相変わらず一日68時間、片時も離れずツイッターを監視する日々だ。

ツイッターアスリートが走り続けるための「秘訣」

「なぜ、そんなにストイックにツイッターを見続けられるのか、何か秘訣はありますか? 」

誰もそう聞いてくれないので勝手に答えるが、まずは「才能」そして「無職」という社会的立場が大きい。

何かの才能に恵まれていることを「持っている」と表現するが、ツイッター界では「持ってない奴」の方が圧倒的に強いのだ。

しかし、才能と環境が全てと言ってしまうのはあまりにも残酷であり、プロツイッタラーを目指す無垢な子どもの夢を砕き、作文を書き直させるタイプの下衆な大人を喜ばせるだけになってしまう。

あえて秘訣があるとするなら、それは「見えている地雷は踏みにいかない」ということだ。

先日「チェンソーマン」の作者が「ルックバック」という新作漫画を発表し大きな話題になっていた。それも「衝撃を受けた」という感想が多く、割と著名な漫画家までもが「圧倒された」「描く自信をなくした」と言っており、「今日はもう何もしたくない」などと言っている人もいた。

よって私は読まなかった。

当たり前である、ちゃんとした作家が「ダメージを受けた」ということは、私が読んだら「一瞬で蒸発」に決まっている。むしろ死ぬとわかっていて読むというのは、それを伝えて死んでいった者たちに申し訳がたたない。

もちろんダメージを受けた末に「いつか俺もこういうのを描く」という反骨精神が湧くならいいが、自分がそういうタイプでないことは自分が一番理解しており、「ただ何もする気がなくなっただけ」になるに決まっている。

よって私は、一日中ルックバックの話題が流れてくるツイッターを68時間見続けながらクリックはしない、という偉業とも言える任務を成し遂げることができたのだ。

自衛のラインを超えてきた「金メダルかじり市長」事件

このように、生活に支障を来すような話題には最初から触れない、というのはネットをやる上で非常に重要である。

先日、私のTL上でフォローしている人が「とても不愉快なものを見た、この映像を流す時は事前に注意喚起をしてから流すべきだ」と憤っているのを発見した。

どうやらオリンピック関連で何か起こったらしいが、私は先人の犠牲を無駄にしないタイプである。そんなに不愉快ならその件に関しては触れないでおこうと思ったのだが、すでにTLはもちろん、トレンドにまで、その映像や画像つきのニュースがなだれこんできていたため、見まいと思った瞬間にはもう見てしまっているという、逆プロシュート兄貴状態になってしまっていた。

このように、こちらの自衛を「超えてくる」ニュースが稀によく現れるから怖い。

その映像とは、名古屋市長の河村たかし氏が、ソフトボール日本代表の後藤希友選手の金メダルを噛んでいるところである。表敬訪問の様子を各メディアが撮影したものだ。

「地獄というのは言葉で説明するより、見せるのが一番早い」ということを証明したような映像であり、ニュース本文を1文字も読まなくてもサムネの画像だけで「ひどいことが起こった」ということだけは良く分かった。 当然この行為には非難が殺到。それに対し河村市長は「愛情表現だった」「金メダルはあこがれだった」と釈明し、さらに燃えている状態だ。

まず大前提として「たべもの以外を口に入れるのはやめましょう」「ひとのものを勝手にかんではいけません」という、幼稚園ハト組の壁に貼ってありそうな問題がある。

しかし、仮に「噛んでいい?」と許可を求めていたとして、後藤選手は「死んでも嫌だ」と断ることができただろうか。

そもそも「無断で人の物を噛む」という行為ができたのも、「自分の方が圧倒的に目上である」という自信があったからではないだろうか。むしろ「俺の物は俺の物、お前の物は俺の物」というジャイアニズムが炸裂し、「人の物」という意識さえ働かなかった可能性がある。

これが「菅義偉選手(72)が見せに来た金メダル」だったら、果たして同じことができただろうか。

メダルかじりは日本の縮図?

  • メダルかじりの慣例抜きにすると、確かに赤ちゃん…

    メダルかじりの慣例抜きにすると、確かに赤ちゃん…

事件後も、国民はもちろん、他の選手からも批判があがったが、本人からの遺憾のコメントは特に出されていないようである。

「メダルはもう捨てたから気にしていない」という可能性もあるが、目の前であれだけのことをされても、遥か年下の女性である当事者が市長に対し公の場で物申すというのは難しいことなのかもしれない。

また、金メダルを噛まれた瞬間、後藤選手の猛ビンタが炸裂し、前歯と一緒にメダルが床に見事着地、文句なしの金メダルだったかというと「何も言えねえ」という状態であった。

このように、行為自体も問題だが、目上の人間に愛情表現という名のハラスメントをされても、結局下の者は黙って我慢するしかない、という日本の典型的パワハラを煮詰めたようなニュースだったため、余計見た人をゲンナリさせたのかもしれない。

だが、嫌な話だけではなく、本人に代わり、選手の所属先であるトヨタ自動車が市長の行為に対し抗議を表明している。

ただし、これは社員のために権力に立ち向かった、というわけではなく、名古屋の支配者は実質トヨタなので、権力をさらなる巨大権力で潰しにかかった構図だ、という意見もある。

しかし、もし選手の所属先が、名古屋市の家族経営零細企業だったら、もっと嫌なことになっていただろう、トヨタ様でよかった。その後、かじられた金メダルを交換するという話も出てきている。

ちなみに、河村市長は今年の4月にも名古屋城から降ろされた「金のしゃちほこ」にもかぶりついていたことが判明し、「金の物を口に入れずにはいられない習性」という説も浮上してきている。

習性なら、そういう生物をメディアの前に出る立場にはあまりしない方がいいと思うし、もし面白いと思ってやっているなら、4月の時点で「市長、それスベってます」と忠言するものが周りにいれば、後藤選手の金メダルは無事だったかもしれない。

目上を敬うのは大事だが、目上に対して意見してはいけないという風潮は不幸を呼ぶのである。