27日に上海総合株価指数が前日比8.5%安と急落

7月27日、上海総合株価指数が前日比8.5%安と急落した。中国政府が常識では考えられない強引な市場介入を次々と打ち出した効果で、7月9日以降、反発に転じていた上海株だったが、市場の売り圧力を抑え続けることはできなかった。

上海総合株価指数:2014年12月31日~2015年7月27日

直接のきっかけとなったのは、24日に発表されたHSBCマークイット中国製造業PMI(景況指数)だ。5ヶ月連続で景況感の分かれ目となる50を割り込んでいた。

HSBCマークイット中国製造業PMI(季節調整済み):2013年1月~2015年7月

(出所:ブルームバーグ)

中国政府が発表した4-6月GDPは、前年比7.0%の増加で計画通りの高成長であったが、中国政府の出す数字をそのまま信じる人は少ない。中国では最近、自動車や鉄鋼の過剰生産が問題となっており、景気実態は良くないとの見方が広がりつつあったが、PMIの悪化がそれを裏付けた形となった。

中国は、何もかも力ずくで思い通りに動かそうとする「異形の大国」

中国は、何もかも力ずくで思い通りに動かそうとする「異形の大国」だ。これだけ経済規模が大きくなったのに、いまだに金利や為替を自由化していない。さらに、株式市場まで強引に操作しようとして物議をかもした。中国政府は6月から7月にかけて普通の資本主義国では禁じ手となる市場介入を実施して上海株の反発を演出してきたが、27日は市場から手痛いしっぺ返しを食らった。

中国政府は、日本が実施してきた「株価対策」をよく研究している。今回繰り出した株価対策も、一部日本のやり方を真似しているところもある。ただし、そのやり方はあまりに稚拙である。

「悪意のある空売り」を取り締まるとの発表が効果

政策金利引き下げ、大口投資家の売り制約、株式の新規公開停止、公的資金による株の大量買い上げに続き、下げ止まらない株を次々と売買停止にするという禁じ手まで繰り出した。さらに公安当局による「悪意のある空売り」の取り締まりを実施すると発表したことも功を奏した。悪意ある空売りとみなされると逮捕されると恐怖をあおり、空売りの買い戻しを誘った。ここまで露骨に介入した効果で、7月9日以降、上海株は一旦反発しつつあった。

ただし、露骨な介入をすればするほど、上海株から早く逃げ出したいという売りエネルギーも蓄積する。政府が簡単に介入してくる市場であることが世界に知れ渡ってしまったので、長期投資マネーは、上海市場を信頼できなくなる。27日は蓄積した売りエネルギーが上海株を再び急落させる日となった。

自由な取引が保証されている資本主義国の株式市場では、売りたい人に売らせ、買いたい人に買わせ、下がるところまで下がってから自然にリバウンドするのを待つ。中国政府も、株式市場は金利や為替のように管理できるものでないことを、いずれ学ぶことになるだろう。

社会主義の旧弊は、「計画経済」という言葉に集約

中国は、1980年代に社会主義国の体制を維持したまま、資本主義革命を実施した。その成果で、1980年代以降、高成長国となった。社会主義に留まった国々(旧ソ連・旧東ドイツ・北朝鮮など)がことごとく経済的に崩壊する中で、中国は社会主義の中にうまく資本主義を採りいれて、高成長した。

その結果、中国は、極端な資本主義と、社会主義が共存する異形の大国となった。社会主義の旧弊は、「計画経済」という言葉に集約される。何でも国の計画によって動かそうとする。

中国はGDPも計画通りに動かそうとする。リーマン・ショックの直後、4兆元(約78兆円)の公共投資を実施して、強引にGDP目標を達成した。ただし、この時に行った非効率な投資の後処理に、中国は今でも苦しんでいる。地方に林立するゴーストタウン(ほとんど誰も住んでいない高層マンション群)が負の遺産として残っている。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。