先日、「小中学校の成績をマイナンバーカードに紐づける」というニュースがTwitter(ツイッター)で話題になっていた。

皆さんご存知のように、「ツイッターで話題」というのは「紛糾した」の隠語である。ちなみにオタク界隈だと「学級会が開かれた」という意味合いになる。

ツイッター上では「情報漏えいしたらどうする」という意見を中心に、「正気か」と反対する意見が相次いで見られた。

しかし、「ツイッターで話題」になったものには、衝撃的なニュースの見出しだけを見た人の激レツな反応が広まってしまい、全文を読んだらそこまでの話ではなかったという場合も多い。さらには、拡散されたツイートとは真逆の意味だった、ということもツイッターでは珍しくない。

何で?何のために?謎が謎を呼ぶマイナンバーカード“活用”

だがそれ以前に、確かに小学2年生を30留した顔をしてはいるものの、私がリアル小中学生だったのはもう四半世紀近く前である。現在の通知表がどうなっているかも知らないので、現役小中学生に聞いてみたいところだが、それだと事案になってしまうのでその親に聞いてみた。小学生までは三段階評価で、中学校からは五段階。紙の通知表が渡されるそうだ。

もちろん学校にもよるだろうが、我々昭和生まれが小中学生だった時と大きく変化はないようである。未だに紙ベースということには若干驚いた。

ただ、全てがアナログのままというわけではなく、オンライン上で課題の作成や受け渡し、採点や管理ができる学習支援ツールを使用しているところもある。有名どころだと「GoogleClassroom」や「Classi」などがあるらしい。

それらのツールには生徒ごとの「学習者ID」があり、それとマイナンバーカードを紐づけるというのが今回のニュース概要のようだ。マイナンバーカードについているICチップで本人確認ができれば、学習者IDをたどって、成績や健康情報にアクセスできるようになるという。

ネット上では、マイナンバーが漏えいすれば成績も漏えいするというイメージを持っている人も多いように見えたが、マイナンバーではなく「マイナンバーカードに埋め込まれているICチップ」を使用するので、ナンバーは関係ないという

すでにオンライン学習ツールを使っている時点で漏えいのリスクはあるのだが、そうは言っても、マイナンバーカードと紐づけることでリスクが増すと言えなくはない。

  • 長所は短所の裏返し。幼い頃の成績で人生が大きく変わるような仕組みだけはやめてほしいものです

    長所は短所の裏返し。幼い頃の成績で人生が大きく変わるような仕組みだけはやめてほしいものです

だが、そもそも、個人の成績や健康の情報へ、第三者がアクセスしやすくする意味とはなんなのか。

多くの人間が閲覧する必要がある資料なら、データ化して共有しやすくするべきだ。むしろ、「紙しかないのでこれを人数分コピーしてください」と言った方が「正気か」と返されてしまう。

しかし、成績や健康状態などといった個人情報は、基本的に学校と本人、その家族以外は見る必要のないデータである。それを共有しやすくする意味がそもそもわからない。

それに対し文部科学省は、「主に転校の際に、学業成績や健康情報などの教育データを次の学校に伝える用途を想定」と回答している。現在、転校する場合、成績などの引継ぎは紙ベースで行われており、それをスムーズにするのが目的だそうだ。

一学期ごとに、一クラスにつき転校生が100人ぐらいいるなら、担任の負担が大きいのでやむなしだが、私の記憶では、転校する生徒は年に1人いるかいないかだったような気がする。よって「そのぐらい従来通り紙でいいのではないか」という意見も多い。

つまり、何のためにそれをやるのかイマイチ判然としないため、「利権の臭いしかしない」という意見も見られた。

意味不明な政策にはとりあえず「利権」と言っておけばかしこに見える、というのは今年学んだことだが、本物のかしこにはバカがバレるという諸刃の剣である。

そもそもマイナンバーカード自体が「マスをとれる」か

ちなみに、どのような教育データを伝達するかは今後検証するという。伝達方法は考えている段階であり、具体的な情報の扱い方は未定だそうだ。

つまり「まだ何も決まっていない」状態であり、さらには「希望する家庭や学校のみが使えるようにする」と、ますます何のためにやるのか、凡人にはわからない政策となっている。学校側はともかく、これを希望するご家庭というのが今のところ想像がつかない。

やや話は変わるが、政府は、こうした学習支援ツールとマイナンバーカードの紐づけについて、「マイナンバーカードが全国民に行き渡ると想定している2023年を目標」に計画しているという。

「2023年には全国民がマイナンバーカードを持っている」という想定は、今年お亡くなりになったあの未来の乗り物・セグウェイ氏が、発売当時「米国で100万台を販売した後に世界進出」と言われていたのと同じぐらい強気の設定な気がする。

通知カードと同じように、マイナンバーカードそのものを全世帯に送りつけるようになれば達成できそうに思えるが、今の自己申請形式では、全国民に行きわたらせるのは無理なような気がする。

現状、マイナンバーカードの所持は義務ではなく個人の自由なので、「マイナンバーカードがないと見られない」となったら、簡便になるとしている手続きが、よけいに煩雑になるという意見もある。

とはいえ、今のところは良いとか悪い以前に「不可解」な部分が多く、逆に「まだキレる時間ではない」ようにも思える。

ただ、小中学生の時の通知表が素行含めてデータとして残り、就職の段階になって、企業がこっそりそのデータを閲覧できる…などとなったら、確かに穏やかではいられない。

小中学生の時など基本的に全員痛々しいのだから、それをいつまでも蒸し返されるのは、親戚の集まりまでにしてほしい。

2021年1月4日(月)は休載いたします。次回更新は2021年1月11日(月)です。