リビングルームの広さとして現在、一般的な水準はどれくらいなのだろうか。筆者は直接この答えを知っているわけではないのだが、ルームエアコンの売れ筋から類推することはできそうだ。以前は、ルームエアコンの売れ筋とされていたのは冷房能力が2.8kWのクラスだった。これは10畳前後の部屋で使用するのに適している。ところが、最近の売れ筋はもう少しサイズアップしており、冷房能力4.0kWの製品が中心となりつつある。これは14畳程度の部屋で使用するのに適したサイズだ。
主流が14畳にシフトしてきているということは当然、それよりも広いリビングも珍しくはないのだろう。エアコンでも、冷房能力5.6kW(18畳用)クラスまでは普通にラインナップされている。
以前にもこのコラムで取り上げたことがあるのだが、照明器具工業会では、LED照明器具の適用畳数の基準を定めている。このなかで、14畳までの広さで使える照明器具として、5,100lm(ルーメン)以上6,100lm未満という定格光束の範囲を定めている。照明器具工業会の基準では、LED照明の適用畳数の上限は14畳までで、それ以上は定められていない。14畳までしか規定がないのは、これまで、それよりも明るいLEDシーリングライトが作られなかったからというわけではない。たとえば、ツインバード工業では、定格光束7,000lmのLEDシーリングライトを既に発売している。
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適用畳数が14畳までしか規定されていないのは、1灯でそれ以上に広い範囲を照らした場合、「均斉度」に関する問題が発生するためだ。つまり、光源に近い位置では非常に明るいのに対して、離れた場所では暗くなるという明るさのムラの問題が発生するためだ。
照明器具工業会では、それよりも広い部屋では主照明+補助照明でのライティングを推奨している。主照明+補助照明という組み合わせでは、明るさのムラを減らすという方向性だけでなく、あえて明暗差を強くするという演出も可能だ。
さて、日立アプライアンスが5月30日、「LEC-AHS1810BC」というLEDシーリングライトを発表している。LEC-AHS1810BCは、業界最高レベルの定格光束7,290lmを実現した製品だ。日立アプライアンスでは、このLEC-AHS1810BCを18畳向けのモデルだとしている。では、この18畳という適用畳数はどのように決められたのか、同社に伺ってみた。同社によると、LEC-AHS1810BCの適用畳数は、単純に定格光束から導き出されたものではないという。
日立アプライアンスのLEDシーリングライトは、複数の高輝度LEDチップでまとめて1つのLEDユニットが構成されており、これを敷き詰めた、いわゆる「直下型」の配置が採用されている。1つ1つのユニットは光を拡散させるカバーで覆われており、さらにシーリングライトのカバーも光を拡散させる働きを持っている。この2重の拡散によって、ムラのない光を送り出すのが、同社のLEDシーリングライトの特徴のひとつだ。
上の写真は、2012年5月に同社が発表したLEDシーリングライトのカバーを外したところだ。電球のように見えるのがLEDユニットだ。注目してほしいのが、LEDユニットが直線状などの規則的な形ではなく、不規則な形で配置されているという点だ。これは、光のムラを抑えるための工夫だ。
同社では、LEC-AHS1810BCを開発するに当たって、実験用に18畳の部屋を用意。光源から離れた部屋の隅でも十分な明るさが得られるように、LEDユニットの配置などを調整したという。
その結果、光源の近くでもまぶしくなく、また、部屋の隅でも、14畳の部屋に14畳用のLEDシーリングライトを設置した場合と遜色ない明るさを実現。これにより、LEC-AHS1810BCの適用畳数を独自基準で18畳と表記することを決めたとのことだ。正真正銘の18畳で使えるLEDシーリングライトなのだ。
明るさの次に「快適な照明」に求められるものは
LEC-AHS1810BCでは、1つのLEDユニットの中に色の異なる2つのLEDチップが入れられており、この2つの明るさをコントロールすることで、調光と調色を行っている。
リビングルームは、さまざまな用途に使われる部屋だ。くつろいでいるときに求められる明るさと、細かな作業をする際に必要な明るさは異なる。この調整を手軽に行えるのが「あかりセレクト機能」だ。同機能は、さまざまな用途に使われるリビングを、その目的に適した光色・光量で照らすというもの。プリセットされた「電球のあかり(暖かい色)」「食卓のあかり(だんらん)」「図書館のあかり(読書/趣味)」「蛍光灯のあかり(さわやかな)」という4種類の光色と明るさを、リモコンのボタンでダイレクトに切り替えられる。このような使い方をする場合、元の明るさが大きいほど、適用範囲は広がるだろう。
調光と調色とを組み合わせることで快適なライティングを行う取り組みは、多くのメーカーで行われている。
光の色ごとに、快適な明るさは異なる。寒色系ではより明るくしたほうが快適と感じられるの対して、暖色系では、あまり明るくすると暑苦しく感じられる。パナソニックがリリースしている「シンクロ調色LED照明」では、調色を行うと、その光色で人が心地良いと感じる領域になるように、明るさも自動調節される。また、単独の照明器具だけではなく、複数の照明が導入されている部屋全体、あるいはブロック単位で、このコントロールを行うことが可能だ。
また、施設照明的な要素が強いが、ヤマギワが提唱している「光色リンク調光」もこれに近い機能だ。人間が心地良く感じるようにあらかじめプログラミングされた明るさと光色の範囲で、連続的に調光・調色を行うことが可能だ。
光色と明るさのコントロールによる心理的な快適さの追求は、これからの照明に求められる要素の1つとなるのではないだろうか。