掃除に洗濯にと幅広く使える「重曹」。この連載では、重曹を使って住まいを快適にするテクニックを紹介する。重曹水は加熱して使うと、より汚れ落ちがパワーアップするという。あきらめていた五徳の汚れ落としにも有効なのだろうか?
重曹水を加熱して使うとどうなる?
ガスレンジや換気扇の部品のギトギト油汚れ、魚焼きグリルや電子レンジのベタベタ汚れ、排水口のヌルヌル……。それらのうんざりするような汚れに対して、重曹は毎回、目を見張るような効果を見せてくれた(→今までの記事はこちら)。
しかし、中には歯が立たなかった汚れがあったのも事実だ。「こびりついた五徳の汚れ」もそのひとつ。五徳には、調理中の油やでんぷんなどの汚れが付きやすい。また、付着・加熱をくり返しているうちに、汚れはより強固にもなる。特に角の部分に付いた汚れは、重曹ペーストや重曹クリームクレンザーを使用しても、完全に取りきることはできなかった。
そこで今回は、「重曹水で五徳を煮る」という方法にチャレンジしてみた。重曹を水に溶かして加熱すると、より強いアルカリ性を持った「炭酸ソーダ(炭酸塩)」に変化する。重曹より強いアルカリ性を持ち洗浄効果も高い「セスキ炭酸ソーダ」も、加熱すれば炭酸ソーダになるそうだ。重曹やセスキ炭酸ソーダよりも洗浄力が高いというのだから、これは試してみる価値がある。
まず、五徳が完全に入るサイズの鍋に水と重曹を入れて加熱する。重曹の量は、水100ccに小さじ1杯くらいだ。
フツフツと重曹水が煮立ってきたら、五徳を中に投入。沸騰を保つ程度に火加減を調整し、10分間煮たら火を止める。40℃前後の手を入れられる温度まで冷めたところで五徳を取り出し、金属タワシでこすってみた。
すると、隅の部分に張り付いていた炭化した黒い汚れが、スルッと取れていくではないか! これまで何度強くこすっても取れなかった汚れが、2~3度金属タワシを往復させた程度で簡単に取れたのには驚きだ。汚れの下からは、新品のような素地が顔を出した。
年季が入ったコゲだらけのフライパンにも
この洗浄力はすごい! もっとひどい汚れのモノはないかと見回してみると、年季の入ったフライパンが目に留まった。主に揚げ物に使用しているので、鍋の周囲は黒く炭化した汚れでガチガチである。これを最後に磨いたのはいつのことだっただろうか……。
というわけで、このフライパンも同じように重曹水で煮てみた。コゲの様子から、煮る時間は少し長めの15分に設定。まず10分煮たところで取り出してみると、鍋の黒い汚れがはがれ、浮き上がっている部分があるのが確認できた。これは期待できそうだ。
15分煮てから、冷まして取り出してみる。浮き上がっている黒い汚れをピンセットで引っ張ると、ペリペリと音を立てて汚れがはがれていった。まるで日焼け後の肌の皮をむいているようで、気持ちがいい!
鍋底の特に汚れがひどい部分は、スクレーパーなどでこそげ取る。まだ水を含み、汚れがやわらかいうちに作業を行うのがポイントだ。鍋底のコゲに関しては「簡単に取れた」とは言いがたいが、鍋周囲の黒い汚れは、金属タワシでこすっただけでかなりきれいになった。
コゲの汚れとは異なるが、黄色い汚れが薄くこびりついてしまった鍋も重曹水で10分煮てみた。沸騰している重曹水の中をのぞき込むと、鍋の黄色い汚れが膜のようにベロリとはがれているのがわかる。「ひと皮むける」という表現がピッタリだ。鍋底近くの黒い汚れは残ったが、冷ました後、スポンジで軽くこするだけで落とすことができた。
なお、今回、筆者が使用した鍋は「ステンレス鍋」である。アルミ鍋は重曹水で煮ると変色してしまうため、今回のようなメンテナンスは不向きだ。また、熱湯を使用するので、くれぐれも注意しながら作業してほしい。
「重曹」は使い勝手がいい!
さまざまな方法で重曹を使った掃除を試してきたこの連載。重曹を実際に使ってみて感じたのは、「汎用性の高さ」だ。「粉で使う」「水に溶かす」「ペースト状にする」「石けんや酢とあわせて使う」など、汚れに応じて使い方を変えていくことができる。重曹ひとつあれば、いくつもの洗剤をストックしておく必要もないのではないだろうか。
また、汚れ落としのパワーは強力なのに、肌にやさしいことも実感した。これまでは、強い洗剤を使うと手が荒れてしまうことが多かったのだが、重曹掃除では素手で挑戦しても手が荒れることは全くなかった。とはいえ、今回のように重曹を加熱して使う場合はアルカリ性が強くなるため手肌への刺激も強い。ビニール手袋などの使用が望ましいだろう。
安価で安全な上、使いみちもさまざまな重曹。ぜひ毎日の掃除に取り入れてみてほしい。