コロナウイルスの影響による巣ごもり需要で、電子書籍や動画配信サイトの利用者数は急増したと思われる。それに伴い「サブスク」を利用する人も激増したことは想像に難くない。

サブスクとは定額料金を払うだけで一定のコンテンツを無制限で楽しむことができるサービスである。料金は月額数百円から高くても1,000円程度が多く、この金額で音楽などを100万曲単位で聴けたりするので非常にお得である。

中には100万曲聴いて良いと言われているのに「00年代J―POPヒッツ」とかを永遠にリピートしている「さくら(独唱)」あたりで時が止まっている中年もいるのだが、それでも3,000円のアルバムを数百円で聴けていると思えば安い。

こんな安い料金で企業はどうやって利益を出しているのか、社員に餓死者を出しているのではないかと心配になるが、もちろん心配すべきは他人の餓死ではなく己の餓死である。

企業はボランティアでやっているわけではなく利益を出そうとする。その利益をどこから捻出するかというと、安いからといって秒でサブスクを契約する、我々の穴の空いたポケットからだ。

これには、百恵ネキも「坊やいったいストゼロから何を教わって来たの」とご立腹である。

ちなみに百恵ネキの曲もだいたいの大手サブスクに入っているらしいので、加入しているならついでに「プレイバックPart2」も聴いてくると良い。「Part1を聴いてから」と思っていたら永遠に聞けないので直で2を聴きに行け。

「サービス」のやさしい顔の裏を見る

ストゼロも安価で泥酔という大きな満足感を得られるため「飲む福祉」と呼ばれ、あたかも我々の味方のように言われていたが、残念ながらストゼロは福祉ではなく利益を追求するために作られた商品である。安いからと言って大量に摂取していたら、いろんな意味で大変なことになってしまう。

サブスクも同様であり、安いからと言って次々に契約していたら、結局「00年代J―POPヒッツ」のアルバムを買ったほうが安かったという事態になるし、さらに解約しない限りその金額を毎月、半永久的に支払うことになるのだ。

「毎月00年代J―POP」ヒッツのCDを購入しているというなら、まだその行為が無駄であると気づきやすく、即刻止めることができるのだが、サブスクの場合そう簡単にいかない。

サブスクを契約するときはあっという間だったのに、解約しよう思いサイトを開いたら、いつの間にか解約ではなく、君といた夏の星座にぶら下がって思い出花火してた、という経験はないだろうか。

それは気のせいではなく、サブスクというのは大体契約はしやすく、解約はしづらい設計になっているのだ。

サブスクの「上客」は…?

  • 「●カ月無料キャンペーン」も、解約期日を過ぎると自動更新されたりしますね……

    「●カ月無料キャンペーン」も、解約期日を過ぎると自動更新されたりしますね……

先日Amazonの内部文書がリークされ、意図的にAmazonプライム解約までのプロセスを複雑化し解約数を減らしていた、ということが明らかになったそうだ。

確かにまず解約ページの場所が分かりづらいし、いざ解約しようとしたら何度も「本当に良いのか?」と問われ、今自分が大きな間違いを犯そうとしているような錯覚を起こす作りになっている。

だが、このニュースに怒りを覚えるかというと「まあそうだろうな」という感想だ。

古のオタクの個人HPのエロいイラスト置き場のリンクぐらい解約ページが隠されているサービスもあるし、契約はWebで完結するのに解約は電話受付のみという完全にコミュ症を搾取対象にしている企業もある。そして最終的に「解約ページが存在しない」という悪質なものまであるのだ。

それらに比べれば、Amazonはちょっと面倒くさいだけで、解約しようと思えばクリックだけで解約できる分まだ良心的である。

逆に言えば、この「ちょっと面倒くさいプロセス」すら耐えられない人間こそがサブスクの上客なのだ。

こういうタイプは生きている間、漫然と料金を払い続けてくれるのはもちろん、IDパスワードを書き残すなどというマメな行為ができるわけがないため、死後もしばらく料金を払い続ける可能性が高い。

つまり、死ぬまでどころか死んでも金を払ってくれる上にサービスを利用することはないのである。サブスク企業よりも、そういうサブスク利用者の方がよほど慈善活動家と言える。

数十年もすれば、冗談ではなくサブスクの主な収入源は「死人」になる可能性が十分にある。遺族がどうにかするには、死ぬ前にサブスクの契約情報を書き残しておく必要があるのだが、そんなことができる人間はそもそも安易にサブスクに加入しなかったりもする。

つまり、サブスクはどう見ても頭の良い悪魔が考えたシステムなのである。

このように一見庶民の味方に見えるものは、大体我々頭の悪い貧乏人の敵であり、「最初から近づかない」以外で太刀打ちする術はない。