すでに正月休みも終わり、会社にいるという人も多いだろう。

そしてインフルエンザも今時期ピークを迎え、2月中に収束し、3月頭に追加公演が入るといういつもの全国ツアーを展開中だ。

もし今、会社にいるし、インフルエンザにも罹っているという、片方選ぶなんて俺には無理、という欲張りセットな人がいるなら、今すぐ帰れ。

インフルエンザに罹ったら、会社はもちろん、外出も極力せず数日安静というのは常識である。

しかしそれも最近のことで、ひと昔前はまで「インフルエンザになったので休ませてください」と言ったら「電話が出来る状態なので何故?」と聞かれる企業も珍しくなかった。

病欠というのは「意識不明の重体」以外ありえなかったのである。それも後で「無断欠勤」として怒られる。

だが「インフルエンザなのに来させる会社」に対抗し、「インフルエンザなのに来ちゃう社員」も同じく問題になっている。

俺がいないとみんながこまるじゃん?

インフルエンザと診断されたのに、ただの風邪と偽って出社したり「インフルエンザとは言われていない(医者に診せてないから)のでインフルエンザではない」というとんちを使ってでも出社しようとする者までいる。

そういう人間は「会社の連中全員道連れだ」という心中をしたくて会社にきているわけではない。どちらかというと「自分が休むと周りに迷惑がかかる」という動機でさらに大規模な迷惑をかけにきている「良かれと思ってバイオテロ」タイプが多い。

もしくは、どうしてもやらなければいけない仕事があり、代わりにやれる人員がいない、という状況に追いつめられ、嘘をついてでも出社してしまう人も多い。

会社を休んで現場をパニックにさせるか、行ってパンデミックを起こすかという、テロリストとしての二択を迫られていると言って良い。そんな会社の体制に問題があると言えるが、仕事というのは「こいつでなければダメ」ということは滅多にない、沢尻エリカの役だって、川口春奈が代わりにやるのだ。

エリカ様の穴でさえ誰かで埋まるのだから、自分如きの穴が他人に埋められないはずがない。

しかし、自分がやらないとダメだと信じて疑っていなかったり、人に頼む=迷惑だと考えていたりする日本人気質が、このランボー怒りのインフルエンザ出勤、に繋がってしまっているのかもしれない。もちろん怒っているのは周囲だ。

とは言え、現代日本において「休むに休めない」という状況があるのは確かに事実であり、薬のCMでも「休めないあなたに」というようなキャッチフレーズを使っているものがある。

こんなCM、趣旨としては「ヒロポン打って戦おう」と同じだ。昔は「24時間戦えますか」というような、休まず働くのが偉いという風潮だったが、最近は「休んだ方が良いのは100も承知だが休めない」という、さらに追いつめられた感が出てしまっている。

それでも昔に比べ、会社側からインフルエンザでも出社を強要される、ということは減ってきているはずだ。

水面下には、休まないやつと休ませないやつがいる

しかし、最近、インフルエンザでも労働を強要した某業界がネットで大層話題になった。

その業界とは「相撲」である。冬巡業でインフルエンザの診断を受けた力士に、日本相撲協会が出場を指示し、取組をさせたという。その巡業では感染者が続出たそうで、インフルエンザを蔓延させるような対応に批判が集まっている。当然その力士は、マスクをつけて土俵に上がるということはしなかっただろう。

同じ部屋に感染者がいるだけで感染るのに、対戦相手はインフルエンザ感染者と文字通り肉迫である。しかもお互いほとんど裸だ。裸が関係あるかはわからないが、何となく服を着ているより感染しやすい気がする。

もちろん、巡業には、力士はもちろんだが、観戦者も多くやってくる、インフルエンザ患者を入れて良い場所ではない。

理由としては、診断が取組の直前だったため、対応が取れなかったとしているが、直前と言っても、行司が「はっけよい」と言ったところで診断が出たというわけではなかろう。

よって「まさかインフルエンザ如きで相撲が取れないと?」というパワハラだったのではないか、と言われている。周囲への迷惑ももちろんだが、インフルエンザ感染者をまわし姿にさせ、激しい運動をさせるというのは虐待である。夜の相撲だってインフルエンザのパートナーに強要したら「DV」と言われてもおかしくないだろう。「休場」が常識である。

インフルエンザはもちろんだが、病気の社員を働かせるのは、立派過ぎるパワハラだと企業は改めて理解した方が良いだろう。

休ませないのはもちろんパワハラだが、休みの申請をしに来た社員に、逐一嫌味を言ったり、理由をしつこく聞いたりするのもパワハラである。

こうやって「休みを申請しづらい雰囲気」こそが、インフルエンザでも出社してくる特攻社員を作り出していると思った方が良い。