9月13日はXユーザーにとってサービスデーと言っても良い日だった。
何故ならその日Appleが発表した「iPhone15発売に関する画像」を貼りつけ、それに対して「お前が言うんかい!」とコメントするだけで「おもしろいポスト」になったからである。
もちろん「お前が言うんかい」の一言をどれだけ面白く言うかで伸びに差は出ていたが、少なくともApple側が用意した画像の時点でスベらないことだけは約束されていた。
その画像は、iPhoneがついに充電端子を「USB Type-C」に変更すると発表したものである。
さらにその英断によりiPadやMacの充電と同じケーブルを使えることをお喜び申し上げ、そして最後に「これで、ケーブルだらけの毎日とはお別れです。」と長き戦いに対する勝利宣言で締めくくられていた。
これは露出狂が自分を見て悲鳴を上げるJKに対し「お嬢さんもう大丈夫ですよ」と手を差し伸べてきたに等しい。
あまりにも上手くできすぎているため「X野郎どもが嬉々としてこの画像を載せ『お前が言うんかい』とツッコむことで大拡散される」ことを狙ってこのコピーにしたんじゃないかとすら思える。
そうだとしたら、一見汎用性に折れたように見えて、「やり手揃いの企業だが性格が悪すぎる」というAppleの社風は全く折れていない。
この「俺以外全員ダサい」という凡人なら中二で捨てる思想で世界企業にのし上がったAppleの姿勢をリスペクトするユーザーも多い。
そのAppleの「姿勢」を表す代表的なものがこの「iPhoneの充電端子」だったのだ。
ケーブルだらけの毎日は誰のせい?
現在多くの電子機器の充電端子は「USB Type-C」になりつつあり、極端な話Type-Cのケーブルが1本あれば、それを使いまわして大体の物は充電できるようになりつつある。
しかしそんな中iPhoneは「Lightning」というカッコいい名前の充電端子を採用しつづけたため、多くのiPhoneユーザーが「他の電子機器用のケーブル」と「iPhone用のケーブル」を用意しなければならなかったのである。
さらにiPadの方は先んじてType-Cに変更になったため、Lightningは完全に「iPhoneを充電するためだけのケーブル」と化し汎用性はほぼ消失した。
その結果、iPhoneとiPadを両方使っている私などは、出張時必ず2本の充電ケーブルを持参しなければいけないという状況に陥ってしまっていた。
つまり、iPhoneユーザーがケーブルだらけのエブリデイに唾はき捨てランナウエイしていたのは完全にiPhoneのせいなのである。
幸い私の部屋はケーブルの1本や2本で変わるような半端なゴチャつき方はしておらず、むしろ「端子がバカになったLightningケーブルを捨てずに新しいLightningケーブルを買う」という方法で積極的にゴチャつかせていた側である。
「これでケーブルだらけの毎日にさよなら」に対しても「これでさよならできると思ったら大間違いよ」とメンヘラみたいなことしか思わなかったが、部屋をすっきりさせたい人にとっては、このLightningケーブルは目の敵のような存在だったのかもしれない。
特に極力物を持たないミニマリスト的な方はiPhoneを一台だけ持ち「逆にType-Cを捨てる生活」をしていた可能性もある。Androidを1台持った方がケーブルに汎用性があっていい気もするが、やはり極力物を減らしたい人なら「ボタンもなければ説明もない」でおなじみのApple製品の方を持ちたいはずである。
Apple社もせっかく無駄と必要なものを極力排したシンプルイズベストなiPhoneとiPadに何故かそれぞれ違うケーブルが巻き付いている状態を見て、「一体誰がこんなむごいことを」を怒りに打ち震えていたことだろう。
そんなメロスばりの義憤に駆られての変更だったかというと、EUが「電子機器の充電ポートを Type Cに統一せよ」と号令を出したことが関係していると言われている。
「統一せよ」と言われなくても、他の電子機器は大体統一しているため、これは実質iPhoneに対し「お前のことやぞ」とピンポイント号令したに等しいという。
しかし今までのAppleの姿勢を見たら「よろしい、ならば戦争です」と言い出してもおかしくなく、例の文言も「ケーブルではなく、実家のご両親にさよならを済ませておいてください」という意味深なものになっていたかもしれない。
「この戦争をはじめたのはお前」という点をのぞけば、素直に世界の要請に応じたという意味で「この戦いを終わらせてくれたのはApple」と言えなくもない。
ちなみに私が使っているiPhoneは11で3年半以上使っているが、機能的にも不足は感じない。iPadもすでにこれ一台で漫画原稿の制作ができるようになっており、Apple製品が高性能なのは確かである。
だがどれだけ製品が良くても、Appleの姿勢が嫌でApple製品は使わないという人も多く、今回のケーブルさよなら宣言で、Appleを使わない勢の姿勢はさらに強くなったようだ。
ある意味AppleとアンチAppleはお互いの背筋を伸ばしあう関係と言える。
その間で、「iPhoneとiPadを使っているが、主力マシンが何故かWindows」の私の背中は、ケーブルだらけの部屋でどんどん丸まっていくのだ。