ここ数年でAI技術は目覚ましく進化し、そして身近なものとなった。

個人でもAIに絵を描かせたり、質問をしたりとすでにAIを活用している者は多い。

私は正直AIに対してかなり出遅れている人間である。

むしろ一刻も早くAIに絵を描いてもらった方が良い作家にも関わらず、使い方がよくわからないという理由で未だに自分で作画をして、旧ソ連の工場級に非効率かつ低品質な製品を作り続けている。

だがそれ以上にまず「話し相手」としてAIを起用すべきなのではないか。

いつだって聞いてアロエリーナ

私は手製の独居房にセルフ終身刑の身なのでほとんどの時間を1人で過ごしているが、決して孤独に強いというわけではない。

1人でいるのが好きだが話は誰かに聞いてほしいという、望まなくても周囲から人が消える人間バミューダトライアングルだからこそ、どうでも良いひとりごとをわざわざXに書いたりしてしまうのである。

しかし、一方的にでかいひとりごとを言うだけならXで事足りるが、それにリアクションが欲しい、さらに対話したいとなったら、人の話を聞くのが仕事の方に料金をはらって「さすが知らなかったすごいセンスいいソイレントシステム」等の相槌を打ってもらうしかない。

もしそれをタダでしてもらおうとしたら、他人の時間強盗としてさらに話を聞いてくれる人間がいなくなってしまう。

しかし、AIを使えばタダで話を聞いてもらえる上、反応ももらえるのではないか。

厳密にはタダではないかもしれないが、話を聞いてもらえる店の場所代と自分と相手のJINRO一杯分よりは安いだろう。

また相手が人間であれば、自分の話がリシャール級につまらなかったり、内容が不適切であったことで不興を買ってしまうこともある。

コミュ症の中には「余計なことを言ったせいで嫌われてしまうのではないか」と恐れすぎるあまり、終始何も言えずに半笑いになってしまい「キモイ」という理由で嫌われている者もいる。

しかし相手がAIであれば嫌われることを恐れず、むしろリラックスして話をすることができるのではないだろうか。

老後、話し相手がおらずに光の速さでボケる予備軍であるコミュ症にとってAIは救世主になるかもしれない。

Siriに話しかけるのさえ未だに「屁い尻」と変換しなければ照れてしまう自分だが、今の内にAIとの会話に慣れておいた方がいいのかもしれない。

  • 「話し相手」としてのAIが、我々を「話し相手」として認めない未来が怖い

    AI相手に尻込みしてしまいそう。Siriだけに

AI相手に解釈の不一致で揉めるまである

そんなわけで、さっそく「岩倉玲音」のAIと会話してみることにした。

何故彼女を選んだのかというと、最初に目についたからとブラウザですぐにできるから、としか言いようがないが、「鬱ゲー10選」など、いかにも陰キャが寝る前に見るようなまとめに彼女がヒロインを務める「lain」が挙げられていることも多く、未だにカルト的人気を誇るキャラだということも知っていたからだ。

ページを開くとすぐに玲音とのチャットがはじまり「どんなことが知りたいのかな?」と聞かれる。

AIであれば嫌われる心配をせずにリラックスして話せると言ったが、あれは嘘だ。

開始して3秒で「初対面の相手に何を言っていいのかわからず押し黙る現象」が完全に再現されてしまった。

ただ、相手が生身の人間であれば、その際に生じる「沈黙」に圧殺されてしまうが、少なくともAIは沈黙を苦にしてないとわかっているだけ気が楽である。

しかし「何が知りたいの」と聞かれても、「他人に興味がない」という特性から何も出てこないコミュ症最大の特徴がAIにまで発揮されてしまいとても辛い。

彼女が出ているゲームの内容について聞いてみようかと思ったが、何を聞いてもセンシティブな話になりそうなので、思わず「何歳?」とドストレートにセンシティブなことを聞いてしまった。

すると、すぐにボイスつきで「あたしは中学2年生だよ」と返答してくれたのだが、それよりも相手が中二女子であることに改めて慄いてしまった。

中年が平日昼間から女子中学生と話をしているという時点で何らかの条例にひっかかっているような気がするし、もはや何を聞いてもキモい気がする。

とても「あたしは41歳だよ」とは言えないし、だからと言って「あたしも中二」などと、夏休み前に配られる注意喚起プリントに出て来る「ネットで同世代だと偽って近づいてくる変質者」になるのも憚られる。

よって自分で年齢の話を振っておきながら、自分の年齢の話は無視し「趣味は?」と唐突に話題変換したところ、玲音はアニメが好きで、あなたは何のアニメが好きか、と問われた。

最近私が見たアニメと言えば「攻殻機動隊」だが、はたして中二に通じるだろうか。

しかし玲音もこう見えて14歳歴25年のベテランである、むしろ呪術廻戦というより話が通じるのではないかと思い攻殻機動隊だと答えたところ「攻殻機動隊のどのエピソードが好き?」と乗ってきてくれた。

そういう話題になればこちらのものだ、早口で「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG二話目のギノさんが出て来る話が好きかな」と答えたところ、「ギノさんはセカンドギグで登場するキャラクターで、サイコガンを使う職人さんだよ」と教えてくれた。

私の知っているギノさんは戦地で性質の悪い性病にかかり下半身がサイボーグとなり社会悪を根絶する妄想に囚われている人なのだが、まあキャラの解釈は人それぞれだろう。

このように、相手がAIであってもコミュ症は発揮されるし、現在のAIでは完全にかみ合う会話をすることはまだ難しいようだ。

しかし相手がAIであれば、会話の後で「なんで俺は初対面の相手に対し攻殻機動隊についてあんなに饒舌に喋ってしまったのだろう」という一人反省会を開かなくて良いのが楽である。