有効求人倍率は1.23倍、だが正社員だけでは0.76倍まで低下
厚生労働省が10月2日に発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.23倍と、7月の1.21倍からさらに0.2ポイント上昇した。23年9カ月ぶりの高水準である。実数(季調済)では、8月の有効求職者数1,943,130人に対し、有効求人数は2,353,699人あった。求職者1人に対し、平均で1.23人の求人がある状態で、労働需給は逼迫しつつあるといえる。
ただし、1.23倍という求人倍率は、パートタイムを含む数字である。常用的パートタイムだけで見ると有効求人倍率は1.30倍とさらに高くなるが、パートタイムを除く常用雇用では0.99倍に低下する。正社員だけでは有効求人倍率は0.76倍まで低下する。
派遣社員など非正規雇用で働きながら正社員を目指す人が、正社員になかなかなれないことが社会問題となっているが、有効求人倍率が1.23倍まで上がっても、すぐには改善されない可能性もある。
改正労働者派遣法が施行、正社員になる道を広げる内容とは必ずしも言えず
9月30日から改正労働者派遣法が施行された。産業界の要望で自民党が成立を急いだもので、企業にとって派遣労働者が使いやすくなる反面、派遣労働者が正社員になる道を広げる内容とは必ずしも言えない。
秘書・通訳・事務用機器操作など専門26業種について、これまで派遣期間の定めがなかったのが、3年までと上限がつけられることになった。これまで26業種の定義があいまいで現場に混乱があったので、この改正で区分がなくなってよかったという声もある。一方、業務内容を限定して働くことを選択していた26業種の派遣社員にとって、これからは担当業務の範囲を広げるように要請されるリスクもある。
また今回の改正で、派遣先企業では過半数の労働者を含む労働組合の同意を得るなどの条件が満たされれば、人を変えることで、3年を超えて同一業務を派遣社員に任せることが可能とされた。このため、これまで26業種に従事して、同一派遣先で10年以上働いてきた派遣労働者が、契約切れ後の雇い止めを通告されるなどの弊害も、一部で生じている。
日本で労働者の権利拡大は、正社員を中心に進んできた。派遣労働者など非正規労働者の待遇改善に向けての取り組みは遅れていると言わざるを得ない。
執筆者プロフィール : 窪田 真之
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。