出先でスマートフォンのバッテリーがなくなって、コンビニや家電量販店でモバイルバッテリーを購入したことがある人は多いはずだ。

現在市販されているモバイルバッテリーの多くは、リチウムイオン充電池を使用している。モバイルバッテリーが登場しはじめた頃は、3,000mAhもあれば大容量だったのだが、最近では5,000mAh以上のモデルも少なくない。スマートフォンだけでなくタブレットでも利用できるように、2.1Aまでの電流を取り出せるモデルも増えてきている。

しかし、スマートフォンの充電を忘れる筆者のようなユーザーは、モバイルバッテリーの充電も忘れてしまう可能性が高い。というわけで今回取り上げるのは、乾電池、あるいはNi-MH(ニッケル水素)充電池を使用する製品だ。乾電池ならば、よほどの秘境にでも行かない限り入手できるだろう。

下の写真は、日立マクセルが「ecoful(エコフル)」ブランドで販売している「MEC-3C」だ。単3形のアルカリ乾電池、またはNi-MH充電池を2本使用して充電を行うモデルで、製品本体とUSBケーブル、携帯電話用充電アダプタがセットになっている。電池は別売だ。

日立マクセルが「ecoful」ブランドで販売しているモバイルバッテリー「MEC-3C」

MEC-3Cの定格出力は5V/500mA。スマートフォンなどの高速充電には対応していない。アルカリ乾電池を使用した場合には約25分、Ni-MH充電池を使用したときには約60分間、この定格出力をキープできる。アルカリ乾電池よりもNi-MH充電池のほうが放電時間が長いのは、Ni-MH充電池の放電特性によるものだろう。以前このコラムでも取り上げたが、一次電池は放電時に電圧が緩やかに降下するのに対して、Ni-MH充電池は、容量が残っている間はあまり電圧の降下がなく、容量がなくなると一気に電圧が降下する傾向がある。そのため、規定の電圧以下になるのはアルカリ乾電池のほうが早いだろう。

さて、MEC-3Cの電池ボックスに新品のアルカリ乾電池を入れて、電池容量がほぼゼロになったスマートフォンを接続してみる。すると、MEC-3Cとスマートフォンのインジケーターランプが一瞬だけ点灯して、消えてしまった。どうもうまく充電されていないようだ。

インジケーターが一瞬だけ点灯したあと沈黙

筆者の使用しているスマートフォンはHTCの「Aria」というモデルで、公称では500mAで通常の充電が可能、高速充電の場合には1Aが必要となっている。実際に測定してみると、通常充電の場合には380mAで、高速充電の場合には760mAとなっていた。いくら単3電池を2本使用しか使用していないモバイルバッテリーだからといって、380mAの電流を取り出すことができないというのは考えにくい。

USBポートからの電圧/電流を測る測定器を取り付けて再び充電を開始してみる。すると一瞬だけ5V前後の電圧が表示されて、その後表示がオフになった。根本的に正しく動作していないようだ。

一瞬だけ電圧が表示される

取扱説明書に書かれているトラブルシューティングの項目には、当てはまりそうなものはない。同社のWebサイトを見てみると、MEC-3Cの対応リストのリンクが貼られている。すると、そこには、"microUSBコネクタシェルがGNDへ未接続の機器には非対応"と書かれており、該当する製品がいくつか掲載されている。非対応機種には入っていないが、Ariaはこれに該当しているようだ。しかし、このスマートフォンは、今まで何種類ものモバイルバッテリーのレビューにも使用してきた。今まで使用した数々のモバイルバッテリーでは、一度もこのような問題は発生していない。

"microUSBコネクタシェルがGNDへ未接続の機器"というのはどのくらいあるのだろうか。筆者の手元にある、microUSBから充電を行う機器を試してみた。すると、デジタルカメラは充電できたが、Bluetoothスピーカーは、Ariaと同じように充電不可能だった。非常に狭い範囲だが、"microUSBコネクタシェルがGNDへ未接続の機器"というのはそれほど珍しいものではないようだ。

正常に充電できる機器もある

筆者自身、自分の使用しているスマートフォンが"microUSBコネクタシェルがGNDへ未接続の機器"であることを今回初めて知ったのだが、仕様上、動作しない機器があることが分かっているなら、パッケージにその旨を記載しておくべきではないだろうか。製品の性質上、出先で急にバッテリーが必要になって購入するという場合も多いはずだ。Webサイトに記載していても、手持ちのモバイル端末のバッテリーがそのページにまでたどり着けるだけ残っているとは限らない。