私の夫はパソコンではない方のマックユーザーであり、私にもたまにホットアップルパイなどを土産に買ってきてくれる。
だが、ある日夫がサイドメニューではなく「ビッグマック」を土産に買ってきたことがあった。初めてのことだったので理由を問うと夫は説明をせずに「エガちゃんねるのマクドナルド回を見てから食べてくれ」とLINEで伝えて来た。
ちなみにその時私たちは同じ家の中にいた、ただ私があまりにも自分の部屋から出てこないため、たまに屋内でもLINEが用いられるのだ。
エガちゃんねるとは、江頭2:50が運営するYouTubeチャンネルであり、登録者380万人を超える 人気チャンネルだ。
私は一日62時間「X(旧Twitter)」しながらYouTubeを開いているが、見るのは鬱ゲーの実況か昔起こった陰惨な事件のまとめ動画ばかりなので、芸能人がやっているようなメジャーなチャンネルを見たことはほとんどなかった。
エガちゃんねるのマクドナルド回とは、マックをあまり知らない江頭2:50がマックメニューを試食し忖度なしでレビューするという企画である。
その中で江頭氏は恒常メニューの中でも人気の高いビッグマックを「そんなにうまくない」と評し「フィレオフィッシュの方が上」と断じている。
なるほど、これは江頭2:50が酷評したメニューをあえて買ってくるという夫のギャグ、もしくは新しいモラルハラスメントと理解した。
しかしビッグマックの点数は「50点」であり、確かに低いが酷評というほどではなく、逆張りボケとしては弱いのでは、と思ったところで、次のてりやきバーガーが「30点」という低評価をたたき出したため、何もわからなくなってしまった。
その後もバーガー類は低調であったが、最後に夫がいつも買ってくるホットアップルパイが登場し「100点」、そして最終的に「120点」の高評価を得たところで動画は終わった。
動画を見ればわかる的な口ぶりであったが、見たことにより逆に謎が深まってしまった。いつも買ってきている江頭氏絶賛のホットアップルパイをはずして、一番うまくないとされたてりやきバーガーを買ってくるならわかるが、何故中途半端な評価のビッグマックを買ってきたのか。
もしかしたらこれは「てりやきやないんかーい!」というツッコミを想定した、もう一段上のギャグなのかと理解した。
しかし、いつもは私のボケに対する夫のボケ殺しに辟易しているが、いざ自分がボケられるとどう返していいのかわからず、結局「動画見た、ビッグマック食べた、普通に美味かった」という事実のみを伝えることになってしまった。
我々はお互いのボケを殺しあう暗殺者夫婦、実質『Mr.&Mrs.スミス』と言っても良いのかもしれない。
ネーミングの妙でプライドが刺激される「都心型価格」
江頭氏に中途半端に酷評され、我が家の寒すぎる空気に巻き込まれてしまった「ビッグマック」だが、マックの中では不動の定番人気商品なのは確かである。
そのスタンダードさはもはやマックの枠を超え、「ビッグマック指数」なる言葉もあるぐらいだ。
「ビッグマック指数」とは「ビッグマックの販売価格を用いて、各国の外国為替レートや物価水準を割り出そうとする取り組み」であり、ビッグマックという同一商品が世界中で売られていることによりできることである。
ビッグマックの値段が高い国は当然物価が高いわけだが、実は日本国内でもビッグマックの値段は店舗によって違うのである。
日本のマクドナルドは3,000店舗ほどあるが、その中で選ばれし「都心店」が30店、さらに空港など「特殊立地店」が13店舗ほど存在し、これらは他の通常店よりもメニューの値段が高かったのである。
そして昨今の物価高の影響はマクドナルドも無影響でなく、先日夫が「ついにマックが値上がりした」と嘆いていたので、全国的に値上げが行われたようだが、7月19日に都心店を中心として、「都心型価格」を適用するというさらなる値上げが行われた。
都心店自体も30店舗から94店舗に増え、さらに121店舗が新設された「準都心店」に指定され、都心店と準都心店の商品に10円から90円程度の値上げが行われたという。
普通に考えれば値上げの影響を受けない地域大勝利な話だが、「都心」や「準都心」という分け方をしたおかげで「うちの地元は田舎だってのか」と、逆に都心型価格を設定されないことに不満を漏らす地域もあるようだ。
確かに、私の村のように「昔は総理大臣の名産地で畑からよく採れたんだけど、最近じゃビッグモーターの原産地と言った方が話が早いね」という自他とも認める田舎であれば、マックが通常店なのは当たり前だし、むしろ田舎店や過疎店として値下げしてくれても構わないとすら思うが、東京ではないが都会と自負している地域の人間からすると、地元が準都心にすら入らないというのは遺憾なのかもしれない。
確かに「神戸」などが都心店に入っていないのは不自然に見えるが、単純に地域ではなく、オフィス街や繁華街など実際の地代や客入りなどで判断しているのではないかとも言われている。
しかし、ビッグマックは通常店でも「450円」である。いつも夫が買ってきていたホットアップルパイは朝マック時間帯から売っているメニューで140円だ。
通常より300円以上多く出した上、レギュラーメニューの時間まで待って購入した手の込んだギャグだったということだ、こちらも半裸で体当たりするなどもう少し丁寧なツッコミをしてあげればよかった。