長引く不況の影響もあり、誰もが知っているような大企業が倒産することも珍しくありません。また、技術革新が進む一方、人間の作業が機械にとってかわることもあり、既存の職業が消滅してしまうことも考えられます。
せっかく入社した会社が倒産しては、路頭に迷ってしまいます。10年後にも残る職業や会社を見分ける方法はあるのでしょうか。数々の企業研修やコンサルタントに携わってきた、齊藤正明氏と常見陽平氏にうかがいました。
世の中は意外と変わっていないもの?
――この10年間で変化した会社や業種について教えてください。
齊藤氏「今は成熟している時代なので、企業の成長や衰退について、業種はあまり関係ないかもしれません。企業次第というところはありますね。常見さんは、このあたりの問題に詳しいのでは?」
常見氏「難しい問いですね。製造業が危ないといわれても結構ふんばっていますし、『消える』といわれながらがんばっている企業はたくさんあります。また、いろんなことがインターネットに移行すると言われましたが、住宅の購入をネットのみで済ませる人はいないですよね。そういう意味では、世間がいうほど変わっていないのかもしれません。
このように、意外なものが消えていないという事実を見るべきだし、変化のシグナルに気付くことが大事だと思います」
齊藤氏「変化の話で言えば、便利さがあきられてきたように感じませんか? 機能よりもデザインや楽しさが重視されるようになり、ニーズがシフトしていますよね。性能がアップしても価格は据え置きになっていますし、極端な話、『どこでもドア』レベルの画期的なものでないと、爆発的に売れないのではと思います」
常見氏「新しいことをやるといいつつ、50年前と同じ論理なんですよね。そのせいか、ニーズが合致していないのでは? と思うことがあります」
危ない会社の見分け方
――危ない会社の見分け方はありますか?
常見氏「変なことばかりやり始める会社は危ない傾向があります」
齊藤氏「本業と違うことをやり始めたり、新商品ばかり開発したりするのも、危ない会社の特徴ですよね」
常見氏「そうですね。あとは、人がどんどん辞める会社も危険。これはよく言われていますが、会社の雰囲気が暗いところも業績がよくないことが多いです」
――自分の会社が危ないかどうか、見極めるチェックポイントはありますか?
常見氏「社長がいきなり売り上げについて厳しく言ってきたり、経費に厳しくなってきたりすると危険ですね」
齊藤氏「そういうときは、取引銀行の動きをみるといいかもしれません」
常見氏「数字に敏感になることで、見えてくるものは多い。世の中がどうなっているのか、興味を持つといいですね。
自社の動きで言えば、売り上げの構成を把握することも重要なこと。ひとつの取引先や分野に依存していると、その会社の経営が傾いたときに共倒れしてしまいます」
自分の会社が危ないと気付いたらどうする?
――会社が危ないと気付いたら、どのようにすればいいでしょうか?
齊藤氏「もちろん、逃げる用意も必要ですが、準備している段階で会社がなくなってしまうことがないとはいえません。そんなときでも、自分はダメだと悲観的にならないこと。被害者になりすぎないことが重要です。
もし逃げ遅れたとしても、その顛末を見ることは決して無駄なことではありません。修羅場を見ておくと、意外な能力が開花することもありますしね」
常見氏「ダメだと思っても、時間は戻ってこないので、自分の中で意味づけしておくといいですよね。
現実的な話をすると、もしものときに備えて年収の2倍は預貯金しておきましょう。新入社員の方はすぐにそれだけの額を蓄えるのは難しいかもしれないので、まずは100万円を貯めることを目標にするといいですね。
自由に振る舞っているように見える人こそ、お金を持っているもの。どんなときでもお金は必要ですから、預貯金の習慣はつけたほうがいいですね」
<プロフィール>
齊藤正明氏(左)
1976年生まれ。人材コンサルタント・研修講師。大学卒業後、バイオ系企業の研究所に就職。業務命令によりマグロ船に乗船することに。マグロ船という閉ざされた空間に適したコミュニケーション術や仕事観に感銘を受ける。その後、マグロ船流コミュニケーションを人材育成に取り入れた研修を行うネクストスタンダードを設立。講演業界で最高峰と言われる年200回以上の講演をこなし、全国を飛び回る日々。著書に『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(マイナビ新書)ほか多数。http://www.nextstandard.jp/
常見陽平氏(右)
人材コンサルタント、著述家、実践女子大学・武蔵野美術大学非常勤講師。1974年宮城県仙台市生まれ。北海道札幌市出身。北海道立札幌南高等学校卒業後、一橋大学社会学部に入学。執筆・講演の専門分野は就活、転職、キャリア論、若手人材の育成、若者論、サラリーマン論、社畜論、ノマドワーク、仕事術など。就活、キャリアに関する著書多数。最新作は『「すり減らない」働き方』(青春新書INTELLIGENCE)。http://www.yo-hey.com/
『「自己啓発」は私を啓発しない』
マイナビ新書から4月23日発売。齊藤正明 著。新書判216ページで定価872円。
【内容紹介】上司との人間関係に悩み、すがるように購入してしまった150万円の教材、そこから始まった自己啓発セミナーに通う日々……。 気がつけば数年間でセミナーや教材に600万円以上のお金を使い、上司以外との人間関係もおかしくなってしまい……。
自己啓発にハマった笑いあり涙ありの日々から齊藤氏が気づいたことを語る、「自己啓発」との付き合い方がわかる本。