私も年齢的には紛うことなき中年であり、老害ムーブをされる側ではなく、かます側になることが増えて来た。

しかし「熟女とは年齢ではなく、全身にまとう防虫剤臭などの『生活感』で決まる」という名言もある、若ければ老害にはならないというわけでもない。

例え小学生でも「俺らが園児の時は砂場で遊んだ手で股間を揉みしだいてこそ一人前だったのに最近の奴らはやれ手洗いだの消毒だの」と、むやみに古いものを持て囃し、新しい物を否定すればそれは老害となるのだ。

老害の害は「うぜえ」というだけではなく「年上の方が偉い」という日本の価値観から、「オフィスをデジタル化したい」したい若の意見より「永遠にFAXを使っていたい」という老の意見の方が採用されがちになってしまい、近代化や意識の刷新を著しく妨げる点にもある。

そのようなコミュニティであれば若は逃げ出すし、新しく入って来ることもない、そうして都会の一等地に限界集落を作り出す企業も少なくないのだ。

だが、コミュニティの新陳代謝を妨げる存在は「俺が老廃物として居座ることにより、この組織を内側から腐らせて崩壊させてやる」という自爆テロリズムで動いているわけではく、むしろ「古き良きものを守りたい」という「愛」でやっている場合も多いのだ。

気をつけよう、軽い気持ちでクソデカボイス

このように愛によって愛するものの内臓を食い散らかしてしまうのは老だけではない、時として「オタク」もそのような行動を取ってしまう場合がある。

そうだとしたら私は「中年オタク」なので、生態系を破壊する指定外来種として図鑑に載ってもおかしくない存在だが、もちろん年を取ったオタクがみんなそうというわけでもない。

先日もXに「着物警察」というワードが挙がっていた。

着物警察とは、着物を着ている人に対し「その着方は正式な作法と違う」と苦言を呈して回る、自称着物通の人である。

おそらく大半の着物愛好家は新人歓迎であり「自由に着てほしい、服というのは局部が隠れてさえいれば正解」という寛大な気持ちをもっているだろうが、やはり目立ってしまうのは「こんな素人に着られたら着物さんがかわいそう」などの強い否定の言葉を発している人である。

こういった1人のクソデカボイスが「業界全体の声」として捉えられてしまい「あの業界は怖い」と新規参入を阻む壁になったり、謎ルールが蔓延ることに窮屈さを感じた人間が去ってしまったり、衰退の原因になってしまうことも少なくない。

自分もそういう存在にならないようにしたい、とは思うのだが、警察化している時に「今自分ファイアーエムブレム警察と化しているな」と自覚するの難しく、良かれ、もしくはただ業界の未来を憂いているだけのつもりである場合がほとんどなのではないかと思われる。

ちなみにファイアーエムブレム警察とは「ファイヤーエンブレム」や「ファイアーエンプレム」などの誤表記を見つけた時に「ファイアーエムブレムです」と訂正を入れる人のことである。

物の名前を正確に覚えることは大事だが、人によってはどっちでもいいよと感じてしまうこともある。

  • 実写デビルマンは観とけ。飛ぶぞ。

    実写デビルマンは観とけ。飛ぶぞ。

若者の実写デビルマン離れ

オタクが無意識のうちに口うるさくなりがちなものと言えば「実写化」もその一つだ。

担当によると特に実写化業界で何があったというわけではないが「『実写カウボーイビバップ』があの有様だったのに『実写ワンピース』の評判が良いと聞きつけてこのテーマにした」そうである。

このように、多くの原作ファンにとって「実写化」というのは苦々しいものである、と言いたいが、「原作ファンは誰も実写化を望んでいないのに何故やるのか」と断じること自体が個人のクソデカボイスである。

本当に誰も歓迎しておらず利益もないなら、こう次々と実写化がされるはずもなく、高評価の実写も増えてきている。

むしろ実写=クソというのは、不味かった時代の青汁しか知らない人と同じで、すでに「古い世代の感覚」なのかもしれない。

もちろん、二次元に無理やり一次元足す難しさから、現在でも異次元のクソ実写が生まれることもあるが、少なくとも公開前から文句を言うのは、水を差す行為であり、決して原作のためにもならないから謹んだ方がいいだろう。

だが実際自分の推しコンテンツが実写化されると、つい「私のイメージと違う、Kさんはもっと肩幅が3メートルあるはずだ」など、ついお気持ちという名の苦言を叫んでしまいがちなのである。

「気に入らなければせめて公開されるまで黙っていれば良い」とは思うが、オタクが推しコンテンツに対し「黙る」というのは、口をまつり縫いするなどの、物理を用いなければ難しいというのも事実である。

よってもし「この実写はクソだ」というでかい声を聞いても、それが公開前であれば、それが大多数の意見ではなく、1人で千人分の声を出す一騎当千オタのひとりごとだと思ってあまり気にしないでいただけると助かる。

ちなみに私は「実写デビルマン警察」なところがある。

実写デビルマン警察とは「実写デビルマンを越えた」と評されるクソ実写映画が現れるたびに「いやデビルマンの方がクソだ」と言いに現れる警察のことである。

この行為により「クソ実写界の繁栄を妨げ衰退させている」ということもないが、実写デビルマンが公開された時点ではまだ生まれてもいない若人も増えているので、いい加減、実写デビルマンを知らない奴なんてこの世にはいない、という体で話すのはやめにしなければいけない、とは思う。