「MISS plus」2014年2月号

「MISS plus」の休刊

「時代が求める”次世代”お嬢様スタイルを発信!」がキャッチコピーだった「MISS plus」が、2014年2月号をもって休刊となりました。最終号の「MISS plus」を手に取ると「30代――これからは、愛されて憧れられて生きていく!」というテーマが掲げられていました。

そういえば、長らく「愛され」という言葉は女性誌で頻繁に見られるキーワードでした。でも、今って「愛され」は女性誌の中でどういう存在になっているのでしょう。書店で表紙に「愛され」というキーワードがどれくらいあるかを見てみましたが、今月出ている女性誌の中で筆者がその言葉を見つけられたのは、「MISS plus」と「with」「美的」の3誌のみでした。そのうち、「美的」は、「愛され新色LOOK BOOK」というコスメの新色を網羅した付録なので、あまり深い意味付けはないようでした。

「愛され」女性の像にはかなり幅がある

一方、「with」の「愛され」はというと、「新人OL・愛莉の『愛されカジュアル』お仕事コーデ入門」というページになっていました。OLになったものの、まだ学生さん?って聞かれてしまうようなちょっとガーリーな女の子が、ちゃんとした大人OLになるためのページ。このページでは「みんなに広く愛されるコミュ力がある」という意味で使われているようでした。

「with」には、もうひとつ、「コート3着で、ハッピー通勤20×3」というページもありました。こちらには、「愛されフェミニン派・聡子」というキャラクターが登場。コートはAライン、ボトムはほとんどスカート、前髪無しのロングで、綺麗に巻いたりまとめたり……という女らしくてコンサバなOLが「愛され」の特徴のようで、さっきの「愛され新人OL」とは同じ雑誌の中でもまったく違うキャラクターになっています。いや、さっきの「愛され新人OL」が目指すのがこういったフェミニンOLなのでしょうか。

また、「MISS plus」では、「愛され&憧れられる2WEEKSワードロープ」という特集が組まれています。こちらの「愛され」は、華やかレディスタイルが基本。明るい色合いのワンピース、フレアスカート、アンサンブルニットなど「パリジェンヌのようなワードロープが特徴」だそうです。対して「憧れられ」は普遍的なデザインやシンプルな服を組み合わせて自分らしく着る、いわゆる「こなれ」を重視したスタイルのよう。

こうして見てみると、「愛され」という言葉から各誌がイメージする女性像にかなり幅があるということはわかりました。

「愛され」減少は、結婚に対しての考え方に関係している!?

ただ、本当に「愛され」という言葉は一時期よりも使われていない。これは、ファッションの流行にも関係があるかもしれません。

実は、女性誌の世界では、いまやフェミニンだったり、コンサバだったりのコーディネートというのは、少なくなってきています。コンサバが売りだったファッション誌ですら、今は「こなれ」がメインでコンサバは脇役にまわっているものも少なくない。「愛され」は、こうした、ベーシックだったり、こなれたカジュアルだったりというものに対抗するフェミニンやコンサバファッションとの融合で登場することが多いのです。

また、昨今の結婚に対しての考え方が変わってきたことにも「愛され」の減少は関係しているのではないでしょうか。

以前は、ほぼ100%の男女が結婚でき、しかも、女性は家庭を守り、男性は外で仕事をするという役割分業も社会の制度的に無理がなかった。ところが、終身雇用を維持することも難しくなると、結婚生活においても、男女の役割があいまいになり多様化してしまいました。「愛され」たい人は、どうしても受動的なイメージがあります。別に「愛され」たいと思うことは悪いことではありませんが、受動的なことは、人に何かをゆだねることになるので、重さを感じることはあるでしょう。すると、男性も「愛され」たいと待っている人を、経済的にも気持ち的にも余裕をもって「愛する」ことは難しくなるということは考えられます。

それでも、2012年の男女共同参画社会に関する世論調査の結果で、「男は外で仕事をし、女は家庭を守るべきだ」という考え方に賛成する人が5割を超して、世の中の結婚観は保守に戻りつつあるなんて言われたこともありました。

でも、リアルな数字としては、男性は「結婚したら妻に専業主婦になってほしいか」という質問に、なってほしいと答えた人は16%、なってほしくないと答えた人は84%だったという結果が出ていたりします(マイナビニュース調べ)

ただ、これだけ女性誌の「愛され」というキーワードが少なくなってきたことを考えると、女性も「愛され」たいキャラって、もはや受けないのかな? と気づき始めているのかもしれませんね。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。