小学校受験をすると決めるなら、幼稚園入園前がベスト。既に保育園に通っているケースも方法があるので諦めないで!

今回は、私立小学校受験の準備について具体的に解説していきます。まず、小学校受験をすると決めるタイミングですが、お子さんが幼稚園に入る前がベスト。ご家族でよく話し合って決めていただきたいです。

この時期がベストという理由は、小学校受験に向いている幼稚園と向いていない幼稚園があるからです。都内でもいわゆる名門幼稚園というものがありますが、これは何が名門といわれるゆえんかというと、伝統や格式はもちろん、ほぼ全員が小学校受験をするため、教育内容も受験にプラスになる内容が多く、何よりも礼儀作法や身だしなみなどがとても厳しいという点が挙げられます。前回解説した公立と私立の"環境"の違いが、幼稚園にも当てはまると言えるでしょう。

また、皆が当然のように小学校受験をする幼稚園にいると、降園後は塾やお稽古ごとがあるのが当たり前で、そうそう毎日皆で遊ぶということはできません。しかし、あまり受験する子がいない幼稚園に通っていると、降園後の遊びに加われず疎外感を覚え、「どうして自分だけが……」となってしまいます。これはお子さんにとってもかわいそうなこと。早いうちから小学校受験をすると決められているのであれば、皆が受験するような環境に入れてあげたほうが、親御さんにとっても本人にとっても幸せなのです。

さらに、受験のためにお休みすることや、受験する小学校によって求められることがある内申書を書く手間を嫌がる幼稚園も少なくありません。ですので、入園前に、受験に協力的かどうかは確認しておくべきポイントとなるでしょう。

共働き家庭の場合、お子さんが保育園に通っていることが多いでしょう。保育園は自治体によって運営も管理もさまざまで、私立やインターナショナルな園もあるので一概にこうとは言えず、まず保育園に小学校受験をしたい旨を相談しておくことが大切です。お昼寝の時間にいったん抜けて塾に行き、終わり次第戻ってくるということを許してくれる保育園もありますし、近隣の塾と連携して、塾の先生による送り迎えを許可してくれるところもあります。塾が保育園近くでない場合は、転園や送迎のみをシッターさんに依頼することも検討しましょう。おじいちゃんやおばあちゃんに送迎をお願いするのも手ですね。

幼稚園と併用することが可能な私立保育園もありますし、大手保育園では学習塾を併設しているところもあります。共働きで子どもが保育園に行っていたとしても、「小学校受験をしたい」と思ったなら、考えられるすべての可能性を検討してみてください。生活を変えることは大変ですが、変える苦労に立ち向かう覚悟があれば、必ず道は開けます。

具体的な準備は?

では、小学校受験のためにどのような準備をするべきか。まず必要なのは、「机に向かって座り、問題に取り組む」という学習習慣を身に付けることです。受験ではほとんどの学校でペーパー問題(筆記試験)があります。行動観察や体操が重視されている学校もありますが、ペーパーがある学校に関しては、ここでつまずくとスタートラインにも立てません。

学習習慣というものは、日常生活でなんとなく身につくものではなく、改まって取り組む必要があります。また、ペーパー問題をしっかり解けるということは、先生の話をよく聞き、課題を認識し、書いて答えることがきちんとできるという証拠です。私立小学校がお子さんの能力を考査するには最適の方法なのです。他に工作や絵画、体操も考査項目としてあり、上手にこしたことはないですが、こちらは課題をクリアしていることと、年齢相応の発達、訓練の形跡が見られれば飛び抜けての出来は必要ありません。小学校は専門学校ではなく、センスや才能を試されているわけではないからです。

ご家庭で勉強の時間がしっかり取れて、親御さんがスムーズに教えられる環境であれば、塾に通う必要はありません。しかし、親子間での指導はケンカになりがち。どう教えたら理解してくれるかわからなかったり、何度教えてもできないことに怒ってしまったり……。そこで塾に通うわけですが、小学校受験向けの塾は大別すると2タイプ。1クラスあたりの人数も設営クラス数も多い大手塾と、少人数制でお子さんとじっくり向き合う個人塾です。

大手塾は、クラスの内容が志望校やペーパー・絵画・工作・体操といった科目別に細分化されていることが多く、お子さん個人の習熟度や個性に合わせて複数のクラスを受講する必要があります。1クラスの人数は10名以上であることが多く、団体の中でしっかり主張することや、大勢に向けて発表するという訓練が可能です。しかし、できていなくても授業は進むため、ご家庭でのフォローが必要不可欠。さらに塾によっては、親御さんの参観を義務としているところもあります。

同じ内容のクラスを週に何度か開講しているケースが多いので、急病などで欠席した場合の振り替えができます。週末にクラスを設けている塾も多いので、共働き家庭には利用しやすいでしょう。

費用はというとおおよそですが、入会金が5万~10万円、1クラス60分~90分が週1回で月に約4万円。受験対策を週90分1クラスだけで済ませたという話は聞いたことがありませんので、どのようにクラスが分かれていて、何クラス程度受講する必要があるかをよく確認しましょう。

個人塾については、志望校や科目別に細分化されているということはほぼありません。志望校別対策は直前のみで、それまではどんな学校を受けても通用するよう準備を進めます。

都内有名校に関しては受験日程が重複することが多く、全ての志望校を受けることは難しいのが現実です。ですから、どんな状況にも対応できるようこのような体制をとっています。ただし、体操に関しては開講していない個人塾が多いので、別途通う必要があります。塾によっては紹介可能な体操教室があったり、指定されていたりするので、こちらも見学の際によく確認しましょう。

個人塾は生徒数が少ないため、欠席の場合は個別に振替日を相談することとなります。しかし、少人数ならではで個別に相談する時間を取りやすく、教え方や志望校の決め方、試験本番での服装など、受験日が迫るにつれ続々と沸いてくる疑問を相談しやすいのが個人塾ならではの特徴かと思います。

費用に関しては、入会金は大手と同じく5万~10万円程度、1クラス120分~240分が週1回で月に6万円~10万円。年長になると週2回で月に約20万円ということもあります。教室によってカリキュラムはさまざまなので、こちらもよく確認し、納得した塾を選びましょう。

大手塾も個人塾もそれぞれ特徴があり、先生も個性的です。通塾可能な場所にあるか、生活スタイルに合っているかという点を吟味しましょう。個人塾に関しては完全紹介制で、公募していなところも多いので、そもそも入塾可能かどうかも確認ポイントです。そして何よりも、合否に関わらずご家族が納得できる受験をできるよう力になってくれそうか、よくよく見極めて選択しましょう。

次回は私立小学校の種類や志望校の決め方について解説していきます。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

小学校受験向け幼児教室「クラリティー・キッズ」主宰
五島 真知子
自身が小学校受験を経験し、大学までの私立一貫校を卒業。
大学時代に縁あって小学校受験塾(クラリティー・キッズ前身)で4年間アルバイトとして従事。
大学卒業後は伊藤忠商事に総合職として約11年間勤務するも、結婚・出産・事故による負傷を経て退職。学生時代にアルバイトをした小学校受験塾の前オーナー引退に際して事業を継承し、現職。
何事にも果敢に挑戦する意欲を持ち、目標を達成する為の努力を楽しむ心意気を持った輝く子どもを育成するため、教材作成から指導まで広範囲の指導を行う。
※2015年度合格実績(順不同)
慶応義塾幼稚舎・慶応義塾横浜初等部・立教小学校・早稲田実業学校初等部・東洋英和女学院小学部・聖心女子学院初等科・東京女学館小学校・東京都市大学付属小学校・洗足学園小学校・カリタス小学校・精華小学校・目黒星美学園小学校・桐蔭学園小学部