パナソニック・NECなど、ガラケー(従来型携帯電話)を生産してきた日本メーカーが2017年以降に生産を中止すると報道された。スマホの普及により、日本でしか売れないガラケーの開発・生産を続ける負担に耐えられなくなったという。
日本は、世界でもっとも早く高機能携帯電話を生み出した国だ。それが日本の誇るガラケーだった。ところで、ガラケーは、開発当初からそう呼ばれていたわけではない。iモードを通じて、携帯電話が情報端末になるという発想は秀逸であり、将来、日本発世界標準となることが期待されていた。
ところが、ガラケーもiモードも、日本でしか普及しなかった。日本でしか売れない代物で、ガラパゴス諸島という特殊な環境でしか生きていけない特殊生物に似ているという意味で、ガラパゴス・ケータイ、略してガラケーと呼ばれるようになった。
日本はガラケーで、iモード、ワンセグ、お財布ケータイ、ブラウザゲームと、次々と独自の新機能を生み出していった。高機能ケータイの先端を走っていたはずだった。それでも、日本のガラケーが世界に受け入れられることはなかった。なぜか?
日本人の好みを徹底的に追求していった結果、世界から見ると特殊な高機能端末になっていた。問題はそれだけでない。高機能ゆえに高価格であったことも世界で受け入れられない原因であった。日本国内では、ケータイ電話各社が競って高額の販売奨励金を出す仕組みが長く続いたため、高価格でも販売できた。そうして日本のガラケーは、日本以外では決して売れない代物となっていった。
日本の端末が国内に引きこもっているうちに、世界はスマホが主導する世界に変わっていった。アップルのiPhoneと、グーグルのアンドロイド端末が、世界を支配する時代になった。日本市場もスマホに侵食されるようになり、ついにガラケーは2017年以降に、歴史的役割を終えることになった。
(※写真画像は本文とは関係ありません)
執筆者プロフィール : 窪田 真之
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。