人生における青春時代。その成長過程のまっただ中を、女子校・男子校で過ごした方も多いのではないだろうか。今回そんな女子校・男子校についてお話しいただいたのは、恋愛に悩む人をサポートする「失恋ホスト」などの活動を行う桃山商事の代表 清田隆之氏と、早稲田大学講師としても活躍するライターのトミヤマユキコ氏。青春時代の6年間を男子校・女子校で過ごしたお二人に、当時の学校生活を振り返っていただき、それぞれの学校の特徴や卒業後のキャリアに活かしていることなどを伺った。
強みは"同性のプロトタイプを知っていること"
――社会に出てみて、女子校・男子校に通った経験で役立っていることはありますか
トミヤマさん:中高の6年間で"女スイッチ"が入っていない状態の女子をたくさん見たことはすごく役立ってますね。第一印象で「あいつブリッコだから嫌い!」とか思うことがないんですよ。本当はどういう人なのか"透視"できてしまうので(笑)。生きていく上で"女を演じる"ことがあるのは仕方がないと思っているし、だからこそ、第一印象で決めつけることはありませんね。
ブリッコやモテる子みたいな、自分とは正反対のタイプでも、"透視"して気が合いそうだと思えば、自分から声をかけます。逆に、サバサバして付き合いやすいと言われている人でも「あのサバサバは偽物だぞ」と思って遠巻きにすることもある。いま、女子大で講師の仕事をするのがすごく楽しいんですが、それも"透視"能力のお陰だと思います(笑)。
清田さん:僕も同じで、「いろんな男のサンプル」を見られたのは大きな経験ですね。男の人って、簡単に言うと「(a)その人本来の性質+(b)ジェンダーとしての男成分」で出来ていると思うんですよ。男成分というのは、カッコつけとかプライドとか競争意識とか、そういう後天的に学んでしまった"男らしさ"のことなんですが、(a)と(b)の割合は人によって個人差があることに気付きました。この割合を意識しながらコミュニケーションする術を身につければ、"男ころがし"が上手くなると思う。
――それらは仕事の場面でどう活かしているのでしょうか
清田さん:例えば「男のダメなところ」を伝える場合、相手が男成分多めの男性なら、「あなたは違うと思うけど」と前置きしてから「結構多いんですよ、こういう面倒な男」と話すと耳を傾けてくれる傾向にあります。「あなたを攻撃してるわけじゃないですよ」ということを担保することで、プライドの発動を抑えることができるんだと思います。
一方、男成分が低い人に対しては、「俺たち男は」という主語を用いると伝わりやすくなるかも。「ともに反省し、成長していこう」という連帯感を醸成することが大事なのだと思います。
トミヤマさん:相手によって語り方を変える感じ、すごくよく分かります。私の場合で言うと、例えば、"女らしさ"に自信を持っている人にマウンティングされそうになったら「自分は“男役割”女子なのであなたと争うつもりはないですよ」ということを、それとなく伝えて、相手を鎮めることがあるんですよ。「同じ女だから」って乱暴にひとくくりにすると衝突が起きそうな場面では、こちらが立ち位置をコントロールするわけです。
あとは、仕事の場面で"男役割"女子として振る舞うと、恋愛体質だと思われないので楽です。男性に勘違いされた上に、女性から嫉妬されるという地獄を回避できるのはとても助かる。すごく美人だったりモテそうな人でも"男役割"女子として働くことでトラブルを回避している人はいるので、モテ・非モテに関係なく使えるテクだと思います。
共学よりも本来のパーソナリティがみえやすい?
――最後に、お互いの話を聞いてみて何か気になったことがあれば
トミヤマさん:男性からみて、女子校出身の女性と共学出身の女性は違って見えるのか聞いてみたいです。仕事の場面でも見抜くことができたりする?
清田さん:何となくだけど、違いは感じます。さっきの話で言うと、女性にも「(a)その人本来の性質+(b)ジェンダーとしての女成分」の個人差があると思うけど、女子校出身の人はより(a)が強めに出ている印象がある。多分、男の目を気にせずその人本来の個性をのびのび育む環境があったからなのかなと想像しています。
トミヤマさん:そうかもしれない。女子校出身の人って、あんまり自分らしさを女らしさで覆わないですよね。一方、共学出身の人はかなり仲良くなってからでないと自分らしさ、つまり(a)の部分が見えてきません。その場の雰囲気に合わせるのがとにかく上手い……!あの才能はちょっと羨ましくて、自分もやってみたいと思うんだけど、なかなか上手くいかない(笑)。
清田さん:もちろん、共学でも(a)が強めな人や、逆に女子校にも(b)が全面に出ている人はいるとは思うけど……あくまで傾向として。
トミヤマさん:今回は男子校・女子校の違いについて総論的な話をしましたが、細かく見ていけば当然いろいろな違いがある。でも思春期の一番多感な時期を同性とがっつり過ごした経験は、アラフォーになった今でも、大なり小なり影響しているなと感じますね。