2020年9月1日より「マイナポイント還元制度」が始まった。

一人につき支払い金額の25%、上限5,000円分のポイントが還元されるわけだが、「マイナポイント」という電子マネーがあるわけではない。

マイナンバーカードを持っている人間がマイナポイント対象の決済システムを選んで申請すると、そのシステムで使えるポイントが得られるという寸法だ。

例えば「モンゲロpay」を選んで申請した場合、20,000円チャージすれば、5,000モンゲロポイントゲットできる、ということである。

選べる決済方法は1つのみで、モンゲロポイントを5,000円分ゲットしつつ「スコペッソイpay」でも申請し、5,000スコペッソイポイントも手に入れる、ということはできない。

ちなみに「モンゲロpay」も「スコペッソイpay」も存在しないので探さないで欲しい。

カレー沢薫、マイナンバーカードをつくる

この「マイナポイント還元制度」、盛り上がっているかと聞かれたら、腕組みをして靴のつま先を見ながら「それほど」と言わざるを得ない情況のようだ。

以前、消費税増税と同時に行われた「キャッシュレス決済還元制度」が、対象のキャッシュレス決済を使えば自動的に還元が受けられるという、「今からあなたを死ぬまで殴るので死んでください」というぐらいのシンプルさだったのに対し、このマイナポイント還元制度はシルクロード級に道のりが長い。

まず何はなくとも「マイナンバーカード」を作らなければならない。私もこのコラムでマイナポイントのことを知り、マイナンバーカードを作ることにしたのだが、カードの申請はスマホとマイナンバー通知カードがあれば可能で、カード用の顔写真もその場で撮った自撮りでOKだった。

自撮りゆえに「この髪型で本当に己の身分を証明できるのか?」というような写真になってしまったが、「エラー:髪型」と表示されることなく申請は完了した。

マイナンバーカードを作るのは皆が思っているより簡単なのである。

そう思っていた時期が私にもあったが、そこから話は打ち切り漫画のように「一ヵ月後」へ飛ぶ。

申請から一ヵ月、場合によっては二ヵ月待ってやっと、役所からマイナンバーカードに関する封書が届く。さらに、中に入っているのは、逆に身分が危うくなる髪型をした己が印刷されたマイナンバーカードではなく、「役所でマイナンバーカードの手続きができる用紙」である。

マイナンバーカードを作るには、今のところ「役所に出向く」という工程は不可避なのだ。

  • 5,000円の前に立ちはだかる数々の壁…

    5,000円の前に立ちはだかる数々の壁…

個人情報の塊をそう簡単に発行するわけにはいかないのだろうが、私のような無職ならともかく、有職の方がわざわざマイナンバーカードだけを作りに役所に出向かなければいけない、というのはなかなかハードルが高い。

役所に出向き、どれを何に使うのかいまいち整理できない多数の暗証番号などを設定し、やっとマイナンバーカードを手に入れることができるのだが、その際受けた説明によると、マイナンバーカードは何年かごとに更新が必要らしい。

◆2020年9月25日追記
記事初出時、「更新には料金がかかるらしい」と記載しておりましたが、費用がかかるのは紛失等による再発行のみで、更新自体は無料で行えるため修正しました。読者の皆様ならびに関係者の皆様にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

設立以来、普及率がイマイチなマイナンバーカードだが、随所に「そういうところやぞ」という部分が感じられる。

しかし、現在は役所に「マイナポイント手続きスポット端末」が設置されているため、マイナンバーカードの発行からマイナポイント申請まで一気に行う事ができるようになっているという。よって、事前に「どのポイントをもらうか」は決めておいた方が良い。

ちなみに、私は社会的信用弱者の味方である楽天カードさんに決めた。楽天さんは、毎月「苦しいでしょう、リボにしましょうか?」と聞いてくれるし、カードを更新する時にも「自動リボにしておきましょうか?」と提案してくれるなど、本当に低所得者に対する心遣いが行き届いている。

しかしその後、地方民の生殺与奪を掌握していることでお馴染みのイオン系列の電子マネー「WAON」が、マイナポイント分の5,000ポイントに加え、チャージ額によってはさらに2,000ポイント付与すると聞いて、リストをカットしそうになった。

このように5,000ポイントとは別に、独自にポイントを上乗せしているところもあるので、申請は慎重に行った方が良い。

どことなく大人しい「マイナポイント合戦」

ところで今回のマイナポイント還元では、てっきりもっとペイペイペーイと騒ぎになっているのかと思いきや、顧客獲得のための熾烈なポイント上乗せ合戦は行われていないようだ。

なぜならキャッシュレス決済戦国時代はすでにある程度終息しており、結局ドコモ、ソフトバンク、KDDIの携帯三大キャリア、そして社会的信用弱者界のジャンヌ・ダルクこと我らが楽天の四天王で落ち着いてしまったため、もう派手なポイント還元で客を取りあう必要もないという

さらに、マイナンバーカードの発行数自体が想定を大きく下回っているため、マイナポイント還元を狙った新規顧客獲得はあまり望めず、各社ともあまり力を入れていないようである。

やはり、申請が面倒なのに加え、マイナンバーカードに対する国民の不信感が未だに拭えていない印象だ。しかし、マイナンバーの「カード」を作ろうが作るまいが、すでにマイナンバーは全員に割り振られてしまっているので、カードを作らなければ個人情報漏えいなどの被害に遭わないというわけでもない。

今は地銀やゆうちょに口座を持っているだけで不正出金されてしまうという乱世である。マイナンバーをの恩恵を一度も感じることなく、情報だけはバッチリ漏えいしたという事態にならないことを祈る。

とりあえず、マイナンバーを使った各種手続きに必要なマイナンバーカードを取得するときやマイナンバーを証明する書類にも使えるマイナンバー通知カードは廃止になったそうです。わかりやすいですね。

ちなみに、マイナンバーカードを作るには、全国民に送付されたマイナンバー通知カードが必要なのだが、それがどこにあるのか既にわからないという人がかなり多い。

マイナンバーカードを作るのは心配だと言いながら、ほとんど同じ情報が載っている通知カードの管理はずさん。日本人の個人情報に対する意識は、たまに不思議なところがある。