前回は、エアコンと灯油を使った暖房機具ではどのくらい効率に違いがあるのかという話をした。今回は、2013年冬~2014年春の各メーカーのミドルクラスのエアコンで、どの程度効率に違いがあるのかという話を進めていきたい。

ミドルクラスのエアコンとは

エアコンに限らず家電製品の場合、新製品発表会を行ったり、テレビでCMが流されているのは各メーカーの最上位モデル、またはそれに準じるハイグレードモデルが中心になる。

しかし、実際に販売台数が多いのはもっと低価格なモデルだ。われわれ日本人は「松竹梅」というグレードがあると、とりあえず"竹"を選んでしまうことが多いといわれている。というわけで、ここでは各メーカーのミドルクラスのモデルについて比較していきたい。

しかしミドルクラスというものに、明確な定義は存在しない。国内でエアコンがメジャーなメーカーというと、日立、三菱電機、パナソニック、シャープ、三菱重工、ダイキン、東芝、富士通ゼネラルといったところだろう。いくつか例を挙げてみたい。

「白くまくん」ブランドを展開する日立の場合には、最上位機種が「Zシリーズ」。ただしこれは、いわゆる"プレミアム"モデルで、他のメーカーの最上位機種に相当するのは、その次のグレードの「Sシリーズ」ということになる。3番目の「Xシリーズ」までには「くらしカメラecoこれっきり運転」機能が装備されており、人の動きや部屋の間取り、日差しなどを検知して省エネ運転を行うことが可能だ。4番目の「Mシリーズ」が実質的なミドルクラスということにになる。「Mシリーズ」には日差しセンサーは装備されているが、人の動きなどを検知することはできない。なお、「Mシリーズ」には、フィルターの自動クリーニング機構が装備されており、さらに、内部には清潔さを保つステンレスが使用されている。

「白くまくん」の最上位モデル「Zシリーズ」

「霧ヶ峰」ブランドを展開する三菱電機では、今冬のモデルでサーモカメラ「ムーブアイ極」を搭載してきた。同機能は、サーモカメラによって体の表面温度を測定し、冷えているところをピンポイントに暖めるというもの。ただし、この機能が搭載されているのは、最上位機種の「Zシリーズ」のみだ。2013年~2014年の三菱電機のエアコンでは、ほとんどのラインナップで、ハイブリッド運転機能を搭載しているのが特徴だ。ハイブリッド運転機能は、夏には冷房と送風を、冬には暖房とサーキュレーターを、それぞれ体感温度に合わせて切り替え運転を行うものだ。霧ヶ峰のミドルクラスは、「HWシリーズ」と「HSシリーズ」ということになるだろう。いずれも「エコムーブアイ」機能を装備しており、人のいる場所や壁や床の温度を検知して、ムダの少ない空調を行うことが可能だ。「HWシリーズ」は「フィルターおそうじメカ」搭載モデルで、「HSシリーズ」は非搭載モデルだ。

サーモカメラ「ムーブアイ極」を搭載する「霧ヶ峰 Zシリーズ」

パナソニックの場合は「Xシリーズ」が最上位機種で、「SXシリーズ」がそれに準じる多機能モデルとなっている。センサーによって人の活動量を検知して、活動量が多い場合には控えめで運転する機能は、最上位機種の機種の「Xシリーズ」にしか装備されていない。ミドルクラスのモデルは、その次のグレードの「EXシリーズ」ということになるだろう。フィルターの自動クリーニング機構「お掃除ロボット」を装備する下限モデルだ。

各メーカーとも、スタンダードクラスのモデルには、フィルターの自動クリーニング機構は搭載していない。価格帯は少々異なってくるが、フィルターの自動クリーニング機構を搭載した下限のモデルで比較してみたい。

それぞれのモデルのCOPとAPFは

各メーカーのフィルターの自動クリーニング機構を搭載した下限のモデルのCOPとAPFをチッックしてみよう。なお、比較はすべて冷房能力2.8kW(10畳用)のモデルで行っている。

メーカー名 型番 冷房時COP 暖房時COP 暖房能力 APF
日立 RAS-M28C 3.78 4.14 3.6kW 5.8
三菱電機 MSZ-HW283 3.46 4.16 3.6kW 5.9
パナソニック CS-EX283C 3.64 4.14 3.6kW 5.8
シャープ AY-C28EX 3.78 4.44 3.6kW 5.8
三菱重工 SRK28RP 3.66 3.14 3.6kW 5.8
ダイキン工業 AN28PCS 3.97 4.39 3.6kW 5.8
東芝 RAS-281ER 3.68 4.00 3.6kW 5.7
富士通ゼネラル AS-R28C 4.18 4.62 3.6kW 5,8

さすがにこのクラスでは、APFが6を超えるような省エネモデルは存在しない。ちなみに、各メーカーの最上位モデルのAPFは、日立の「RAS-Z28D」が6.7、三菱電機の「MSZ-ZW284」が6.9、パナソニックの「CS-X283C」が6.9、シャープの「AY-C28SX」が6.7、三菱重工の「SRK28SR」が6.7、ダイキン工業の「AN28PRS」が6.8、東芝の「RAS-281GDR」が6.7、富士通ゼネラルの「AS-X28C」が6.8だ。

APF6.9の三菱電機「MSZ-ZW284」の場合、期間消費電力量は768kWh。一方、同じ三菱電機でも「MSZ-HW283」の場合、期間消費電力量は951kWhだ。東京電力の第3段階の従量料金は、1kWhあたり29.1円だ。2モデルの電気代は、1年で5,000円以上の差になる。しかし、純粋に経済面だけで考えた場合、「MSZ-ZW284」は「MSZ-HW283」の倍以上の価格で販売されており、その価格差分を電気代だけで元を取ることは難しい。もちろん、「MSZ-ZW284」は2014年モデルで、「MSZ-HW283」とはモデルイヤーが異なるうえ、「MSZ-ZW284」で得られる快適さに関しては考慮していないのだが、それでも、"竹"クラスのエアコンのC/Pのよさは否定できないだろう。

さて、C/Pを重視した場合、エアコンに勝る選択肢は現状では存在しない。しかし、暖房器具には、もっと味わいのある分野も存在する。次回からは、もう少し趣味性の高い暖房器具について話を進めていきたい。

次回に続く