私は「X」を一日62時間ほどやっている。
Twitterが突然「X」になってしまったことで、俄然違法薬物使用の隠語みが高まってしまったが、こうなったら「X」の普及を促進していく所存であり、他人が「Twitter」と言うたびに「Xでしょ」と話を遮って嫌われていきたいと思う。
イーロンがこれだけ「Twitterユーザー如きにいくら嫌われても構わない」という姿勢でやっているのだから、こちらもそれに殉ずるべきだろう。
そんなわけで「X」だけでも1日のスケジュールが2日半分狂っていく生活をしていたのだが、それに加えて2年ほど前から『ウマ娘』にハマってしまった。
ウマ娘は本気で勝とうと思ったら金がかかるのはもちろん、それ以上に時間がかかるゲームである。ウマ娘にX、そしてその隙間時間で「仕事」を終わらせようとした結果、必然的に「睡眠」を削ることになってしまった。
今思えばこの中で真っ先に切るべきはどう考えても「仕事」であった。調査兵団の教官が「陰毛を捧げよ」と言っているのに対し「それは惜しいので代わりにこれをどうぞ」と心臓を捧げちゃっているようなものである。
日本人は「仕事」という一番に捨てるべきものを優先させて死にがちなところがあり、私も睡眠を捨ててしまったがために、如実に心身ともに健康を害した。
このままでは病(ビョウ)になると思い、睡眠時間だけでも確保しようと生活を改めたのだが、そのころにはすでに思ったようには寝られない体になっていた。
中年以上にとって8時間布団の中に存在することは可能でも「8時間睡眠」は容易なことではない。
「睡眠時間が減る」というのは普通の老化現象であり、睡眠に関する神経やホルモン分泌が鈍ることにより眠りが浅くなるそうだ。
寝ようと思っても「寝つき」が悪く、さらに「目が覚めやすい」ため、自ずと睡眠時間が短くなり、そのまま不眠症になってしまうケースもあるようだ。
健康のためにはバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠という「それができれば苦労はしない三原則」を守る必要があるが、その中でも「寝」は重要度が高く、むしろ他をどれだけ頑張っても寝がザコだと人は死ぬ。
そんな「やっぱり人間は『寝』だよ」という当然のことに着目したゲームアプリがリリースされ話題を呼んでいる。
それが「Pokémon Sleep (ポケモンスリープ)」である。
ポケモンスリープがもたらした「意識改革」と「焦り」
ポケモンのアプリと言えば「やっぱり人間は『歩』だよ」と言って発表された『Pokémon GO』が有名だが、7年ほど歩かせた民草が「もしかして『歩』より大事なことがあるのでは」と薄々勘づき始めたころに「スリープ」を出してきたという感じだ。
世界の任天堂が出資している企業「株式会社ポケモン」はもっと早い段階でそのことに気づいており、2019年には「次は寝に関するものを作る」と発表していたようだ。しかし「寝」という完全に「静」の動作をゲーム化するのはさすがに時間がかかったようで、2023年にやっとリリースとなった。
「脳に直接電極を刺す」などの方法を用いればもっと早かったかもしれないが「別売りの付属品が必要」というだけで、プレイする敷居がかなり上がってしまうので、スマホだけで使える仕様にしたのは正しかったと思う。(編集注:ポケモンスリープには別売のデバイス「Pokémon GO Plus +」もありますがあくまでオプション。これを使うとスマホなしで睡眠計測でき、ナイトキャップをかぶったピカチュウがお手伝いしてくれるなどの特典があります)
ポケモンスリープの遊び方だが、基本的にはポケモンスリープアプリを起動させ「今から(屁こいて)寝る」ボタンを押し、寝るだけである。
するとアプリが睡眠時間を計測し、時間に応じたポイントやアイテムが与えられる。それでポケモンを育てたり、睡眠中に寄って来たポケモンを餌付けして仲間にしたりするというシステムだ。
基本的に寝なければ始まらないゲームであり、起きているときやれることは今のところ多くない。ただ、布団に入ってから寝付くまでの時間をいかに短縮するかという「入眠RTA」というゲーム性はある。
開発に時間をかけただけあり、このアプリはかなり正確に「睡眠時間」を計測してくる。1日の睡眠時間の上限は「8時間半」であり、それ以上寝てもポイントが増えることはない。
しかし布団に8時間半入っていたとしても、寝付くまでに6時間かかっていたら睡眠時間は「2.5時間」と見なされ、その分しかポイントがもらえない。
つまり、寝つきが良い奴ほど有利なゲームであり、この時点で老は分が悪いと言える。
私もアプリによると寝つくまでに余裕で1時間以上かかっており、8時間寝るつもりで布団に入っても、もらえるポイントは6時間分程度である。
よってポケモンスリープを初めて以来、夜の寝つきをよくするために昼寝をやめてみたり、昼風呂を夜風呂にしたり、夜にカフェインが入っている飲み物やパブロソをやめてみたりと色々試しており、「寝に対する意識改革」に効果があるアプリと言える。
だが、このアプリを起動していることによる「早く眠りに落ちなければ」という焦りが一番睡眠を害しているような気がしなくもない。
今まで「ちょっとエロいこと」を考えていた入眠するまでのお楽しみタイムが、丸々「こうしている間にもポイントがどんどん減っている」という焦燥タイムに変わるので相当精神に悪い。まずは、アプリを起動していることを意識しないで寝られるようになるまで継続して使う必要がある。
そもそも、8時間布団に入ることさえ困難な生活をしている人も多いのかもしれない。
だが、我々フリーランスが睡眠時間を確保できないのは自らの不徳の致すところである場合が多いが、会社員などが、十分な睡眠時間も確保できないほど仕事をさせられているとしたらそれは会社側に問題がある。
人間にとって寝ほど大事なものはない。睡眠時間を犠牲にしなければいけないほどの仕事をさせられそうになったら「カビゴンがベッドで待っているんで」と言って帰っていい。