中に舞い上がるほこりをキャッチしてくれる優れた機能だ。

床上に漂うハウスダストをキャッチする「エアダストキャッチャー」を装備するパナソニックの「MC-SR520G」

しかし残念ながら、畳やフローリングの床に限定して、どのくらいキレイにできるかを直接示す指標は存在していない。また床上30cmに舞い上がるハウスダストをどの程度キャッチできるかといった指標も存在していない。

そのほか、気密性に関しての指標も存在していないのが現状だ。掃除機の気密性が十分に高い場合、吸い込んだ空気はほぼフィルターを通ることになる。一方、気密性が低い場合には、吸い込んだ空気の一部がフィルターを通らずにそのまま排出されることになる。

捕集効率に関してはカタログなどに記載されている場合もあるが、これはフィルターの性能を示す指標で、掃除機全体の能力を示しているわけではない。つまり、機密性の問題から、フィルターを通らなかった空気のことは考慮されていない。

分かりやすい指標がないからこそ慎重に!

こういった、実際の環境でどのぐらい快適に掃除ができるのかを示す指標が存在しない以上、掃除機を選ぶ際には慎重にならざるを得ない。パワーもある程度は必要だが、カタログなどを見る際には、パワー以外の部分をより慎重にチェックする必要があるといえるだろう。また、使い勝手に関しては、店頭で実機をチェックするのが一番だ。