10月といえばそろそろ秋も深まるイメージだが、首都圏ではまだそれほど寒さを感じることは少ない。まだ暑い日のほうが多いほどなのだが、それでも確実に冬は近づいてきている。少々早い気はするが、2013年冬の暖房について、これから数回にわたって話を進めていきたい。
電気と灯油……暖房するのならどっちが得か?
資源エネルギー庁の「給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)」によると、2013年9月30日段階での灯油の店頭価格は、全国平均で18Lあたり1,813円となっている。これはかなり高い。2012年10月1日の調査では1,659円となっており、同時期で比較すると、今冬は昨冬よりも高価格だ。昨冬に最高価格を記録したのは2013年2月18日と2月25日の調査結果で、いずれも18Lあたり1,826円だ。これから本格的な冬に向かうと、今冬は昨冬以上の価格となる恐れもある。これまで以上に、暖房のことをまじめに考える必要があるだろう。
本コラムは家電に関するものなので、電気を使った暖房の話が中心に進めよう。
電気による暖房には大きく分けて2種類の方法が存在する。1つは、ヒーターによって暖めているタイプだ。代表的なものは電気ストーブで、それ以外にもハロゲンヒーターやオイルヒーター、コタツなどもみな暖かさの源はヒーターだ。ヒーターは、電気を熱に変える仕組みで、使用した電気の分だけ暖かくなる。暖房器具の種類によって暖かくなるのが早いものと遅いものとがあるが、それは器具の構造によるものなので、また別の話だ。いずれにせよヒーターを使った暖房器具では、「投入した電力=発生するエネルギー」であることに変わりはない。コタツの場合は、入っている人の体温も熱発生源なので少々話は違ってくるが、基本的にはそういうことになる。
どの程度の電力でどの程度暖かくなるのか?
消費電力1,000Wの暖房器具を1時間動かすと、1,000Wh分の"仕事"をする。つまり1,000Wh=1kWh分だけ暖かくなることになる。1kWhは3,600kJ(ジュール)。また1Jは0.239calだ。つまり、1kWhは860,400calということになる。1calは、1gの水の温度を1°C上げるエネルギーなので、1,000Wのヒーターを1時間稼働させれば、水温20°Cの場合、10.755Lのの水を沸騰させることが可能となるわけだ。もちろんこれは外部に熱が逃げない理想的な状態での話なので、実際にはこれよりも少ない量の水しか沸騰させることはできない。
感覚的に分かりにくいかもしれないので、ここで電気ケトルを例にしてみよう。タイガー魔法瓶の電気ケトル「PCH-G060」は、約45秒で140mLの湯を沸騰させることができる。消費電力は1,300Wなので、1時間動作させると(実際にはそんな連続動作はできないが)、1,118,250calの熱を発生する。45秒だと13,981.5calだ。140mlの水の温度を、常温から約99.9°C上げられそうだが、もちろん水温はそこまで上がらない。また、実際には外部に熱が逃げるので、沸騰までの時間が45秒ということになっているのだろう。
さて、ここで話を元に戻そう。灯油の価格と、電気の価格を比べた場合、どちらが経済的なのだろうか。灯油の燃焼時のカロリーは、1Lあたり8,767kcalだ。先ほどの計算では、1,000Wの電気ヒーターを1時間動作させたときの熱量は、860,400calとなっていた。同じ熱量を、灯油を燃焼させて得ようとすると、計算上では98.1mlの灯油が必要となる。灯油の価格が18Lあたり1,813円として計算すると、約9.9円で1,000Wのヒーターを1時間動かしたときの電力1kWhと同じ熱量を発生させられることが分かる。
電気料金は、基本料金+従量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金+燃料費調整単価と少々複雑だ。そこで、東京電力の1kWhあたりの従量料金をみると、第1段階で18.89円、第2段階で25.19円、第3段階で29.1円となっている。価格が高騰しているとはいっても、単純に発生させられる熱量だけを考えた場合、灯油に比べると電気はかなり割高だといえる。
さて、暖房器具を大きく分類したもう1つの方法がエアコンだ。エアコン自体は製品内に熱源を持っているわけではない。冷房時は部屋の中の熱を屋外に放出し、逆に暖房時は屋外の熱を室内に取り込むようになっている。これがヒートポンプと呼ばれる仕組みだ。真冬の冷えた外気の中から熱を取り出すというのは感覚的には納得できないという人もいるかもしれないが、室外機から出る風が、夏はより熱く、冬はより冷たくなっているということで、どうか納得してほしい。
エアコンの場合、熱を単に移動しているだけなので、直接作る場合に比べて消費電力は少なくなる。次回はエアコンでの暖房について話を進めていきたい。
次回に続く |