労働はすべからく地獄だが、それでも個人的には、介護や子育てなど、家族の世話をしている人よりは楽なのではないか、と思っている。
単に労力の問題ではなく、命だけではなく、自分と違う意志を持った生物を制御し、その行動の責任まで負わなければならないというのはあまりにも過酷だ。
さらに、基本無賃であり、子どもであれば「自分が好きで作ったのだろう」と愚痴さえ許されない空気が蔓延している。
それらの業務を行っている人たちには本当に頭が上がらない。
子育てと老人介護の違いについて、基本的に子どもはだんだんできることが増えて手がかからなくなるが、老は逆なので絶望感が強いという意見がある。
しかし8050問題が代表するように、子どもは時間経過でもれなく自立するとは限らないということも周知されてきた。
むしろ老であれば、順序的には相手が先に死ぬため「いつかは確実に開放される」という希望をモテるが、子どもは逆なので、子どもが自立しない場合、死ぬまで子どもの世話をする可能性が高くなる。
また「子どもはだんだんできることが増える」というのが、逆に脅威になる場合もある。
老いていく自分に反比例し、体力と行動力が増していき、さらに頭も切れるようもなっていく子どもの制御は、だんだん難しくなる。
しかし、強靭な体と悪知恵だけは早い段階から身に着けるが、責任能力だけは死ぬまで乳児な子どももおり、手に負えなくなってしまう親もいる。
少なくとも子どもが成人するまで、子どもの「やらかし」に対し、目を光らせなければいけないのだが、昔に比べて子どものやらかしは格段に多様化しているので、今の親は大変だと思う。
そして、子どもはやがてスマホに出会う
今の親にとって「子どもにいつ自分のスマホを持たせるか」というのは、大きな悩みの種のようだ。
スマホを持たせることにより、すぐ連絡が取れたり、どこにいるかわかったり、防犯的なメリットは大きいのだが、逆にこの世のありとあらゆる悪とアクセスしやすくなるという弊害がある。
我々が子どもの時は「知らない人についていくな」程度で済んだ注意が、現在では「ネットで出会う人間全員を変態と思え」になっているのだから大ごとである。
しかも、局部が出ているなど、子どもでも一目でわかる不審者なら良いが、ネット上だと素敵な大人のお兄さんや、こちらのことを「少年」と呼んでくるエッチなお姉さんだと偽って近づいてくる変態も少なくない。
そういうバ美肉変態とのやりとりを、子どもはむしろ親に隠そうとするので、発覚が遅れる場合も多い。
また、子どもが勝手に数百万円のスパチャを送るなど、まだ自制心の乏しい子どもによる金銭がらみのトラブルもある。
最近は「お年玉を投資で増やそう」など、詐欺のターゲットが情弱の大人だけではなく、子どもにまで及んでいるという話も聞くのでますます心配だ。
しかし、子どもに持たせるスマホに関してはアクセス制限などフィルタリング機能が優秀なので、ペアレントコントロールはかなりできているという。
だが、子どもは日々成長し、その行動はいつしか親の予想をこえてくる。
我々世代が子どもの時でも、己の財布に金がない時、親の財布を狙ったという経験がある者は多いだろう。
それと同じように、己のスマホがアクセス制限されているなら、狙うは無法地帯の親のスマホや電子機器である。
もちろんロックをかけている親も多いと思うが、先日友人が「5歳の娘にスマホロックを突破された」と言っていたので、子どもはいつの間にかこちらのパスワードを把握していたりするのだ。
子どもがいる家庭は、パスワードを定期的に変え、買い物サイトなどにパスワードやクレカ情報を記録せず、風呂も胃にスマホを入れて入るようにしなければ、知らない内に子どもに大金を使われている可能性がある。
また、子どもは知力や体力がついてくるだけではなく「情報」に関しても親を先んじるようになり、こちらがどれだけ気を付けても、親が知らない方法でそれを潜り抜けてくる場合もある。
この時代、子どもは親だけで育てられるのだろうか
それで最近問題視されているのが「後払い決済サービス」である。
「後払い」とは、お金を持っていなくても商品が購入できるシステムだ。さらに商品は支払い前に届き、購入者は後日代金を支払う。
一見クレジットカードと同じシステムのように思えるが、後払いは、クレカ情報や年齢、職業、本人確認なしでも使えてしまうのが特徴だ。
つまり、未成年が親の無許可で買い物や課金をしてしまうかもしれない、ということであり、実際トラブルも起きているようだ。
未成年に対し「親の許可をとっているか」というチェックはあるようだが、こんなのはアダルトサイトの「18歳以上ですか?」という質問と同じで何の歯止めにもなっていない。
さらに後払い決済には割高な手数料がかかる場合もあるので、払う当てがあったとしても多用は危険である。
先日、「このコインは値上がりする」というクラスメートの言を信じ、小学生が家にあった100万近くの現金を持ち出すという、双方の親を震撼させる事件があった。
ネットによって、子どものやらかしは多様化したが、ドストレートに家の現金を狙う子どもも未だに少なくないと思うので、ネット環境さえ与えなければ大丈夫というわけでもない
子どもの行動に注意を払うのは親の使命だが、その範囲があまりにも拡大しすぎているような気もする。