春は出会いと別れの季節。
そういうが、ひきこもりに出会いなどない。あるとしたら部屋に今まで見たことがない虫か新色のカビが発生した時だけである。
別れも「フェードアウト」という形で通年行われているため春かどうかはあまり関係ない。
そもそも家からほとんど出ないため、季節自体があまり関係なく、ひきこもりの服装から季節を当てるのは至難の業と言われており、ポイント2倍の最終問題としてよく使われる。
もし、外で妙に季節にそぐわない格好をしている人間がいたら、ひきこもりの可能性がある。 「季節が変わった」ということに気づかず4月に2月の服装で出てしまい「暑い」と感じることでやっと春の訪れを知るのだ。
ちなみに私は現在、4月中旬でもまだ「ブーツ」を履いているが、これは春に気づいてないわけではなく、単純に靴をブーツ含め「2足」しか持ってないからだ。
スキンヘッドにすることによりヘアブラシがいらなくなるのと同じで、人はひきこもることにより靴がいらなくなるのである。
本当の金持ちやオシャレ、イイ女やデキる男は靴を見ればわかる、というしゃらくせえ言説があるが、少なくとも私の生き様は靴に出てしまっているので、あながち暴論とは言えない。
特に「寒くなった」はわかりやすいが「暖かくなってきた」は感じづらいため、春の訪れには気づかないことが多い。
さらに私が春に気づかないのは「花粉症」ではないせいもあるかもしれない。
やうやう白くなりゆく山際には気づかなくても、だくだく流れる鼻水があればさすがに春に気づくはずである。
ただ、家の中は花粉の影響も少ないので、かなりハードな花粉症でなければ春に気づけない可能性がある。むしろひきこもっているせいで、自分が花粉症であることにも気づいていないのかもしれない。
「漢方茶にステロイド」事件で浮かび上がる「案件」の危険
このように、季節も自分も見失うのがひきこもりだが、外で社会生活を営んでいる花粉症の方は大いに春と己のアイデンティティを感じているころだと思う。
ここ数年コロナがあったため、花粉症の話題はなりを潜めていた感があるが、今春はもうコロナより花粉の話題の方が主流のように感じる。一時期みんな妖怪ウオッシの話をしていたが、結局今はポケモソの話をしているみたいな話だ。
花粉症が原因で死ぬことはないだろうが、鼻水が流れっぱなしで許されるのは、幼稚園児と HUNTER×HUNTER のコムギ、そしてつの丸キャラまでであり、肉体的には死ななくても社会的に死んでしまう。
よって常時鼻をかむために鼻の下が痛くなったりと、花粉症の人はそのせいで相当春のQOLが下がっていると思われる。
酷い人は「鼻水の出すぎて脱水症状になる」と言っていたので「死因:花粉症」もありえなくはない。
鼻の粘膜をレーザーで焼くなど、抜本的治療もあるようだが、ノット花粉症からするとそれ自体が恐ろしい。しかし当事者からすれば「鼻を焼いてでも治したい」のが花粉症なのだろう。
焼いてでも治したいのだから「飲むだけで治る」ものがあれば使わない手はない。
しかし、薬は副作用が怖い、実際花粉症の薬の影響なのか、春の間意識があけぼのになってしまっている人もたまにいる。
できれば薬ではなく、もっとオーガニックな花粉症対策をしたいという人も多いだろう。
そんな人にはありがたい「花粉症に効く漢方入りのお茶」という名目で販売されていた商品に、実はステロイドが入っており、実質薬だと判明する事件があったようだ。
そして、その事実を受け、件の漢方茶を宣伝していたインフルエンサーが謝罪する事態となってしまったそうである。
先日「インフルエンサーが9人、数年で3億の申告漏れを指摘される」というニュースがあったことからもわかるように、現在インフルエンサーに商品を宣伝させる「案件」はかなり増えている。
つまり、それだけインフルエンサーが勧めるものを買う人が多いということだ。
案件と言えどもインフルエンサーは嘘をついているわけではない。実際商品を使い、たとえ全く効果を感じなくても「容器が可愛い」など何とか良いところを見つけ、それすらない時は「こっくりしている」など、ぼんやりした使用感のみを述べ、悪いところは「言わない」ようにしているだけだ。
商品をタダでもらえ宣伝費まで支払われるので、案件はインフルエンサーにとっておいしいことなのだが、案件を受けた途端「結局金かよ」とファンが急にアンチに転じたり、商品側に問題が起こると、それを宣伝したインフルエンサーもついでに燃えたりするというリスクもある。
今回のお茶も、インフルエンサー側は「実はステロイドが入ってますがお茶という体で宣伝してください」と説明は受けていないだろうし、「ペロッこれはステロイド…!」と気づくことも難しいだろう。
「案件の商品」にステロイドが入っていたのはもはや事件だが、「宣伝であるということを伏せて宣伝してください」というクライアントの指示を素直に実行し、ステマ事件にまきこまれるなど、案件を受けたことにより自分のイメージを大きく損なう恐れはあるので、引き受ける際には慎重になった方が良い。
特に「花粉症」は病気である。「病気に効く」という触れ込みの商品は発火率が高いので、もしそういう案件がきたら断った方が無難かもしれない。
フォロワー数が多いアカウントというのはそれだけで価値がある、それを小金で失うのは却って損だ。
こちらとしては「何にも効かないし痩せもしないが太りもしないそして大して美味くもないお茶を宣伝してください」と言われるのが、嘘大げさ紛らわしいことを言わずに済むのでありがたいのだが、なかなかそんな虚無案件はないのが残念である。