久々に美しい日本語を見た、という感じだ。
この報道が出たとき、世間からは「矛盾している」「滅しとるやないかい」とツッコミが相次いだようだが、元々人間自体、世界一有害な物質「労働」を8時間連続摂取した対価で青汁を買うような矛盾の塊なのだ。
他の生き物ならこんな非合理的なことは絶対にしない、むしろ矛盾こそが人間の証と言っていいだろう。
しかし「矛盾」の意味を説明しようと思ったら「あるところに矛と盾を売る商人がいて」と回りくどい話がはじまり、途中まで我慢できても「そこにひろゆきみたいな客が現れ」の時点で「わかった」と言って何もわからないまま席を立ってしまう。
それに対し「永久不滅ウォレット終了」は一言で「これが矛盾だ」と魂で理解させる名文である。
ずっとこれに似たような言葉を考えているが、今のところ「処女のヤリマン」など、時代にそぐわぬ下ネタしか思い浮かばず、永久不滅ウォレット終了のスマートさには到底及ばない。
ちなみに私は終了のお知らせではじめて「永久不滅ウォレット」の存在を知ったので、永久不滅ウォレットは滅した瞬間の炎が一番デカかったのではないかと思われる。「永久不滅なことが売りだが、真の力を発揮できるのは滅した時」というのもまた矛盾だ。
しかし、永久不滅ウォレットを運営するクレディセゾンは、「永久不滅ウォレットが消滅とはこれいかに?」と聞きに来た世界一暇な記者に対し、「永久不滅ウォレットは永久不滅のウォレットという主張ではない」と返答している。
ついに禅問答に突入してしまったと危惧させる返答だが、永久不滅ウォレットは「永久不滅ポイント」を使用するためのウォレットなので、ウォレット自体が永久不滅というわけではない、ということだ。
つまり「永久不滅ポイントを入れる財布」という意味であり「永久不滅の財布」ではないということである。
私はここで「永久不滅ポイント」のことを初めて知ったのだが、「永久不滅ポイント」はセゾンカードの使用などで貯まるポイントで、有効期限がなく一度取得したら不滅なのが特徴だそうだ。
そのセゾンポイントを100P単位(=450円)で交換し、加盟店などで利用できるサービスが「永久不滅ウォレット」だったのである。
しかし、永久不滅ウォレットが使える加盟店がほぼ消滅していたため、存在意義がなくなり、この度「永久不滅ウォレット終了」という、名リリックを残して終了することになったようだ。
つまり、「永久不滅ポイント終了」になった時点で真の意味での矛盾が起こるということだ。
とはいえ、今日びクレカにポイントがつかないなどありえない。永久不滅ポイントが消滅するとしたら、セゾンカード自体の消滅、さらにクレディセゾン自体消滅の可能性すらある。
そんな状況の中「永久不滅ポイントが消滅とはこれいかに?」と聞きに行くような記者はクレイジージャーニー系の仕事をした方が良いと思う。
ポイ活で貯めた「期間限定ポイント」消えがち現象
私が今回はじめて永久不滅ポイントの存在を知ったように、永久不滅ポイントは現在のポイント界ではあまりメジャーな存在ではないようだ。
「ポイ活」と言われるように、最近はポイントを意識して生活している人間は多いが、違うポイントをバラバラと集めても効率が悪い。よって、一つのポイントに絞って貯めるため「ポイント経済圏」の中で生活している者も増えている。
私は楽天経済圏の人間であり、楽天カードを使い、楽天銀行や楽天証券なども利用している。さらに楽天モバイルや楽天でんきなど、生活にかかわるものを楽天に統一して獲得ポイントを増やしている者もいるようだ。
他にも「dポイント」や「Pontaポイント」、「PayPayポイント」、「Tポイント」などの経済圏があり、セール期間に多く付加されるポイントを目当てに買い物をするなどしてポイントを貯める者が多く、XやInstagramでお得なポイ活情報が行きかっている状況だ。
そんな中で、永久不滅ポイントは基本クレカを使うだけで貯まる分話題性に欠け、還元率はそこまで良くないようだが、ポイントをクレカの請求に充当できたり、Amazonギフト券など汎用性の高い金券に交換できたりするなど、シンプルで使いやすい面もあるようだ。
だが、それ以上に「永久不滅ポイント」という強気すぎる名前が気になる。この世に不滅なものはないという理に真っ向から挑む「反真理的団体」として当局にマークされることすら辞さない構えだ。
もし自分の友達が子供に「命名:永久不滅(えたーなる)」と名付けようとしていたら暴力も辞さないレベルで止めるだろう。この名前だと生きる上で様々な困難に直面するだろうし、天寿を全うした際にも「永久不滅なのに死んどるやないけ」というツッコミが、臨終、通夜、葬式で最低3回は入れられるのも忍びない。
永久不滅ポイントというある意味不利としか言いようのない名前をつけてでも、「ポイントが消えない」ことを訴求したかったのだろう。
確かに、有効期限が設けられているポイントは多い。私もマイルを貯めていたが、コロナで数年飛行機を使うことがなく、その間マイルのことを放置していたら、1万マイル以上が失効してしまっていた。
そもそもポイントというものを全く意識していない人間は、知らないうちにポイントを貯め、知らない内にポイントを自然に還す環境活動に従事しがちなところがある。
永久不滅ポイントは、いつの間にか生まれて誰にも看取られずに死ぬ不幸なポイントを発生させないシステムともいえる。
ポイントに無頓着でいつの間にか「ポイント殺し」というカルマを重ねているタイプは、これ以上罪を重ねないために、クレカをセゾンにしても良いのかもしれない。