そろそろ本格的にエアコンの活躍する時期が近づいてきている。エアコンを効率的に使うためのアイテムとしてこのところ注目を集めているのがサーキュレーターだ。

東芝ホームテクノのサーキュレーター「F-CN3X」

プラズマクラスター扇風機"3Dファン"「PJ-C2DS」。夏は扇風機として、冬はサーキュレーターとして活躍する

サーキュレーターは、室内の空気を循環させるための製品だ。最近では、床に置いて使うタイプの製品が主流だが、以前は、エアコンの室内機を小型化したような形状の壁掛けタイプの製品も普及していた。

サーキュレーターは扇風機の売り場に置かれていることが多い。また、リビング扇の一部の機種は上下方向への首振り機能なども備えており、サーキュレーターとして使用するときに役に立つ。また、ボックス扇の一部にも、本体を上に向けてサーキュレーター的に使えるものがある。しかし、これらは夏場以外にも使える扇風機という意味であって、夏にサーキュレーターとして動かそうという意味ではない。サーキュレーターは冬にこそ効果を発揮するものだ。

暖かい空気は体積が増えるため上に向かい、冷たい空気は体積が減るために下に向かう。特に、温度センサーが室内機側のみにあるエアコンで暖房を行っている場合、部屋の上の方は暖かいが、床の近く、つまり人のいる場所は寒いなどということが起こりがちだ。そのよう部屋でサーキュレーターを使うと、床の近くにも暖かい空気が循環してきて、効率的な運転が可能になる。部屋の中で、ある意味無駄に暖めている部分の空気を本来暖めたい場所に循環させることで暖房の効率をアップさせることができるわけだ。

ところが、ここにひとつ問題がある。省エネタイプのエアコンでは、室内をいくつかのブロックに分けて、そこに人がいるかどうかをセンサーで検知し、人の周りだけを空調することで消費電力を抑える機能が搭載されている製品が多い。

2013年度モデルのルームエアコン「ハイブリッド霧ヶ峰」。センサーによるきめ細かな制御を行っているルームエアコンとサーキュレーターの組み合わせにはあまり意味がない

省エネのためにエアコン側でわざと部屋の一部だけ暖めているのに、サーキュレーターで部屋の空気を循環させてしまうと、何のための制御なのかわからなくなってしまう。こういったタイプのエアコンとサーキュレーターの組み合わせは相性が悪い。

では夏場の冷房時にはどうなのだろうか。部屋の上の方にある暖かい空気を、部屋の下の方にある冷えた空気と混ぜることによって室内の温度差は減少するが、結果的に全体として室温は上昇する。これにはあまり意味はなさそうだ。エアコンでは、冷房時に床の方向に気流を向けるようにはなっていないため、足下だけが冷えすぎるという場合は、そもそも風向設定が間違っていると考えられる。

省エネエアコンでは、暖房時と同様に冷房時にも、部屋をブロック単位に分けて、その部分だけを冷やすといった制御が行われているモデルが多い。これらとサーキュレーターの組み合わせは、せっかくの省エネ効果を減少させることになる。

夏場に、サーキュレーターをサーキュレーターとして使うことは、あまり意味がない。扇風機として使うのならば意味はあるだろうが、それならば、動作音が小さく、風向や風量の調整も手軽な扇風機を使用したほうがよいだろう。