先日、当初なんの対策も発表せずに「休校要請」を出した政府に「この国の偉い人は、どのご家庭にも平日日中子どもの世話が出来る専業主婦、もしくは同居しているか、孫のこととなれば瞬時にプリウスで馳せ参じるジジイやババアが存在していると未だに思っているんじゃないか」というようなことを書いた。
つまり家庭観が昭和でストップしているんじゃないか、ということだが、そういう自分の家庭観も言うほど新しくも正しくもなかった、ということが今回判明した。
現在コロナウィルスの影響により依然休校状態の学校も多い。安全のためには仕方のないことではあるが、あまりに休校が長引くと気になるのが「勉強」のことである。
おそらく自宅での自主学習ということになっているのだろうが、大人でさえ自宅勤務で、調べものをするはずがクソまとめサイトを小一時間見ていた、酒を飲んでいた、寝ていた、など、コロナの影響による不測の事態により仕事が思うように進まないという者が続出しているぐらいだ。時間割や教師がいない中、子供に勉強をさせるのに苦労している家庭も多いだろう。
そこで活用されているのが、リモートワーク同様、インターネットである。
全国一斉休校要請を受け、進研ゼミや学研など、多くの学習教材会社が自宅学習教材やアプリなどを無料で提供するなどの支援を行っている。おそらくテレビ電話などを使った、リモート授業をしているところもあるだろう。
しかし、いくら無料で提供されてもこれらを利用することが出来ない家庭もあるのだ。
家にネットがないのである。
香川の条例に違反することすら無理な家が2割も
もう一度言おう。家にネットがないのである。家が青ヶ島にある、というわけではない。パソコンやネットを利用する経済的余裕がないのだ。
今の日本の家庭はほとんど共働き、なんだったらジジイババアですらまだ働いており、シングル家庭も珍しくなく、そう簡単に子どもの面倒を見られる人材は確保できない、というのは、ネットに貼りついているような人間なら誰でも想像がつく話である。
だが、「家にネットがない家庭」というのは、意外と想像してなかった人も多いのではないだろうか。特にネットが使えない人はネットに存在しないため、1日68時間ネットに住んでいるような人間はそういう方ににお目にかかる機会がまずない。
よって政府は今回、ネットがない低所得家庭に、自宅学習のためのモバイルルーターを貸与する方針を固めたようだ。パソコンはあるのか、というともちろんないので、家庭にネット環境をつくり、学校のパソコンを持ち帰り学習に利用するという。
その方針自体は良い。確かにネットのない世帯も1軒や2軒はあるだろう。そういう子どもが休校中、他の子ども同様に勉強ができないのは大変に問題である。
ところで、今回この支援を受ける予定の小中学生がいる低所得家庭は、全世帯の「2割」にのぼる見通しだという。
2割の家庭にネット環境がない、というのはなかなか衝撃的ではないだろうか。
先日、この連載で香川のゲーム・スマホ条例について取り上げたことがあったが、条例の賛否以前に「元々ゲーム機もネットもないから関係ない勢」が2割もいた、ということである。
香川は条例を作ってしまうほどのネット廃人危惧国なので、全世帯の13割(つまり100人のうち130人)ぐらいがネットを保有しているのかもしれないが、そうなると逆に5割程度しかネットに繋がっていない県が存在するということである。これは由々しき事態だ。
確かに「子どもの貧困」という言葉も良く聞かれるようになったため、そのような家庭があるということは理解していたが、それが2割もある、というのは正直「知らなかった」と言わざるを得ない。
このような家庭は、衣食住に困るというレベルにまでいかなくとも、ネットがないなどの不足が多く、結果、様々な面で不利な状況に置かれることになってしまう。
気がつけば、あなたの背後にも這いよる格差社会
ネットを持っていない家庭が学習教材を使えないように、家庭の経済状況は学力には特に大きく影響する。
学力というのは才能が大きいように見えて、実はソシャゲと同様「課金」が大きく物をいう世界でもあるのだ。
バカに金をかけてもどうにもならんだろうと思うかもしれないが、私が日本語をしゃべれるようになったように、どんなボンクラでも幼いころから英会話を習わせればバイリンガルにすることができるのである。
ゲームのアバター同様、本人の資質差はあれ、金をかければかけるほど、学力や学歴、スキル、留学などの体験、といった武器は多くなる。
逆に、金をかけられなかった子どもは、ジーパンにランニングという初期アバターのまま、レベル上げもロクにできずに社会に出ることになってしまうのだ。
そのような丸腰戦士は、社会でも低賃金の仕事に就くことしかできず、貧困のループが続いていくのである。
たまたま運よくそのループ外にいると「自分には無関係な世界」となり、そんな家庭が2割もいることに気づかなかったりするのだが、ループ外の人間も全く無関係というわけにはいかない。
低所得者からは当然税金も十分に取れないので、税収が減り、結局はまた増税などループ外の人の負担が大きくなってしまうのだ。
そして、誰であってもいつ2割側になるかわからない。
実際今、コロナウィルスの影響で仕事がなくなり、あっという間に困窮してしまった人も多いのではないだろうか。
今の世の中、一寸先はダンサーインザダークである。
8割側にいる時、自分には無関係だと思って「自己責任なのだから助けるな」などと言うのは、2割側になってしまった時の自分の首を締めることになる。
現在でも弱者を支援する制度は数あれど、何せ弱者はネットを持ってないので、そういう支援があるという情報すら手に入れることができなかったりする。
行政の案内が不十分、とも言えるが、案内はあっても、自分が弱者になることを想像していないせいで視界に入ってない、ということも多いのではないだろうか。
何かが起こってしまう前に、「イメージするのは常に最弱の自分!」と、困った時にどうすれば良いか情報を集めておくべきだ。