ワニが死んだ。

今さらその話? と思われていそうなところが本件の一番怖いところである。

ワニとは「100日後に死ぬワニ」のことである。

世の中で何が起こってもバトルシップの話しか流れてこない、という整備され尽くしたツイッターアカウントでさえ、ここ100日前後でワニを1度も目にしなかったという人はいないのではないだろうか。

いたとしたら、本当にそれはツイッターか疑った方が良い。シイシッターではないか、もしくはそのスマホと思って操作している板がでかいウエハースでないか確認してみよう。

「100日後に死ぬワニ」とは、100日間ツイッター上で連載された漫画のことである。

連載が始まってからすぐに話題となり、100日後ワニが本当に死ぬのかどうか多くの人が固唾をのんで見守っていた。

私は、作品の良し悪し以前に、同業者の成功が大嫌いなので、二日目ぐらいで「サクセス」を確信して見るのをやめてしまったのだが、それでも100日経ってどうなるかぐらいは確認しようと思っていた。

このように、ワニが好きにしろ、嫌いにしろ、とにかく最後を見届けねばと思わせる作品であり、最終回は私が見た時点でも60万RTはされていたと思う。

こんな数字を見たのは前澤友作以来である。「割と最近」ということだが、100万円を撒かずに100日漫画を描くことでここまで注目を集めたのは純粋にすごい。

ただし「100日後に死ぬ友作」だったらもっとバズった気もする。

巨大な白イタチ(残忍)とかの追悼サンバだったらセーフ?

  • 炎上よりも、死んだワニがもう昔話になりかねないことが怖い

しかし、ワニが注目を集めたのは作品自体もそうだが、終わってからも大いに注目された。

はっきり言って「炎上」したのだが、死ぬと言って死ななかった、というわけではない。

タイトルで言ってしまっているので、ネタバレも何もないので言うが、バッチリ死んだし、その死を悲しんだり感動したりした人も多かった。

しかし、ワニが死ぬや否や「書籍化決定」「映画化決定」と、今まで影も形もなかった「商業の人」がやってきて、お店を広げはじめたのである。

ここでまず「もう少し余韻を味あわせろ」「死んだ途端に金儲けかよ」という批判が上がった。

確かに「ワニ追悼ポップアップショップオープン!」など、高低差で鼓膜が破裂しそうなワードだ。もちろん余韻も粉砕である。

私のように2日と100日だけ見たような一見なら逆におもしろいと思えるが、100日見続けた人からすると「そりゃないぜ」だったのだろう。

「力石徹追悼コラボカフェ決定!」と言われて喜べるだろうか。推しが作中で死んだことがある人は、そのキャラに「追悼サンバカーニバル!」とか、当てはめて見てほしい。おそらく嫌だろう。

だが一方で、金儲けの何が悪い、100日分も漫画を描き、これだけ注目を集めた作者に金が入らない方が狂っている、という声も多かった。

確かに、ツイッターでバズったものに企業が目をつけ商業化するというのは全く珍しい話ではない。これに全部怒っていたら血管が何本あっても足りない。

しかし、あまりに商業展開が次々に発表されたため、100日でワニが死ぬことは可能だが、果たして100日以内で、これだけの書籍やグッズ、カフェなど用意できるものなのか、ワニの前にスタッフが死ぬだろう、という疑惑に発展した。

つまり、最初作者が個人で描いていた漫画がバズって商業化ではなく、最初から企業がバックについての仕込みだったのではないか説が浮上し、さらにそれがあの「電通」であるという噂まで流れ炎上、通夜や葬式を飛ばして火葬、という超高速セレモニーとなった。

ちなみに、最初から仕込み説、電通案件説、は作者も否定しており、定かではない。しかし真偽はともかく、この流れで「萎えた」という人も多いようだ。

ありのままに今起こったことを話している時間すらないぜ

少なくとも本件で確かにわかったことは、とにかく、ツイッター発の食品は腐るのが早いということである。超スピードなどというチャチなものではない。

ツイッターというのは次々と膨大な情報が流れてくるため、ユーザーはキレイな蝶々がいても、それを追いかける途中の道に落ちているデカいウンコに気を取られて蝶々のことを忘れる、という落ち着きのない4歳児みたいになってしまっているのだ。

4歳児がワニからでかいウンコに視線を移す前に発表しなければ、と考えた結果「ワニが死んだ直後」ということになってしまったのかもしれない。

その結果「早すぎる」と批判を食らったわけだが、一瞬でも待ったら4歳児はすでにウンコに夢中である。

このようにツイッターバズからの商売というのはなかなか難しい。

特に漫画のテーマが生や死を扱ったものだったため、それが「金」との相性最悪だったというのもあるだろうが、本件だけでなく、個人が趣味でやっていたものの商業化に関しては常に一定の批判がある。

猫写真をタダで見るには大喜びでも、写真集を出すと言われたら「おキャット様で金儲けをするな、死後裁きにあうぞ」と怒りだすのだ。

私は他人のサクセスが泣くほど嫌いだとでかい声で言っているが、他にも心の底から他人の金儲けが心の底から嫌いな人がたくさんいるとわかっただけでも良かった、と言える。