自作するにあたっての基本的な用意
今回から実際のPCの組み立てについて説明していく。と、その前にPCを組み立るうえで用意しなければならないものであるが、基本的には2番のプラスドライバーさえ用意すればOKだ。ドライバーは主にPCパーツをケースに固定するさいに利用するが、最近ではツールレスで作業が行えることを売りにするケースも多いので、場合によっては必要でないこともある。ただ、ツールレスをうたうケースでも一部作業で結局ドライバーが必要になるというケースも稀にあるし、ドライバーで固定したほうがパーツがよりがっちり固定されるメリットもある。自作における必須アイテムとして用意しておくべきだろう。
自作には2番のプラスドライバーが必須。柄の長いドライバーやラジオペンチを用意しておくと便利だ |
作業の最後でケーブルを束ねるのに使う小物も用意しておきたい。ケースや電源に付属することも多くなったので、付属の有無を確認するといいだろう |
ちなみに、筆者は写真に示したような柄の長いドライバーを使用している。ケースの奥にドライバーが届かなかったり、パーツの隙間をぬって固定しなければならなかったりするときに便利だからだ。必ずしも柄が長くなければならないというわけではないがお勧めしたいアイテムである。
このほか、必須のアイテムではないが、ケース内での狭いスペースで意外に活躍するのがラジオペンチ。詳細はこれから説明するが、マザーボード上にフロントパネルを取り付けたり、ドライブ類に電源ケーブルを接続するさいなど、手を入れにくい場所へのパーツの取り付けに一役買ってくれるだろう。
また、ケース内へパーツを取り付けたあと、ケーブルをまとめるための小物として、ビニールタイやベロクロテープなどを用意しておくと便利だ。ケースに少量付属することもあるので購入前にチェックするといいだろう。写真に示したようなもののほか、筆者は(ホームセンターで安く買えるから)園芸用のビニールタイなども使っている。
さて、事前に用意しておきたいものは上記のとおりだ。これに加えて、実際の製作作業における基礎知識として覚えておきたいのがネジの種類である。PCに使われるネジには「ミリネジ」と「インチネジ」と呼ばれる、ネジ山の幅が異なる二つネジが存在する。ミリネジはHDD以外のドライブ類や5インチベイなどに収納するパーツなどに主に使われる。インチネジはHDDや拡張カードの固定がメインの用途だ。いずれにしてもネジの種類を間違えると、パーツのネジ山をつぶしてしまったりして正しく固定できなくなる。細かいことを言えば振動を生む遠因にもなったりするわけで慎重に作業する必要があるのだ。
左がミリネジ、右がインチネジ。自作PCでもっとも気を遣うのがネジの使い分けだ。ケースへのパーツ取り付け作業を行う際は要注意である |
今回、ケースはクーラーマスターの「Centurion 590」を使うが、この製品はHDDの固定にちょっと特殊なネジを使う。製品によっては、こうした指定があることもあるので、マニュアル等で確認しよう。もちろん、ネジはケースに付属している |
ケースの外でできることを事前に作業
では、実際の作業手順の紹介に移りたい。ちなみに、PC自作の作業手順にはとく決まりというものはない。最終的にPCパーツ同士が電気的に接続されていれば動作する。もちろん、CPUより先にCPUクーラーを取り付けることはできないといった物理的に不可能な順序はあるし、ある程度のセオリーというものはあって、この順序で取り付けたほうが作業がスムースに進むというものはある。ここでは、筆者のお勧めの順序で紹介するが、必ずこの通りにしなければならないというものでもない。
例えば、この先の紹介ではCPU→メモリの順序で取り付けを行うが、買い物袋の中でメモリのほうが上に乗ってるなら、先に取り出してメモリから取り付けても構わない。気楽に楽しんで作業を進めれば良いと思う。
ということで、順に紹介していくが、前半はケースの出番がない。PCに必要なパーツは、すべてケースに固定されることになるわけだが、ケースに固定しながら作業を進めると、ケース内の狭い空間での作業が増えてやりにくくなる。ケースの外でできる作業は先に進めてしまったほうがラクなのだ。
CPUの取り付け
まずはPCの最重要パーツともいえるCPUの取り付けである。組み上げる構成は前回紹介したとおりで、「P5Q-E」というマザーボードに、「Core 2 Duo E8500」というCPUを取り付ける、という作業になる。
このCPUは、LGA775と呼ばれるパッケージが採用されており、ピンが飛び出したソケットにCPUを取り付ける格好となる。手順としては、ソケットを構成するCPU固定金具にあるレバーを押し込んでロックを外し、カバーを開ける。CPUにある2箇所の切り欠きで正しい向きを確認しCPUを置く。カバーを取り付ける。という流れになる。
それほど難しい作業ではないが、作業中に注意したいのはCPUソケットのピンに触れてしまうことだ。CPUのピンは意外にデリケートで、変な力が加わると曲がってしまうこともある(そのためマザーボードの出荷時には保護カバーがかぶせられている)。また、CPUの固定金具はレバーによるてこの原理で強い力が加わる。CPUを間違った向きに装着したまま無理に取り付けようとして破損してしまう例もある。気を抜かずに作業する必要があるのだ。
LGA775パッケージのCPUは、ソケットの金属カバーを開け、CPUの2個の切り欠きをガイドに正しい向きを確認。この段階では取り付けるというより"置く"だけでOKだ |
金属カバーを閉じ、レバーを固定すれば作業完了。CPUが正しく置けていれば、それほど力はいらない。無理に固定するようなことはせずに慎重に作業しよう |
CPUクーラーの取り付け
続いてはCPUクーラーの取り付けだ。CPUはPCパーツのなかでも発熱が多い部類に入るため、CPUクーラーを正しく取り付けて確実に冷却する必要がある。ここでは、ASUSTeK「Lion Square」を使うわけだが、この製品はLGA775のほかSocket AM2のAMD製CPUでも利用可能なユニバーサル対応製品であるため、やや特殊な工程を必要とする。他社を含めたユニバーサル対応製品を利用するのならば参考になるだろう。ただ、インテル純正クーラーの利用を前提に自作に取り組む人も多いと思うので、その取り付け方法についても写真で紹介しておく。
CPUクーラーの取り付けに際して重要なのは、グリスである。グリスとはCPUとCPUクーラーの隙間を埋めるものと考えればいい。CPUとCPUクーラーの接地面は平面に見えるが、完全にフラットなわけではなくわずかな凹凸がある。この間には空気が入ることになるが、空気というのは熱伝導率がそれほど高くない(熱抵抗が大きい)ため、CPUの熱がCPUクーラーへ伝わるさいの障害になるのだ。グリスという高い熱伝導率を持つ柔らかい素材を使って、この隙間を埋めることで、CPUの熱がCPUクーラーへ伝わることを助けるのである。
CPUまたはCPUクーラーにグリスを塗る。量は多すぎても良くないが、少なすぎるのはもっと良くないので、気持ち多いかな、と思うぐらいがベター |
グリスはプラスチックのヘラなどで薄くのばす。CPUとCPUクーラーの間に空気が入れないという理由を頭において、満遍なく塗布するようにしよう |
ただし、熱伝導率が高いとはいっても、CPUクーラーなどに使われる金属ほど優れた熱伝導率というわけではない。そのためあまり多く塗り過ぎないのも重要なポイントだ。少なすぎて完全に隙間が埋まらないというのは絶対に避けたいので、気持ち多めに盛り、プラスチックのヘラや、使わなくなったショップの会員カードなどを活用して満遍なく広げるようにしよう。満遍なく、とはいっても最終的にはCPUクーラーの固定時に圧着されるので、それなりに広げておけば大丈夫だ。
CPUの側に塗るか、CPUクーラーの側に塗るかで迷う人もいるかも知れない。筆者はCPUの側に塗ることが多いが、これは目的が果たせればどちらでも良い。ただし、どちらの場合であれ、マザーボード上のパーツにグリスが付着しないよう注意を払いたい。絶縁物質でないグリスもあるからだ。また、手軽だからといって指を使ってグリスを広げるのは厳禁だ。指についた油分がグリスに混ざることで、グリスの熱伝導率が低下してしまうからである。
なお、新品のCPUクーラーには、あらかじめグリスが塗布されていることも多い。この場合は自分で塗る必要がある。グリスが塗布されていない場合でも、CPUクーラーにグリスが付属していることが多いので、それを利用するとよいだろう。もちろん、こういう細かいところにこだわりたいならば、より熱伝導率が高いグリス単体製品を購入してもOKだ。 さて、肝心のCPUクーラーの側であるが、Lion Squareのようなユニバーサル対応製品の場合、まず、利用するCPUソケットに併せた金具を取り付ける。そして、専用のバックパネルが存在する場合には、それをマザーボードの裏側に両面テープで貼り付ける。最後は、CPUクーラーとバックパネルで、CPUをサンドイッチする格好で固定すれば取り付けは終了。あとは、CPUクーラーから伸びているファンの電源コネクタを、マザーボード上の所定の位置に取り付ければ作業完了となる。
Lion Squareの取り付け事前準備。LGA775用のリテンションパーツと、固定用ネジをパッケージから取り出す |
マニュアルに従って、CPUクーラーにリテンションパーツを固定する。CPUクーラーによって1号クラスのプラスドライバーが必要になることもあるので要注意だ |
続いて、マザーボードの裏面にバックパネルを取り付ける。マザーボードに空けられたCPUクーラー固定用の穴に位置を合わせて両面テープで貼り付ける |
CPUクーラーを取り付けて、ドライバーで固定。強く締め付けすぎそうと心配になるかも知れないが、バネにより適度に戻るようになっているので、ネジが止まるまで締め付けてOKだ |
クーラーを取り付けたらファンの電源コネクタの取り付けを行う。CPUソケット周辺に必ず用意されている、CPUFAN、CPUCOOLERなどと書かれた4ピンの端子を探そう |
その端子にコネクタを取り付ければ作業は完了。ピンの土台になっているプラスチックパーツにガイドが用意されているので、正しい向きに取り付けられるようになっている |
インテル純正クーラーの場合は、まず、取り付け前に4本のレバーの向きを確認。レバー上部書かれた矢印とは「逆の向きに」回しておく |
あとは力を込めてCPUクーラー用の穴に固定していく。カチッという音がするまで押しつけよう。CPUとCPUクーラーの間に隙間ができてしまうので、中途半端な固定は厳禁 |
メモリの取り付け
続いてはメモリの取り付けである。ここでは、GeiLのDDR2-800 1GB×2枚セットを利用するが、メモリを取り付けるスロットに注意する必要がある。最近のメインストリーム向け以上のチップセットはメモリインタフェースを2系統設け、同時アクセスすることでパフォーマンスを向上させている。これをデュアルチャネルメモリインタフェースと呼んだりするが、Intel P45も例外ではなく、デュアルチャネルをサポートしている。
このデュアルチャネルメモリインタフェースは、メモリスロットが4本ある場合、2スロットずつ分けて、各チャネルに割り当てられている。最近のマザーボードの多くは、メモリスロットを色分けすることで装着すべきスロットを分かりやすくしており、2枚利用する場合は同じ色のスロットに装着するようにすればOKだ。もし色分けされていないマザーボードの場合は、マザーボードのマニュアルを参照して取り付けるべきスロットを確認しよう。
取り付けるべきメモリスロットを確認したら、この左右脇にあるレバーを起こし、メモリを取り付ける。実際のメモリ装着に当たっては、"向き"がある。これは端子部分の切り欠きがガイドになっているので、この位置を合わせることで間違いなく装着ができるようになっている。
また、メモリの取り付けは意外に堅い。メモリが押し込まれることで、先ほど起こしたレバーが自動的に戻るような仕組みになっているので、カチっという音がして、このレバーが確実に戻っていることを確認しよう。
GeILのDDR2-800メモリ。1GB×2枚セットで販売されているものなど、多数の製品バリエーションがある |
デュアルチャネルメモリインタフェースを持つチップセットの場合、2枚のメモリの取り付けスロットに注意。基本的には同じ色のスロットに2枚のメモリを装着する |
DDR2 SDRAMは切り欠きの位置がかなり中央に近い位置にあるが、微妙にずれている。この切り欠きの位置をガイドに、正しい向きでスロットに取り付けよう |
メモリを押し込むとレバーが自動的に戻る仕組みになっている。写真奥のメモリは取り付け不十分な状態だ。手前のようにレバーが完全に起きる位置まで押し込む必要がある |
ドライブ類ケーブルの取り付け
次に、HDDや光学ドライブ用のケーブルの取り付けを行っておこう。今回の構成では、HDD、光学ドライブともにシリアルATA接続なので、マザーボードに付属のシリアルATAケーブルを、取り付けるだけだ。シリアルATAケーブルはコネクタ内部にL字型のガイドが設けられており、確実に正しい向きで装着できるようになっているので難易度は低い。
注意したいのは、シリアルATAケーブルを取り付けるコネクタの選択だ。シリアルATAコネクタの位置によっては、コネクタと拡張カードが干渉してしまう場合がある。取り付ける拡張カードの大きさとスロットの位置を見極めて、干渉が起こらないように気をつけたい。もっとも、コネクタの変更は実際に取り付けてからでも可能なので、あまり深く考えすぎる必要もないのだが。
HDD用、光学ドライブ用にシリアルATAケーブルを取り付ける。これは、あまり良くない例で、向かって左側のコネクタが拡張カードに干渉しやすい状況になっている。位置を選別したり、L字型のコネクタなども活用してほかのパーツとの干渉を避けよう |
(機材協力 : ASUSTeK Computer)